経営法務の知財パートに対する一意見(出題予想のおまけ付)

同友館
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皆さんこんにちは。サエコです(自己紹介はこちら )。

1次試験本番まであと約2か月ですね。この時期は暗記3兄弟と言われる法務、情シス、中小に時間を割いていらっしゃる方が多いと思います。中でも法務は苦手意識の強い方が多いと聞きます。「なぜこんなことまで覚えねばならぬのか…」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

私は新卒以来「知財法務業務」に従事しており、1次試験受験時点では歴約15年。(このアドバンテージを経営法務で十分に発揮でき、苦手なうえに令和5年度の爆弾科目となった経営情報システムを無事にカバーして合格できました。)経営法務の知財パートに苦戦する方に少しでも何か有益なものをお届けできればと思い、この記事を書いています。

暗記に疲れたときの休憩時間にでもご覧いただけますと幸いです。

1次試験結果

【合計点】498/700点(協会得点)

【経済学・経済政策】92/100点

【財務・会計】64/100点

【企業経営理論】70/100点

【運営管理】61/100点

【経営法務】92/100点

【経営情報システム】52/100点

【中小企業経営・政策】67/100点

知財からの出題数が多いのはなぜ?

経営法務の中で、約3分の1が知財からの出題ですよね。なぜ知財がこれほどのシェアを占めるのでしょうか。

私は「技術を武器にして戦う中小企業を守るためには知財を駆使する必要があり、そんな中小企業を支援するために診断士として多少の知財の知識が必要だから」だと考えています。

というのも、これは2次試験では基本的な考え方になりますが、中小企業は自社の強みを生かして高付加価値化・差別化を図る戦略を取るのがセオリーです。

ここで、技術を強みにする中小企業が、もし当該技術を他社に模倣されてしまったらどうなるでしょうか。最悪の場合、会社存続の危機に直面してしまうかもしれません。そんなリスクを回避し、その会社の強みを確固たるものとするには、知財の知識が必須です。

受験勉強の過程で単なる暗記に疲れてしまったら、ぜひ一度、こういう視点で知財パートを眺めてみていただけたらと思います。その問題から見える景色が少し変わるかもしれません。

それでもやっぱり暗記はつらい…?

とはいえポイントを覚えないことには得点に結びつかないので、最終的には暗記が必要ですよね。

そこでもう1つお伝えしたいのは、どの法律のどの条文も、必ず理由があってそういう規定になっているということです(中には、相反する利害のある関係者がすったもんだしてどうにか着地させた妥協点的規定もありますが…)。

例えば、共有特許と共有著作物について考えてみます。

共有特許は、共有する当事者は当該共有特許を他の共有者の同意なく自由に自己実施(※1)できる一方で、共有著作物は、共有する当事者は当該共有著作物を他の共有者の同意なく自由に自己利用(※2)することはできません。

※1)特許権は「実施する」という表現を使います。

※2)著作物を単に使うだけであれば「使用する」といいます(例:ソフトウェアを使用する)が、著作権法で規定された権利に基づく行為(複製、翻案、公衆送信等)を指すときは「利用する」という表現を使います。

これは、ごくごく簡単に解説すると、「自分のものを自分で使うのは自由だよね」という原則的な考え方が特許法では採用されていますが、著作物は持ち主の一人が勝手にそれを増やしたりその内容を変えたりすると他の権利者が困るから、他の共有者の同意が必要とされています。

もっと簡単に説明すると、例えばあなたが友人と一緒に1枚の絵を描いたとします。あなたはその仕上がりにとても満足していましたが、友人があなたの知らない間に別の画風に変えてしまったとしましょう。おそらくあなたは怒りや悲しみを抱き、その友人に何らかの主張をするでしょう。

ですが、もし友人が事前にあなたの許諾を得て画風を変更していたら、何も問題にはなりませんよね(画風を変える行為は著作権法上の著作財産権のうち翻案権を行使する行為に相当します)。このような場面を想定して、共有著作物を自己利用するときは相手方の同意が必要とされています。

このように、なぜこういう規定になっているのかというところまで少し踏み込んで考えてみると、それなりに筋の通った理由が見つかります。

このように、根拠が分かれば単なる暗記科目ではなくなりませんか?

もちろん正確な内容は国の法改正検討の議事録などを読まないと確認できませんが、そこまでしている時間はないですし、誰かに見せるものでもありませんから独りよがりなロジックで十分だと思います。

もしどうしても覚えられない事項が出てきたら、少しだけその規定の背景に思いを馳せてみてください。

おまけ:令和6年度に出題されるかもしれないポイント予想

ご参考までに、長年知財業務に従事してきた経験から、今年度出題されるかもしれないと思う法改正を簡単にご紹介します。ただし、これはあくまで私個人の意見であり一切の責任は負えませんので、悪しからずご了承いただくとともに、自己責任でご覧ください。

1.特許出願非公開制度(特許法関連) 

特許出願非公開制度について | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

特許出願の内容が、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が記載されていた場合は、「保全指定」という手続きにより、出願公開、特許査定等の特許手続を留保するもので、令和6年5月1日から施行されています。

<出題予想>

・保全指定するための審査(保全審査)は特許庁が行う→×。内閣府の審査部門が行う。

・保全審査は出願人からの申出がないと行われない。→×。出願人からの申出又は特定技術分野に該当する場合に行われる。

・保全指定されても、出願人は自由に当該特許を実施できる。→×。実施は許可制。

2.コンセント制度(商標法)

コンセント制度の導入 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

先行登録商標権者の承諾を得ており、かつ、先行登録商標と出願商標との間で混同を生ずるおそれがないものについては、登録が認められるもので、令和6年4月1日から施行されています。

諸外国・地域においては、先行登録商標と同一又は類似する商標であっても、先行登録商標権者の同意(コンセント)があれば後行の商標の併存登録を認める「コンセント制度」が導入されていて、私も先行登録商標権者との間で併存契約書(Co-existence Agreement)を何件か締結した経験があったので、ついに日本でも類似する制度が認められたんだなと感じました。

<出題予想>

・先行登録商標権者の承諾を得ていれば、先行登録商標と出願商標との間で混同を生ずるおそれがあっても、登録が認められる。→×。先行登録商標権者の承諾を得ており、かつ、先行登録商標と出願商標との間で混同を生ずるおそれがないものについては、登録が認められる。

・先行登録商標権者は、併存について一度承諾したら、何の請求もできない。→×。混同防止表示請求や不正使用取消審判請求ができる。

3.限定提供データの保護範囲拡大(不競法)

r5kaisei06.pdf (meti.go.jp) のスライド6

これまでは限定提供データとして「秘密管理されていないビッグデータ」のみ保護対象だったものが、自社で秘密管理しているビッグデータであっても他者に提供する企業実務があることから、対象を「秘密管理されたビッグデータ」にも拡充されたもので、令和6年4月1日から施行されています。

<出題予想>

・限定提供データの定義は、①限定提供性、②相当蓄積性、③電磁的管理性のすべてを満たすもののうち、秘密として管理されているものを除く。→×。除外されるのは「営業秘密」に改正。

終わりに

明日はふぞ17最年長メンバー「むらまさ」です。誰しも加齢による記憶力の衰えには抗えない…そんな中での戦い方を伝授していただきます!お楽しみに!

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