【事例Ⅳ】FCF算出式を理解しよう

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皆さんこんにちは!!あっきーです!

事例Ⅳの問題の中でも難易度が高いと言われる、「正味現在価値法(NPV法)」。

今回は、NPV算出に必要なフリーキャッシュフロー(FCF)の計算式を紐解いてみようと思います。

基本だけでなく、中小企業診断士の試験では不要かもしれない応用論点にまで触れます。

少し難しい内容ですが、お時間があれば参考にしてください。

*計算式がたくさん出てきます。数式が苦手な方には苦痛かもしれません。。。ご容赦ください。


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【基本①】 FCF=営業CF+投資CF

覚えるべき公式

  • FCF = 営業CF+投資CF
  • 営業CF =(収入-現金支出)×(1-税率)+減価償却費×税率
  • 営業CF =(収入ー現金支出ー減価償却費)×(1-税率)+減価償却費

*2つの営業CFの式は、結局同じことを言っています。どちらか一方を使用してください。

NPVにおいて、まず「何を割り引くべきか」を明確にしておくことが重要です。

これは、皆さんご存知 「フリーキャッシュフロー(FCF)」 ですね。

FCFは 「ビジネスに投資をして、ビジネスから得られるキャッシュフロー」 です

 

FCFの 「フリー」 には以下のような意味が込められています。

・資金の出し手に対して自由(フリー)に分配できる

・資本構成に関係なく(フリー)得られるキャッシュフロー

 

このFCF算出の”超”基本公式は以下の通りです。

<FCFの“超”基本公式>

① FCF = 営業CF+投資CF

② 営業CF = 収入-現金支出-税金

まずは、①の式について紐解きます。

営業CFとは 「ビジネス活動から得られるCF」 です。

投資CFとは 「ビジネスに投資をして」発生するCFです。新たな固定資産を買ったらマイナスになります。

これを合わせて「ビジネスに投資をして、ビジネスから得られるキャッシュフロー(=FCF)」となります。

 

次に、②の式を紐解きます。

営業CF(ビジネスから得られるCF)は、主に3つの要素から成り立ちます。

  収入    :受け取ったお金

  現金支出:支払ったお金

  税金    :支払ったお金

単純明快。実際に受け取ったお金から、実際に支払ったお金を引けば良いだけです。

税金もキャッシュアウトの代表例ですので、ここで入れ忘れないことが重要です。

 

ただ、残念なことに実際に支払う 「税金」 の額がとても複雑。ここが躓くポイントです。

実際の税金の支払額には、「非現金支出費用」(非資金支出費用とも言います)も影響します。

「非現金支出費用」の代表例が 『減価償却費』 です。

ここでは、「非現金支出費用」 が 『減価償却費』 のみである、と仮定します。

『減価償却費』 の分だけ、現金支出を伴わない費用が多くなり、その分利益が減るため、結果として実際に支払う税金が少なくなる(税金削減効果がある)のです。

これを加味して、実際に支払う税金を計算する必要があります。

 

計算すると…

③ 税金 =“収入-現金支出”ベースの税金 - 減価償却費による税金削減効果

     =(収入-現金支出)×税率 - 減価償却費×税率

となります。

 

これ(③)と、営業CFの式(②)を組み合わせる(税金部分に代入する)と、以下の式になります。

④ 営業CF = 収入ー現金支出ー{(収入ー現金支出)×税率ー減価償却費×税率}

      =(収入ー現金支出)×1-(収入ー現金支出)×税率+減価償却費×税率

      =(収入-現金支出)×(1-税率)+減価償却費×税率

    *下線部を ”(収入-現金支出)”で1つの式にまとめている。

覚えるべき公式に記載したとおりの式になりましたね。

 

ここで、「減価償却費×税率」 は 「減価償却費-減価償却費×(1-税率)」 と置き換えることもできます。

この式を④の式に代入すると・・・

⑤ 営業CF =(収入―現金支出)×(1-税率)+減価償却費-減価償却費×(1-税率)

      =(収入ー現金支出ー減価償却費)×(1-税率)+減価償却費

  *下線部を”(1-税率)”で1つの式にまとめている。

となります。

実際に支払う税金が複雑がゆえに、営業CFの計算式も複雑になっているのです。

この営業CFに投資CFを足すことでFCFを算出することができます

(営業CFを計算して満足しないようにしてください。)

 

【応用①】 その他の非現金支出費用、運転資本を考える

覚えるべき公式

  • FCF = 営業CF+投資CF-運転資本の増加額
  • 営業CF =(収入-現金支出)×(1-税率)+非現金支出費用×税率
  • 営業CF =(収入ー現金支出ー非現金支出費用)×(1-税率)+非現金支出費用

*非現金支出費用の例:減価償却費、固定資産売却損益、引当金繰入額、評価損

《非現金支出費用》

FCFを計算するに当たって重要なのは、支払税金額に影響する 「非現金支出費用」 です。

【基本①】では、「非現金支出費用」 を 『減価償却費のみ』 と仮定しましたが、実際はそれだけではありません。

具体的には、『引当金繰入額』、『評価損』、『固定資産売却損益』等が挙げられます。

その中でも、とりわけ重要なのは 『固定資産売却損益』 です。

 

取替投資問題では、古い固定資産の売却などが行われる場合が多々あります。

固定資産の売却額はそのまま投資CFに計上するのですが、売却価格と帳簿価額に差がある場合には、固定資産売却益(特別利益)や固定資産売却損(特別損失)を計上する必要があります。

これは、実際にはキャッシュの移動が発生していない 「非現金支出費用」 です。

これらについては、計算上は減価償却費と同様に扱います。

すなわち、FCFの計算(式④や式⑤)に出てくる 「減価償却費」 は、正式には 「非現金支出費用」という表現が正しいのです。

* 『事例Ⅳ全知全ノウ』の第3章 意思決定会計の例題では、サラッとこの論点(固定資産売却損益)が出てきます。例題にも関わらず応用論点が出てくるため、戸惑った方も多いのではないでしょうか?

 

《運転資本:WC》

次に運転資本の扱いです。

運転資本(WC:Working Capital)とは 「企業が日々、事業活動を営んでいくために必要な資金(短期的投資)」を指します。

WCの代表的な計算式は以下の通りです。

⑥ WC = 売上債権+棚卸資産-仕入債務

ザックリ言うと、売上債権は回収できていない代金、棚卸資産はキャッシュ化できていない在庫、仕入債務はまだ支払っていない代金です。すなわち、運転資本がプラスの場合、回収できていないキャッシュが存在することを意味します。

例え利益が出ていても、支払い・返済に必要なキャッシュが足りなくなれば債務不履行等により最悪倒産です(黒字倒産)。そのため、運転資本分についてはキャッシュを確保しておく必要があるのです。

 

なお、FCFでは運転資本の増減額(1期前のB/Sと今期のB/Sの差分)が重要です。

運転資本が増加した場合、その分だけ追加でキャッシュが必要になります。言い換えると、増加分だけキャッシュを用いた 『事業活動への追加の投資』 が必要になるのです。

すなわち、運転資本の増加分については、キャッシュがマイナスとして計算する必要があります。

(運転資本の論点については、以下の【基本②】でも追加で説明します。)

 

【基本②】 営業利益を用いた公式

覚えるべき公式

  • FCF = 営業利益×(1-税率)+減価償却費-投資-運転資本の増加額

次に、上記のいわゆる 「営業利益を用いたFCFの公式」 について紐解いていきます。

この公式のスタートは 「FCF=税引後営業利益である」 と仮定をすることから始まります。

一方で、FCFと税引後営業利益では異なる部分も多々あります。

その異なる部分、すなわち「減価償却費」、「投資額」、「運転資本の増加額」を式に付け加えることで、FCFに近づけるように調整しているのがこの公式になります。

 

営業利益には、費用として「減価償却費」が含まれていますが、実際にはキャッシュアウトは起きていません。そのため、「減価償却費額」は足し戻す必要があります。

 

「投資」はB/Sの項目になります。すなわち、P/Lには費用として計上されるものではありません。

税引後営業利益はP/Lの話ですので、投資額については別途差し引いてあげる必要があります(有形固定資産売却時には売却額を加える)。

 

「運転資本」は【応用①】でも記載しました。「運転資本」が増加した分だけ、キャッシュが必要になるため、増加分を差し引いてあげる必要があります。

では、なぜ運転資金は 『増減分』 を使用するのでしょうか??

運転資本が記載されているB/Sはその時点で所有している資産・負債等を示しています。すなわち、その時点でのスナップショット(STOCK)を示します。

一方、営業利益などのP/LやCF(FCF含む)に関しては、1年間における変化(FLOW)を示します。

そこで、FCF計算時には、P/L(営業利益等)はそのまま使えますが、B/S項目である運転資本については「STOCK」から「変化(FLOW)」に直してあげる必要があります。すなわち、年度間の差分を取る必要があるのです。

 

【応用②】 本当に営業利益で良いのか?

覚えるべき公式

  • FCF = EBIT×(1-税率)+非現金支出費用-投資-運転資本の増加額

《利息は除く》

【基本②】の式について、なぜ営業利益なのか?という疑問が沸くと思います。

重要なのは、経常利益に関連する 「支払利息や受取利息」 といった、『資金調達上の判断』 に基づいて変化する項目はFCFに含めてはいけないというルールを理解しておくことです。

『資金調達上の判断』 に関しては、割引率(WACC)に含まれます。すなわち、NPV計算における分子問題(FCF)ではなく、分母問題(WACC)なのです。

よって、FCFの計算上では、必ず「支払利息・受取利息」については除いて考える必要があります。

そのため、「経常利益」 よりも 「営業利益」をスタートとする方が確からしいことが理解できると思います。

 

《減価償却費以外の非現金支出費用を考える》

一方、厳密には非現金支出費用は 『減価償却費』 だけではありません。

この他に、『有形固形資産売却損益』等があることを【応用①】でも紹介しました。

通常、『有形固定資産売却損益』 は 「特別損益」 に計上されます。そして、これらは 「税金」 支払額に影響します。

すなわち、特別損益に含まれる非現金支出費用を考慮するのであれば、「営業利益」 では不十分です。

そこで、利用されるのがEBIT(利払前・税引前利益、Earnings Before Interest and Taxes)です。

EBITは以下の式で表されます。

EBIT = 税引前当期純利益+支払利息-受取利息

すなわち、特別損益を含む税引前当期純利益をベースとし、WACC問題である 「支払利息・受取利息」 を排除した(税引前当期純利益から足し・引き戻した)利益となります。

これらを踏まえたうえで、「営業利益」 は 「EBIT」、 「減価償却費」 は 「非現金支出費用」 と表現する方が、厳密には正しいのです。

 

さいごに

ここまで読んで下さった方は何名くらいいらっしゃるのでしょうか笑

全体的に読みにくい文章になってしまったことを反省しています。。。

ファイナンスの本は何冊も読んでいるのですが、今回は世界のMBA生のバイブルともいわれる 「第10版 コーポレートファイナンス(著:リチャード・ブリーリー他)」 の「第6章 純現在価値に基づく投資判断」を主に参照しています。

ただし、本書は上下巻で1,500ページを超える鈍器です。

じっくり腰を据えながら基礎的な理論を理解するには良い本なのですが、独学で読破するには相当根性が必要なのでおすすめはしません。。。

興味がある、ちょうど固い枕が欲しかった、という方は是非手に取ってみてください。

 

次回は「うめりー」 です!お楽しみに!

 

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