敗者のゲーム

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私が住む飛騨地方でも、ようやく桜が咲き始めました。入学・就職・異動など変化が多く、世間がどこか浮ついている時期ですが、そんな中でもコツコツ学習する方々に幸あれ。

今日は「敗者のゲーム」という言葉を紹介します。

株式投資を勉強している方は、この言葉にピンと来るかもしれません。というのも、チャールズ・エリスによる同名の著書が、投資を行う上での必読書として読み継がれているためです。

投資本のタイトルと、中小企業診断士試験。どう関わってくるのでしょうか?

敗者のゲームは「いかにミスしないか」

「敗者のゲーム」という言葉は、もともとサイモン・ラモの著書「初心者のための脅威のテニス」で紹介されました。サイモンはプロのテニスプレーヤーどうしの試合と、アマチュアのテニスプレーヤーどうしの試合を観察し、勝敗の決し方に以下の傾向があることを指摘しています。

  • プロどうしの試合では、勝者側が優れたショットを繰り出すことで、対戦相手を出し抜いて勝利する。
  • アマチュアどうしの試合では、敗者側が致命的なミスを犯すことで、対戦相手に塩を送ってしまい敗北する。

 

つまり、勝者側のファインプレーで勝敗が決するのがプロの試合であり、サイモンはこれを「勝者のゲーム」と呼びました(勝者がゲームの行方を決めるため)。

勝者のゲームでは、平均よりも高い技術を磨き、ライバルを出し抜くことで勝利をもぎとらねばなりません。無難なプレーでは突き抜けたライバル達に敵わないので、時に高いリスクを取ってでも得点を狙います。

 

一方、敗者側の凡ミスによって勝敗が決するのがアマチュアの試合であり、サイモンはこれを「敗者のゲーム」と呼びました(敗者がゲームの行方を決めるため)。

敗者のゲームでは、下手にファインプレーを狙うより、致命的なミスを犯さず手堅くプレーしていれば、先に対戦相手がミスを犯して優位に立てます。「当たり前のことを当たり前にやって、あとはライバルの自滅に期待する」という戦術が成り立つのです。

 

チャールズ・エリスの著書「敗者のゲーム」は、株式のインデックス投資を「敗者のゲーム」に見立てています。下手に市場平均より高いパフォーマンスを狙うより、市場平均と連動するインデックスファンドに投資した方が、結果的に利回りが高くなるよね、という考え方です(投資は自己責任!!)。

そして、中小企業診断士2次試験も「敗者のゲーム」の要素が見受けられます。

 勝者のゲーム敗者のゲーム
概要勝者側のファインプレーで勝敗が決する。敗者側の致命的ミスで勝敗が決する。  
戦術相手を技術で出し抜けば勝利!相手が凡ミスで自滅すれば勝利!



プロどうしのテニス
アマチュアどうしのテニス
インデックス投資
中小企業診断士2次試験
勝者のゲームと敗者のゲーム

中小企業診断士2次試験も「敗者のゲーム」

中小企業診断士2次試験では、相対評価で上位約2割が合格すると推測されています。では合格者はどんな答案を作成したのだろう?と分析するのが我らがふぞろいな合格答案のミッションです。

そして実際にさまざまな答案を拝見していると、合格者の答案ほど基本的で当たり障りのないことが書かれているんです。具体的には、

  • 与件文に出てくるキーワードと1次試験の知識を使っている。
  • 特別ひねりは無くても、質問に対し素直に答えている。
  • 事例Ⅳでは、基本的な経営指標を正確に計算できている。

つまり、当たり前のことを当たり前にできているんですね。

「まさかそんな解決策があったとは!」と驚愕するようなミラクルショットを放たなくても、みんなが書けることを落とさなければ合格点に達するようです。

むしろ、ミラクルショットを放とうとしてコケてしまうケース(受験者個人の経験談を持ち出してしまったり、高度な専門用語を並べているけど文章としてまとまりがなかったり)では、得点が伸びにくいのかもしれません。

ミラクルショットを放とうとしてズッコケた受験生・・・。
緊張で平常心を失ってしまった受験生・・・。
事例Ⅰの出来が悪かったと思い込んで、戦意喪失した受験生・・・。
事例Ⅲで睡魔に襲われた受験生・・・。
事例Ⅳまで集中力が続かず、計算ミスを連発した受験生・・・。

あなたがファインプレーで周囲を出し抜くまでもなく、一定数のライバル達は自滅してゆくのです・・・。

 

これはまさに「敗者のゲーム」
そして一種の希望だと思います。

すごいことを書かなくていいんだ。与件文と1次試験知識に忠実に、当たり障りのないことを書くだけでも合格に大きく近づくんだ」ということですから。試験の場では妙案を捻り出す必要は無いので、基本的な計算練習と、キーワードの丁寧な抜き出し練習を堅実に積み上げてください。

落としちゃいけない「当たり前のこと」

落としちゃいけない「当たり前のこと」の例を挙げてみました。自分がやらかしそうな凡ミスを具体的にイメージして、先回りして対策していきましょう。

  • 試験に行く
    バカにしとるんかい、と言われそうですが、実際これが一番大事です。会場はどこか、交通手段はどうするかなど、特に地方受験生は入念にチェックしてください。
      
  • 試験を最後まで受ける
    事例Ⅰの出来が悪かったからといって、諦めて帰らない。じつは他の受験生もみんな出来が悪かったので、相対評価で合格していた・・・という話が往々にしてあります。
     
  • 解答欄を埋める
    解答欄をキーワードで埋めれば、それだけ加点される可能性が上がります。指定文字数の95%以上(「100字以内で答えよ」なら95字以上)を目安に、解答欄をしっかり埋めましょう。
     
  • 「多くの合格者が書いている、当たり障りのない答案」を真似する
    意表を突くような奇抜なアイデアを競う場ではありません。試験では平凡なことをミスなく答えて、合格してから思う存分クリエイティビティを発揮してください。なお、合格答案のベンチマーキングには「ふぞろいな合格答案」をぜひお使いください。
     
  • 計算ミスに気をつける
    特に経営指標分析とCVP分析では、基本的な計算を間違えると足切りのリスクが高まります。検算も時間配分に含めて、反復練習してください。

中小企業診断士2次試験は「敗者のゲーム」。奇抜なアイデアで賭けに出るのではなく、平凡で当たり障りのない答案を作成する方が合格に近づけます。自分の経験に基づいたアイデアで勝負できないことに物足りなさを感じる方は、なおのこと試験を早く突破して、実務に進んだ方が良いかもしれません。

というか、世の中の大抵の試験って「敗者のゲーム」じゃないかな。その弊害もあるのかもしれないけど・・・。

さて、明日は数多の試験を生き残ってきた歴戦の勇士、あっきーの登場です。
お楽しみに!

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