こんにちは、ストレート生合格ナビゲーターのとりっちです。
合格者の皆様のお手元にも正式に合格通知が届き、いよいよ来月からは実務補習も始まろうとしています。
これから診断士としてどんな活動をしていこう? と期待や希望に胸を膨らませている方も多くいらっしゃるかと思います。
私自身の昨年の今頃を振り返ってみると、「合格したはいいものの、それで何をしようとか、特に考えてなかったな…」と、なんともぼんやりとしたスタートラインに立っていました。
私の場合、純粋な知的好奇心だけを動機に、体系的に学ぶ手段として診断士試験を選んだので(それも、大学院に通うより経済的と言う理由だけで)、資格を生かして独立したいとかキャリアアップしたいなどはあまり考えていませんでした。
一方で、受験生時代からずっと気になっていたことがありました。
それは、国家資格かつ士業としてそれなりの難易度を誇る試験でありながら、この資格を取ったことでどのような未来が広がるかについてはあまりにも漠然としているということです。
そこで、診断士一年目としてはその「漠然としているもの」を自分なりに掴みたいと考えて、いくつかの実務案件やプロコンサル養成塾などに参加しながら、「そもそも診断士って社会にとってどのような意味や価値があるんだろう? 診断士の本質って何だろう?」ということを考え続けてきました。
今回と、次回の最後の記事では、この一年をひとつの区切りに、私なりに思う「診断士の本質」について書いてみたいと思います。
最初に書いておきますが、あくまでもこれは私が自分なりに現時点で見出した考えに過ぎませんので、人によっては見解が異なって当然と思います。
ただ、「診断士って結局なんなの?」という疑問は、多くの受験生や合格者が一度は抱く疑問だと思いますので、それを考える上でのひとつのサンプルになれば幸いです。
目次
最初に私自身のお話をします。
私の本業は広告代理店のプランナー兼ディレクターなのですが、広告や広報のアウトソーシングを請け負うという業務柄、これまでに全国津々浦々、時に海外まで赴き、色々な業種の方にインタビューしてきました。
国政に関わる某有名政治家や、地域活性化に取り組む地方の市長、世界初の技術開発に成功した研究者、誰もが名前を知るITベンチャー企業の創始者、メダルを獲得したオリンピック選手といった、後世にその名を残すような偉業を成し遂げている人のみならず、過疎化問題に取り組む地方公務員の方や、駆け出しの女優さん、離島で小さな病院を営むお医者さん、異国のとある有名な博物館で戦争の歴史を語り継ぐ職員さん、多国籍企業で文化の壁に立ち向かう会社員の方、日用品を生産する小さな町工場で製品の改良に熱意を注ぐ職人さん、新薬の開発に挑む製薬会社の研究職の方、言葉だけでなく日本の文化を伝えようと教壇に立つ日本語教師などなど、たくさんのいわゆる「市井の人」の仕事を取材してきました。
この仕事を初めて15年ちょっと経ちますが、通算で数百人くらいの方に出会いました。
(同業者のなかでもかなり多い方だと思います)
そんな多くの「働く人」の生の声を伺うたびに確信を新たにすることがあります。
それは、
ということです。
政治家であれば、たとえば国民の生活の安定や安全。
研究者であれば、たとえばより便利で快適な生活や、生態系の維持。
スポーツ選手であれば、たとえば人間の身体が持つ可能性の体現や、チームを勝利に導くこと。
職人さんであれば、たとえば技術の伝承・革新や、人々の生活をより便利に、或いは豊かにすること…。
社会や組織が正しく機能するとき、あるいはより良い方向に進もうと思う時、そこには必ず誰かによる小さな課題解決があって、その積み重ねによって成り立っているのだと思います。
さて。
そんな視点で社会や組織を見た時に、診断士とは「何ができる人」なのか?
今度は診断士という立場から、様々な診断士の仕事の実例に触れたり、自分自身も診断士として社長と会ってみたりすることで、その問いについて考えてみたのがこの一年でした。
その結果、やっぱり診断士であっても、その仕事は「小さな課題解決の積み重ね」によって成り立っているのだな、と感じました。
診断士という資格を持っているからと言って、いきなり規模の大きな組織改革を任されたり、無条件でひとつ上の土俵に上がれるというわけではないのですよね。
(企業内診断士としての組織内キャリアアップで言えば、それに近いものはありますが)
経営者そのものになるのならいざ知らず、我々はあくまでも「経営全般についての専門家」として、「診断・助言」をするだけの立場なのです。
またその一方で、他の仕事と診断士の仕事の明確な違いとは何か? についても、改めて気づくことがありました。
あらゆる仕事の本質が、そして、組織や社会をより良いものにしていくための礎が、いずれも「課題解決」にあるのだとすれば…
診断士とは、単なる肩書きのことでも、独占業務のようなわかりやすい職域のことでもなく、
ではないかと思っています。
社会や組織がより良い方向に進もうとするとき、そこには必ず「環境の変化」と「変化に対応するための課題」があります。
しかし、課題は誰にも見える形を取って現れるのでなく、多くの場合、その存在を暗に示す「事象としての問題」(例えば売上の低下であるとか、競合の参入であるとか、価格競争が激化しているであるとか)がまず現れてくるものです。
こうした「事象としての問題」から潜在的な「課題」を見つけることは思っているよりも遥かに難しいものです。
どうかすると人は目の前の「問題」だけに囚われてしまい、あるいは変化に伴うリスクへの恐怖に尻込みしたり、過去の成功体験に縛られてしまうことも珍しくなく、どうしたら目の前の「問題」を根本的に解決できるのか? そもそも、どこを目指していくべきなのか? を正しく認識することはなかなかできないものです。
(2次試験の事例文を読んできた皆様ならきっと、その難しさはよくわかりますよね。)
「課題を発見する力を持ち、具体的な解決策を提案できる人」というのは、体系的にものごとを観察するための知識やフレームワークでものごとを考える力、ロジカルかつクリティカルに問題を分析できる力、といった資質を備えている人だと私は思っています。
中小企業診断士試験で鍛えた力というのは、こうした資質に限りなく近いのではないでしょうか。
まだ誰も気づいていない課題を発見すること、目指すべき方向と、そこへの道筋を明らかにすること。
それらが診断士にとっての武器だとしたら…
目の前の社会や企業のどのようなことに、貢献できるでしょうか。
もしかしたらそこには、従来の具体例として目にする「診断士という肩書で受けられる仕事」以上の何かがあるのではないかと私は思っています。
それを信じて、既存の枠に囚われない「小さなことの積み重ね」を実行していくことで、診断士という資格の持つ可能性は漠然とした形ではなく、もっと具体的に顕在化してくるのではないかと考えています。
そしてこれは、診断士何年目であっても変わらない「本質」だと私は思います。
晴れて診断士試験に合格された皆さん、そして、これから合格を目指す皆さん、時に一緒に、時にそれぞれのフィールドで、志高く、視野は広く、「小さなこと」を積み重ねていきましょう。
次回、私の最後の記事では、診断士の本質に立ったうえで、最初の一歩としてどんなことができるのだろうか? について考えてみたいと思います。
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