一年の計とマネジメント(大人の学び直しのために・その4)

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こんにちは。大人の学び直し実践家のYumaです。

明けましておめでとうございます。本年もふぞろいプロジェクトをよろしくお願いします。また、多くの方から再現答案をお寄せいただきありがとうございます。今年もいただいた答案としっかり向き合って受験生の皆様に役に立つような分析をしてまいります。

一年の計は元旦にありなどと言うように本日は今年の目標を立てよう、また決意を新たにしようとしている方も多いでしょう。私もその一人であります。もともと計画性がなく一つの試験を確実に狙いに行くようなことがどうも苦手で数打てば当たるとばかりに多くの試験を受けるような性格ではありましたが、世界と私の環境が大きく変わる中において不確実性を低減させる計画の進行を望むようになった一年でありました。そうした日々の実践の中から前回に引き続き各種マネジメント手法を意識した試験勉強の一例を紹介したいと思います。


さて、前回掲示した下記の図において、学習プロジェクトの基盤たるマネジメントに活用可能な道具立てをプロジェクト管理やサービスマネジメントの領域から以下に紹介することとする。

(前回より再掲)図:学習プロジェクトの概念図

プロジェクト計画書

1つ目はプロジェクト計画書である。

プロジェクトの目標や体制、スケジュール、リスク一覧などをまとめたこの種のドキュメントは業務の中においては、メンバー間の共通認識の醸成や決裁者へのご説明資料として用いられることが多く、逆に言えば個人の試験勉強に用いるのはやりすぎに感じられるかもしれない。しかし、前回述べたように、勉強はたとえ独学であったとしても一人で完結させる必要はなく、適宜メンバーのサポートを得て進めるものである。自分の目標の実現をサポートするメンバーの参画要請にあたってこの種のドキュメントは大いに役に立つだろう。なによりこの計画書の中には体制図やコニュニケーション計画を含めることができる。リーダーが自分自身であることは変わることはないが、多くのメンバーの意見、励まし、叱咤激励を得ながらプロジェクトを進捗させるイメージを持つことは成功確率を向上させるのではないだろうか。

図:試験合格プロジェクトの体制図の例

予備校の講師、勉強仲間だけでなく友人などにも私設PMOに関与してもらい定期的な進捗報告の場を持つことを検討されたい。なお、上記に進捗管理の担当として「Anki」と記入しているのは、単語帳アプリであるAnkiのことを指している。Ankiは暗記したい概念を登録するツールであるが、たとえば問題集の該当ページ・問題番号を登録することで効率的に問題集を周回させることも可能である。Ankiの活用方法については以前の記事も参照のこと。

SRS:間隔反復システムの導入と運用(独学者のために・その3)

また、他のメンバーとの交流によるモチベーションアップについては、以前の記事を参照のこと。

長期的に挫けないモチベーションの作り方(独学者のために・その1)

EVM

2つ目はEVMである。

EVMはEarned Value Managementの略で、プロジェクト管理においてタスクの進捗管理を行う技法の一つである。これも十分複雑なプロジェクト管理で用いられる技法であって個人の試験勉強に適用するのに違和感があるところであるが、一方で、勉強においてある学習概念を確実に獲得しスキルとして発揮できるまで管理するには個人の手に余る非常に多くの工程と維持のためのコストが必要であり、こうした複雑さを管理可能なものに押さえつけるためには使える道具は個人においても活用したいところである。

さて、スケジュール管理についてはExcelなどで管理される例も多いかと思うが、各タスクに必要な時間を見積もり、タスク間の関連性を考慮しながら決定した開始日・終了日に対して、実際の進捗度合いを記入しながら進捗を日々監視、場合によっては再スケジューリングする、というのは、簡単なことではない。EVMやそれを実装したツールを用いることで、計画に対しての現在時点や将来予測が容易に可視化されるだろう。計画とその実行に課題を抱える方は検討してみてはいかがだろうか。

図:EVMの例。この例では、想定よりも進捗は進んでいるものの掛かる時間も想定以上のため、結果としては26日時点では当初予定の完了日となっていることがわかる。

上記は、チケット管理ツールであるRedmineをベースにしてEVMを表示させる機能を提供するLychee Redmineを用いた例である。日々の結果に従って予測完了日が再計算されるため、勉強量の多寡など調整のきっかけを適時に与えてくれる。なお、タスクの管理にRedmineを用いることで、教材やその章などの学習単位、また疑問点や課題の一つ一つなど様々な単位をチケットをベースに管理することができるため便利である。

KPI・SLAMチャート

3つ目はKPIとSLAMチャートである。

KPIはKey Performance Indicatorの略で重要業績評価指標と訳される。試験勉強の最終的な目標は合格であるが、その道程に沿って進捗できているか否かは適時に認識する必要があり、それを判断するための指標である。指標としては、たとえば模擬試験の点数などが活用できるかもしれないが、模擬試験は頻度が少なく、結果が出るのに時間がかかり即時性がないなどの難点もある。点数のような結果に対する指標だけではなく、勉強プロセス自体に指標を設定することで多角的に現在時点を把握することができるだろう。

なお、KPIが備えるべき性質として、管理可能性や測定容易性などが挙げられることが多い。そもそも管理できないようなものは測定しても改善が望めない点で意味がないし、測定はできるがそのために手間がかかるものも持続しづらい。何をKPIとして設定すべきかが一つのポイントであるが、これを測定すべきと断定できないため、各自考慮されたい。

図:KPIの例。活動量を測定する指標として勉強時間、理解度を測定する指標として単語カードの定着度合いを利用。

測定容易性に関して、学習にツールを用いることが挙げられる。システム側で自動的に活動を測定、必要に応じてサマリーも含めて表示する機能がある場合は測定の手間を省くことができる。私の場合はAnkiが表示する成熟度(すなわち、十分に記憶が維持された学習概念が占める割合)を一つの指標としている。

図:Ankiの統計機能が要約表示しているカードの記憶維持状態

また、測定したKPI群を経時的にまとめた図のことをSLAMチャートと呼ぶ。ITサービスマネジメントの領域において用いられるチャートで、システム/プロセス/サービスの状態を可視化することで顧客の信頼感を醸成したりメンバーのモチベーションを向上させたりするために用いられる。

図:上記KPIを週次でまとめたSLAMチャート。たとえば12月2週以降にパフォーマンスの低下が認められ、適時の対応が求められる兆候であった。

1つ目に掲げたプロジェクト計画書内のコミュニケーション計画のなかで定例会を設定し、その資料内にSLAMチャートを盛り込むような活用を期待できる。不可視なパフォーマンスを可視化することは関係者が共通な認識を得るにとどまらず、自身のモチベーション向上にもつながるだろう。


中小企業診断士のような難関資格は合格に至るまでの道のりは険しく、また何が正解かわからない、霧に包まれて進むような不安なものでしょう。道筋を照らすものとして上記ご紹介したアイデアをご参照いただければ幸いです。

あしたはこーしの登場です。

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