B社ベタストーリー〔第4話〕

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第4話

 トレーニングルームにいたのは珍しく二人だけだった。龍治と、彼が診断士として独立する前に勤めていた都市銀行で同期だった河田(かわた)三郎(さぶろう)である。トレッドミルで軽いジョギングをしながら、これはちょうど良いと龍治は前日の旅館について無難なところだけを三郎に話す。手短に話すだけで二人の身体からは汗が噴き出していた。

 「おいおい、診断士先生もお手上げか?セミナーではあんなに息巻いていたクセによぅ」

 「受かってもないお前に言われたかねーよ」

 「うわ、りょーちくん、ひどい。1番気にしてることを」

 三郎とは同時期に診断士の勉強を始めた。職場から取得が奨励されたからである。しかしストレート合格、果ては独立まで成した龍治と違い、三郎は何年も「未合格」のままだ。受験勉強仲間からは彼のハンドルネーム・サブをもじり、「お前はサブというよりジンロクだな」と揶揄されている。それでもヘラヘラ笑っていられることが、サブの大いなる魅力だと龍治は思っている。

 「自社だけでなく地域全体で、か…サブ、これが二次試験の事例企業だったら、どう答える?」

 「おいおい、先生が多年度受験生の俺に訊くなよ。でも、地域振興を信念に持つ地元企業って、事例にありがちな話だよな。何かこの手の話って、やってるうちにクセが出てくるし、ま、原点に立ち戻って考えてみなよ、りょーちくん。俺はここでギブ。一旦休憩してサ活しよ、サ活」

 「原点回帰…そうか、白書か!」

 汗を拭くサブを見ることもなく、龍治はトレーニングよりも加速をつけ、ロッカールームへ走った。

 「ちょっと、りょーちくん、りょーちくん!もう、アイツいつもこれなんだから!こんなんじゃ一生整わないよ!」


 まるでサウナから出た後のような汗を拭く間もなく、龍治は本棚に”飾って”あった中小企業白書を手に取った。

 『中小企業における足下の感染症への対応』

 ページを捲るとまさに感染症による影響を受けた業種として宿泊業が挙げられている。苦しいのは、皆同じだ。

 「中長期的な事業見直し…そうか、自分のことだけ、今日のことだけ、そんな狭い視野ではダメなのか…」

 龍治はひとりの部屋で呟いた。開けっ放しの窓から吹く夜風が少し冷たくなっている。この風の心地よさと、白書の整然とした文字列に、龍治はふと二次試験受験勉強中の、何か胸につかえたような季節を思い出していた。きっとこれから先も、この風が吹くと思い出すのだろう。


 初めての来訪から1週間後。龍治は再び信子の前に座っていた。彼女が身に纏った着物の柄は、ますます秋らしくなっている。しかし時候の挨拶もそこそこに、龍治は勢いよく喋り始めた。

 「社長、地域全体が盛り上がるような施策を考えてきました」

○○○○をターゲットに、○○○○と連携して
○○○○のようなイベントを計画してみてはいかがでしょう

 「そうやね、そいやったらここの旅館だけじゃなくて、地域全体にとっても良かごたる気のしてきた。今まで早くこの状況を抜け出さんばって、焦ってすぐに結果が出ることばっかい考えとったけど、みんなでこの地域が続いていけるごと、ながーい目で見ていかんばとやね」

 信子はワクワクした表情を隠しきれないようにして資料から目を離し、龍治を見つめた。

 「本当にありがとう、龍治さん」

 「いえいえ、今日はちょっと予定がありまして、ここで失礼させていただきます」

 「残念やけど、お忙しいやろうけんね。今度は実果ちゃんと一緒に泊まりにおいでなっせ」

 龍治は照れながら頭を掻いた。

 「うちにも息子がおってね、本当は実果ちゃんみたいな子がうちにきて女将を継いでくれんかなって思っとったんよ。でも、こんな素敵な方がおったら、太刀打ちできんつたいね」

 龍治はいよいよ照れを通り越して、その場を離れたくなった。

 「それに…実果ちゃんのお父様は日の丸工業の重役やもん。こがん地方のこんまか旅館に嫁ぐような家柄の子じゃなかけんね…」

 「えっ!?」

 龍治はまた一つ、自分が知らない実果のことがあることを知った。

≪B社ベタストーリー・終≫

ひと言

次回はいよいよ最終章「C社ベタストーリー」

遂に龍治たち、宇宙に進出!?

国家を賭けた巨大プロジェクトに挑む!

ゆるく次回更新をお待ちください。

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