【中小企業白書案内④】合格の呪文、サハホイヒ

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まさひろが住む、ここ南信州ではぶどう、梨、りんごが美味しい時期を迎えました。来月には市田柿の収穫が始まり、柿のれんがインスタ映えします。

さて、今回は中小企業白書2022年版から、中小企業成長のためのOJT、OFF-JT(人的資本への投資)について述べたいと思います。

さちのひもけぶかいねこ、茶化、サハホイヒ。

2次試験受験生が少なくとも一度は聞いたことのある“サハホイヒ”。
事例Ⅰの人事で出てくるキーワード、
・採用
・配置
・報酬
・育成(能力開発)
・評価
のことですね。
2次試験は6年受け続けたので、サハホイヒの呪文を唱えた回数は上位に入ると思います。

さて、中小企業白書が大好きになったまさひろは、2022年版中小企業白書で興味深い企業を見つけました。Ⅱ-112ページに掲載されている株式会社ワン・ステップ様です。

株式会社ワン・ステップ

なんとリアルで“サハホイヒ”が備わっています。
(正しくは配置、報酬はわかりませんがたぶん配慮されていると思います)

まず採用について

採用

新卒採用には多くの時間と費用をかけて積極投資をしています。また、現在は全社挙げて採用活動に取り組んでいますが、学生さんとのファーストコンタクトを取る社員は、自社を体現しているようなタイプの方を選ぶようにし、次年度を見据えて毎年、育成をしながら進めています。

https://ameblo.jp/onestep-miyazaki/entry-12760714446.html?frm=theme ブログより抜粋

評価


現在、半期に一度の面談中で1人に40分をかけて、(社長自身が)丁寧に目標設定と役割についてお伝えしています。会社全体では大きな投資でありますし、僕自身も約30人全員とやるので、20時間を投資しています。

https://ameblo.jp/onestep-miyazaki/entry-12748454823.html?frm=theme ブログより抜粋

報酬、配置については記載がないので割愛しますが、

育成


同社が研修にかける費用は年間500万~600万円程度。全従業員に少なくとも年1回以上の社外研修の機会を提供しているが、山元社長が従業員と面談しながら、各従業員の3~5年後を見据えた研修テーマを決めている。

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2022/PDF/chusho/00Hakusyo_zentai.pdf 白書より抜粋

同社は従業員26名に対して、年間500万~600万円程度とあります。
社員1人当たりにすると20万円程度の研修費用です。
株式会社産労総合研究所の調べによるとコロナ前の一人当たり研修費用が平均35,628円ですから、5倍以上の費用をかけています。なかなか思い切った育成への投資です。


キーポイントは、能力開発

改めて中小企業白書に戻ってみますと、ワン・ステップ社はこのように紹介されています。

学ぶことが組織風土として定着し、感染症流行の影響を受けるも売上げを回復
イベント事業という感染症の影響を大きく受ける業種で2020年1月頃は売上高が9割減となったが、学ぶことが組織風土として定着した結果、現状を認識し、どうすれば目標とのギャップを埋められるか一人一人が考えるようになっていた。その結果、既存事業の延長線上に感染症対策のエアー式簡易陰圧室づくりという新規事業が生まれ、26歳の若手従業員を中心に事業展開し、1億円以上の売上げにつながった。売上げの落ち込みをカバーするために各従業員が前向きに課題解決に向き合うことで、2021年12月期の売上高は、感染症流行前の2019年12月期の実績まであと一歩のところまできた。今期は感染症流行前を超える見込みである。「従業員に学ぶ機会を提供するのが会社の役目だと考えているが、従業員が自ら学ぶ組織文化が根付いていたからこそ、コロナ禍でも各自が考え、新たな事業を確立することができた。今後もこの会社に入って良かったと思ってもらえるよう、従業員とともに学び、成長していきたい。」と山元社長は語る。

能力開発が機能しており、目標を達成するために一人一人が自律的に考える。そしてその結果、企業も成長する。まさに、組織として理想の形ですね。

このワン・ステップ様のキーポイントは、能力開発でした

少しだけ能力開発を深堀してみましょう。

能力開発は必要か? 答えはYes!

能力開発には計画的なOJT研修、OFF-JT研修、自己啓発支援があります。
OFF-JT研修、自己啓発支援にはコストもかかりますよね。事例ⅠではOJTじゃー OFF-JTじゃーと盲目的に書いていましたが、本当にやったほうが良いのでしょうか。

答えは、じゃん。


上図は計画的なOJT研修、OFF-JT研修の実施状況と売上高増加率の関連について表したものです。計画的なOJT、OFF-JTを実施している企業の売上高増加率は、両方やっていない企業に比べ、2.8倍高いです。
コストをかけてでもやるべきですね。

売上高増加率が高くなる要因は、次の図表にヒントが隠れていそうです。


上図は能力開発の取組状況別に、従業員の仕事に対する意欲について示しています。計画的なOJT、OFF-JT、自己啓発支援は社員のモラールを向上させることがはっきりと見て取れます

これだけ、大きな差があるにもかかわらず、実際にOJT、OFF-JTを導入している企業は5割程度しかありません。8割の経営者が「人材が課題である」と認識しているにも関わらずなんです(課題か問題かはここでは不問)

皆さまが合格した後、企業支援をする際にもぜひ伝えたいメッセージですね。

事例Ⅰに適応すると

これだけ効果のあることですから、事例1では自信をもって計画的なOJT、OFF-JTを書いてもよさそうです。

ん、でも待ってくださいね。
計画的なOJT、OFF-JTはあくまで手段です。能力開発の目的は何でしたっけ?

そもそも能力開発の目的は?


「第2-2-20図業種別に見た従業員に対する能力開発の目的」によると、「技術力向上」、「生産性向上」、「顧客満足の向上」、「社内の活性化」などが上位となっています。
先ほどのモラールの向上も含めると、

「計画的なOJTを実施する。」
というアクションで終わらせるのではなく、効果まで含めて、
「計画的なOJTを実施し、モラールを向上させる。」
「計画的なOJTを実施し、組織活性化(社内の活性化)する。」
と書けそうですね。

あと、細かいことですが、白書ではOJTではなく、「計画的なOJT」と表現されています。意図して付けていると思います。

さいごに

ふぞろいな合格答案にも書きましたが、白書は合格してからも有用な出版物です。これからも活用していきましょう。

明日は“地域連携”の切り口でともが解説します。お楽しみに。
チャオ!

<参考>
株式会社ワン・ステップ
https://onestep-miyazaki.com


中小企業白書2022年版
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2022/PDF/chusho/00Hakusyo_zentai.pdf

第2-2-16図 重視する経営課題 II-95ページ
第2-2-20図 業種別に見た、従業員に対する能力開発の目的 II-99ページ
第2-2-31図 計画的なOJT研修及びOFF-JT 研修の実施状況別に見た、売上高増加率(中央値) II-107ページ
第2-2-35図 能力開発の取組状況別に見た、従業員の仕事に対する意欲 II-111ページ
事 例2-2-3株式会社ワン・ステップ II-112ページ

株式会社産労総合研究所
https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/kyoiku/kyoikukenshu/pr_2201.html

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