ど~も! 事例Ⅳと企画担当のソーイチです。
中小企業診断士登録を終えた後、ようやく会社の名刺にも資格名が追記されました。名刺交換の時には、「お、診断士さんなんですね」とイジって頂けることもちょくちょくあり、ネームバリューの大きさを改めて実感しています。
さて、前回に引き続き、『中小企業診断士試験・2次筆記試験の過去問を実際に解きながら、解答の組み立て方をご紹介する企画』の後編です。
まだ1次試験対策が中心の方が多いかもしれませんが、「ふ~ん」ぐらいに2次筆記試験対策の肌感だけでも掴んでおいてもらえると嬉しいです。
前編のアクセス数も良かったのでやる気MAX! 是非、気軽に読んでくださいね。
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ふぞろい16メンバーのブログは2月20日スタート!
どうぞお楽しみに!
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目次
今回、平成26年度の事例Ⅰを実際に解き、『ふぞろいな合格答案10年データブック』で自己採点してみたところ、以下のような結果でした。
~平成26年度・事例Ⅰ解答案の自己採点結果~
この記事は、私が上記で実践した解答プロセスや実際に作成した解答案をご紹介して、2次試験のイメージづくりに役立ててもらいたいと思い、書いています。
前回は与件文チェックのプロセスと、第1問から第2問までの解答方法をご紹介しました。今回はその続編として、第3問から第5問の実践結果をご紹介したいと思います。
自己採点に使用した『10年データブック』には、得点ランクごとにたくさんの再現答案が収録されています。それらを見比べることで得点の分かれ目になったポイントが一目瞭然なので、早いうちに入手されると良いですよ。
2次試験直前は品薄になるので、早めの入手がおススメですよ~。(念押し)
本題に入る前に、平成26年度2次試験事例Ⅰの題材となったA社について、簡単におさらいしておきましょう。
A社は、A社長が一代で築き上げてきた精密ガラス加工メーカー。A社長は、「研究開発なくてして発展なし」の理念のもと、独立前に培った知識や人脈を活用しながら一人で会社を支えてきました。
マーケット動向を見ると、製品サイクルが短く、新たな商品・技術の提案競争が激しい一方、A社の経営資源を見ると、それに立ち向かう体制がなかなか十分に整っている状況とは言えないようです。
最近では、博士号保有者や研究職採用を積極的に行ったり、補助金を活用したりすることで、徐々に研究開発や商品提案力も向上し、収益の柱ができてきました。A社長が成長を見込んでいた市場へも先手で対応し、売上の半数を占めるようなOEM生産の大型受注も獲得するなど、成長加速の兆しが見え始めているようです。
研究開発に特化した経営を追求することは正しい方向性で間違い無し。しかし、それを確実に実現するためには、組織体制や人材活用などの面でいくつか対処すべき課題がありそうです。
第1問と第2問では、A社のSWOT分析を行いました。第3問以降では、A社がこれから飛躍するためにどのような課題認識のもと、どのような具体策を打っていくべきかという点について、中小企業診断士としての提案力が問われていくことになります。
こんなとこですかね、A社長?
短っ! けどまぁ、そんなとこでしょう。
さあ、第3問を解いていきます。
2度のターニング・ポイントを経て、A社は安定的成長を確保することができるようになった。新しい事業の柱ができた結果、A社にとって組織管理上の新たな課題が生じた。それは、どのような課題であると考えられるか。100 字以内で答えよ。
いよいよ、人事・組織がテーマの事例Ⅰっぽくなってきましたね。「組織は戦略に従う」という言葉がありますが、研究開発に特化する戦略を有効に推し進めるためには何が必要で、そのために組織の在り方はどうあるべきかを問われていそうですね。
解答の多面的な組み立ては常に心掛けたい。第2段落に、現在の組織が3つか4つぐらい出てきてたから、それぞれに課題を書き分けてあげると得点が伸びそう!
課題を問われた時には、その目的もセットにして、因果関係をきちんと明確に解答すると得点が伸びやすいように思います。ちなみに、提案を問われた時には、その効果もセットにして解答しましょう。
それと、設問文の「新しい事業の柱ができた」にも注目です。A社が収益拡大を実現していくために、この2つの事業の成長が欠かせません。それぞれの事業特性を踏まえながら今後の成長に必要な要素を抽出し、それらにA社の各組織がどう対処していくべきかを冷静に分析して解答しましょう。
戦略と組織のミスマッチを見つけてあげれば良さそうかな。少し知識が必要になるポイントだね。
まず、2つの柱となる事業について、それぞれ今後の成長のために重要となる要素を抽出しました。
~自社製品開発事業(レーザー用放電管)~
~OEM事業(理化学分析用試験管)~
次に、上記要素の実現のために、A社の組織に具体的にどのような課題が考えられるかを整理しました。
~営業部門~
~研究開発部門~
~生産部門~
あとは、字数に気を付けながらコンパクトに組み合わせていこう。因果関係が大事だから、「コレコレの課題(因)に対処し、ソレソレの目的(果)を果たす」というような書き方が良さそうかな。読みやすくするために、「因」には番号を振っておこう。
A社長! 解答案ができました。
課題は、①営業部門を強化してニーズ把握や顧客関係性を強化、②研究開発部門の販売業務を移管して専門業務に専念させ、③生産部門の中途採用課長職のモラール向上により定着と技術継承を進め、柱事業の売上を拡大。(100文字)
どうでしょう!?
ふむ……ソーイチ君の解答はふぞ流採点で、16点ですな。(配点20点)
う~ん、キーワードが1つ2つ足りない感じかな。何か大事な観点を見落としているのだろうか。
ここで『10年データブック』の採点基準をよく見てみると、あともう一歩得点が伸びなかった理由が分かりました。各部門の課題についてだけでなく、全社的な課題にも言及しておく必要があったようです。
例えば補助金の活用とか、大学や研究機関などの外部連携など、A社長がこれまで1人で育ててきた経営資源を、全社的に強化すべきという視点が抜けてしまっていました。是非、反面教師として参考にしてもらえればです。
こんな感じで書けてれば満点だったかな。
課題は、①営業部門強化しニーズ把握や顧客関係性強化、②研究開発部門から販売業務移管して専門業務に集中、③生産部門の課長職のモラール向上により定着と技術継承進め、④助成金や外部連携の活用で事業拡大図る。(100文字)
気をとり直して第4問!(予告:ここで、大ゴケします。注:第4問の私の解法はあまり参考になりません。)
A社の主力製品である試験管の良品率は、製造設備を内製化した後、60%まで改善したが、その後しばらく大幅な改善は見られず横ばいで推移した。ところが近年、良品率が60%から90%へと大幅に改善している。その要因として、どのようなことが考えられるか。100字以内で答えよ。
第4問も分析系の設問ですね。これも、解答は「理由は~である。」の組み立てでOK。当然、良品率の大幅な改善が自然に発生するわけは無いから、A社の経営資源に起こった変化を抜き出せば良さそうです。
より高度な分析精度に応えられる製品に進化し、高い製造技術が求められている様子。にも関わらず、これを突破できたということは、研究開発力を強化できたからと言えそうです。
研究開発力の強化はA社長の理念でもあるから、必ず使っておきたいキーワード。あとは、その要因となった出来事を、社内と社外に書き分けて多面的な解答を組み立てればOKでしょ。(注:この中に大きなミスがあります。見つけられたでしょうか?)
ターニングポイントを起点にして、A社が研究開発力を強化できた要因を、社内・社外の両面から以下のように抽出しました。
~社内~
~社外~
なんかキーワードが弱い気がするけど……。とにかく時間もあまり無いし、100文字以内で書いてみよう。
A社長! 解答案ができました。
要因は、①大学教授や研究者など技術的問題の助言を得る外部連携先の獲得、②工学博士号保有者や新卒研究職の採用、研究室の設置による社内研究体制の積極的拡充により、研究開発力の強化を実現できたため。(96文字)
どうでしょう!?
はぁ~……ソーイチ君は視野が狭いですな。9点。(配点20点)
げっ、9点!? 視野が狭いって、一体どこが……。誰か教えてくれ~!!
ソーイチよ。
(ま、眩しいっ!)そこにいるのは誰ですか!?
ワタシは事例Ⅰ神じゃ。悩めるおぬしを助けにきたのじゃ。
あ、ありがとうございます! 第4問で見落としている重要な視点が一体何なのか分からなくて……。
では授けよう。ソーイチが欲しいのは金のヒント、銀のヒント、どちらかな?
ズバリ、答えを教えてください!(キリッ)
喝! 研究開発力以外にもA社が強化したものがあるじゃろ。与件文をもう一度よく読んでみい。
う~ん、再度9段落目あたりを読んでみるか…………ん?………………あ、あった! 製造現場の改善だ! プロセス改善に技術向上、設備改良に内製化! こんな大事な要素を見落としていたなんて……。
寸劇に付き合って頂き、有難うございました(笑)。ということで、第4問は、研究開発力の強化と、さらにもう1つ、製造現場の改善の2つの観点から、良品率向上に繋がった要因となるキーワードを抜き出して解答を組み立てると良かったようです。
具体的にどんなキーワードが得点に繋がったかなど、詳しくは『10年データブック』を是非お手元にとって、確認してみてください。
いよいよ来ました、最終問題! ここで挽回して、合格をたぐり寄せたいです。
A社は、若干名の博士号取得者や博士号取得見込者を採用している。採用した高度な専門知識をもつ人材を長期的に勤務させていくためには、どのような管理施策をとるべきか。中小企業診断士として100字以内で助言せよ。
ここでようやく、助言系の設問がきました。解答の組み立てには、適切で具体的な対策はもちろんのこと、それによる効果も合わせて記述することが鉄則ですね。
2次筆記試験は、中小企業診断士としての適性を問う試験です。相手の社長さんは、対策案の実施によって期待できる効果が分からなければ、適切な経営判断ができません。コンサルタントとして、説明責任を果たしましょう。
そもそも、現在の人事・組織管理の中で、研究開発部門の人材についてどのような懸念があるのか。そうした背景情報を踏まえて解答を組み立てれば、ポイントを外さずに済みそうかな。
事例Ⅰのテーマをおさらいすると、会社の究極目標である企業発展・収益拡大を目指し、人材や組織が正しい方向(すなわち、明確な経営戦略)に向かいながら、その能力をきちんと発揮できる状態を目指すことだと思います。
もう少し噛み砕いて考えると、研究開発部門の人材が、概ね以下のような状態にあることが良いと言えそうです。
上記と、A社の現状を重ね合わせると、以下のような懸念が浮き彫りになってきます。
あとは、上記のような懸念を払しょくするために、具体的な対策を打っていけば良いわけです。事例Ⅰの対策と言えばお馴染み、「サチノヒモケブカイネコ」が今回も使えそうですね。「何ソレ?」と思った方は、是非検索してみてくださいね。
僕が務めている会社も技術者や研究者が多いけど、どんな施策があったっけ。今度、調べてみよ~っと。
A社長! 解答案ができました。
社内研修会で経営理念を伝達、他部署との社員交流機会の提供、成果連動型報酬や表彰制度の整備、長期的視点での人事評価、社外の学協会活動の推奨で能力向上機会を提供し、モチベーションやモラールの向上を図る。(99文字)
どうでしょう!?
お見事! 20点です!(配点20点)
ふぅ~、なんとか事例Ⅰ全体の合格点を死守できて良かった。
研究開発部門の人材が、常に高い意識で貢献し続けてくれることがA社の発展において重要ですから、狙うべき効果としてモチベーション・モラールの向上を挙げました。ちなみに、この2つは同義と言えるので、モラール向上だけにまとめても良かったかもです。
第4問で大きなミスがありました。もしこの問題が、大半の受験生が正答できているような難易度の低い問題だった場合、致命傷となるような失点になった可能性があります。
また、比較的高い点数をとれた第3問や第5問は、難易度的に高い問題だったようです。こうした問題で高得点をとれると、他の受験生と差をつける要因になりそうです。
今回、ブログの中でご紹介した『10年データブック』は、自己採点に使えるほか、上記のような問題の難易度や、各キーワードの解答分布も確認することができます。こうしたデータを使うことで、自分の解答力が相対的にどのような位置にあるのかを把握できるので、とても便利です。
みんなが正答した問題を落としてないか。逆に、正答者が少ない問題で1点でも多くとれてるか。『ふぞろい』を活用して、素点だけでなく、相対的な評価も把握しながら、勉強を進めていきましょう!
前編・後編に跨り、長文になってしまいましたが、ここまでお読みいただき有難うございました。
設問形態は、分析系や助言系などいくつかパターンがあります。今回は私流の解法をご紹介しましたが、是非いろいろ試してみて、自分に合ったスタイルを見つけてみてください!
果たしてこの企画は他年度・他事例へと波及していくのか……下の「合格祈願」をクリックして、企画継続のパワーを僕にください!
明日は事例Ⅳチームの頼れるエンジニア、「とも」の登場です! ふぞろいでは、皆さんからご提供頂いた膨大な答案データを統計処理するのですが、彼はそれをちょちょいのちょいとやってしまいます。今後、ITやビッグデータ界隈でも中小企業診断士が活躍するだろうと、彼の仕事ぶりを見て思うのでした。
ではまた(^^)/