第3回 社長の想いと2次試験
(あらすじ)
pirorinoが語る、2次試験と実務補習の関係。 実務補習では短い時間でヒアリングをしなければいけない。これは2次試験と実務補習と同じ事。 情報があって、それを何かのルールに従って取捨選択し、必要なアウトプットを出す事が求められています。
実務補習の企業は、環境変化に苦しんでいる企業でした。pirorinoの実務補習チームでは、業界の不透明さや会社のリソースを考え、会社の経営資源を集中して生き残りを図る事を企業に提案しましたが、この提案で考えた過程は、2次試験の80分の考え方と同じでした。
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実務補習の2社目は土木関連で、技術力と研究開発に力を入れている社長さんでした。
この企業では生き残りというよりは、新しい事業機会を見つけたので、それに対応する為の新規事業を立ち上げるアドバイスを望んでいます。
●余談ですが・・●
新規事業の提案は大変です。本当に大変です。 何がつらいかって、短い期間の中、永遠の暗闇の中で出口が見えずもがき苦しむのです。
もし完璧主義な方やコンピュータ等に自信のない方で、これから実務補習を受ける予定の方がいらっしゃいましたら、新規事業の分担はできるだけ避けて通る事をおススメします。
また、土木業界はビジネスモデルが一般のモノ売りと結構違います。私が診断させていただいた企業さんは公共事業を中心として業務をされていますが、一般市場の場合と顧客が異なるため、市場の捉え方、お客さんへのアプローチ方法、ニーズ収集の手順などいろいろな点が変わってきます。これは勝手をつかむまでが大変でしたが、非常に勉強になりました。
私たちのチームでは、新規事業の成功、すなわち社長さんの想いをかなえる為に何ができるかを話し合いました。
出した結論は、新規事業を成功させる為、全社の資源配置を見直しして新規事業の推進体制を作りましょう、という事と、新規事業を進めるに当たってはチェックポイントを設定し、大きな失敗をする前に対処をしましょう、という事の2点でした。
3社目はIT企業で、こちらも新規事業を視野に入れて考えている社長さんへのアドバイスです。私はIT業界に従事していることもあり業界の目鼻が聞く為、2社目の経験も踏まえつつ、会社の将来の事業規模達成に向け財務強化・人材活用・育成と新規事業の注意点を基に提案を行いました。
これら2社目、3社目の提案では、いずれも新規事業を進めたいという社長の想いがあるものの、それを実現する為には全社の機能がそれを後押ししないと成功しない、という事がポイントでした。
社員が少なく、費用もかけられない中なんとか新規事業を推進するには、社内(外)のどこかから余力をもってこなくてはいけません。余力を作るためには、現状の事業の効率化を行ったり業務を代替する為の人材育成などが必要になります。
これは、特に2次試験の事例3で主に問われている課題への対応に関連していると思います。
事例3では、社長は新規事業を打ち出しているものの、会社の部門がいくつかある中、それらの部門の考え方のわずかな掛け違いによって非効率が発生しており、外部の視点からそれを是正してあげることが求められている事があります。
例えば事例企業は新規事業をやりたい。でも既存工程で在庫や生産効率のロスが発生している事がわかっている。その原因を考えてみると、営業部門と生産部門とがそれぞれの部門内で最適化しようとしている為だったりするわけです。
ここにしっかり提案してあげて、生産工程や人員の余力を作り出し、社長の進んでいきたい新規事業にリソース配分できるようにする、というのが事例3のセオリーです。よって、実務補習で学んだことと、事例3の与件に取り組むにあたっての考え方は同じだったと思ったのです。
2次試験はあくまで箱庭なのだから、『テストとして判断し、他人と差別化した解答をすればそれでいいんだ』という考え方も世の中にはあることは知っています。
が、実務補習と言うほぼ実務に即した場で、目の前には実際の社長さんがいらっしゃいます。私たちが役に立つ助言を言ってくれるのを待っています。その場では、明らかに診断士に対して「誰かの想いを叶える為に、人の行動、仕組み、関係に助言をする」ことが求められています。
そして今2次試験を振り返ると、2次試験も求められている事は同じであり、与件文の中に登場する人々が何を考えてきたか、今どう思っているか、そしてこれからの為に何を考えるか、が問われていたのだろう、と思います。
ということで、これらの経験を経て私は今「2次試験はコンサルティングが求められている」と確信しています。
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以上、3回にわたってpirorinoが実務補習で経験した事と2次試験の関係性について説明しました。が、以上の話は2次試験に合格し、実務補習を終えたすべての方に納得してもらえるものかというと、そこまでの自信はありません。
よって2次試験において事例企業を読み解く中、一つのヒント程度に考えてもらえればありがたいなあと思います。
ふぞろいな合格答案の2次試験に対するアプローチの中に、「不完全さの許容」という言葉があります。
物事の見方は人により様々であり、中小企業診断士の試験や活動もまた同様です。そして私たちのチームが実務補習の場で出してきた答えや、2次試験で書いてきた内容についてもやっぱり不完全なものだと思っています。
ですが、それらをひっくるめて精一杯取り組んで自分なりの答えを出した事自体に大きな意味があり、たとえそれが自分だけの経験だったとしても、きっと自分自身の診断士としての将来に向け、最も役に立つものの一つなんだろうなあと思います。
受験生の皆さんも、ご自身なりに2次試験に取り組んで答えを見つけ出して合格を勝ち取る為、ふぞろい6を活用して頂けると嬉しく思います。
長くなりましたがこの辺で。お付き合い頂いた皆様、どうもありがとうございました。