こんにちは!独りで頑張るあなたの心、整えます。独学サポーターのタニッチです。
今日のテーマは具体と抽象の行き来の考え方と診断士試験・実生活への応用です。
中小企業診断士2次試験において、この考え方を使うという概念がなかったのですが、下記執筆メンバーの中でもトップクラスの成績を収めた二人が過去に共通して書いていたため、春から気になっていました。
マリ 1次知識を応用する練習
実は、具体と抽象の行き来という言葉自体が抽象的なので、調べるのを敬遠していました。
しかし、セミナー資料やブログにおける、マリやたかしの思考のち密さや言語化・表現力が素晴らしく、焦りを感じたため、重い腰を上げて、いくつか関連する本を読んでみました。
一番分かりやすく、ためになったのが『「具体⇔抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問』です。
今日はこの本を基に、診断士試験において、毛色の違う問題が出題されても応用が利くだけでなく、実社会でも考える力を伸ばせる方法について説明していきます。
目次
本書では「具体⇆抽象ピラミッド」(図1)を用いて、知の発展について議論を進めます。
「横軸」が知識や情報の量的な拡大で、幅が広くなればなるほど、知識や情報の量が増加しています。
対する「縦軸」が具体と抽象の軸で、下から上に抽象度が上がっていきます。
縦方向の移動、「考える」こと、その中核になるのがこの縦軸である「抽象概念を操作する」ことです。
そして、抽象化した概念を、再度現実に応用して具体化するという、問題解決の方法を提示しています。
従来の頭が良い人、成績が優秀な人というのは、横方向の拡大=知識の蓄積、が特徴でした。
しかし、AI×データが主流となるこれからの時代、知識量だけではAIに使われていくという危険性があります。
縦方向の移動を自在にすることで、知の発展を図り、AIを活用していく人となりましょうというメッセージが本書には込められています。
個人的には、考える力については、以前『シン・ニホン』をオマージュした「シン・ダンシ」というブログ記事でも書いたように、AIを活用していくための「知覚する力、生命力、人間力」と同義だと認識しています。
つまり、
以上の力が必要と具体化できます。
では、どうすれば具体⇆抽象ピラミッドを上下運動できるようになるのでしょうか。
そのトレーニングとして29問が、本書に掲載されています。気になる方は是非ご一読ください。
「ふぞろいな合格答案」の中でも、このブログの中でも、素直に回答しようというアドバイスが頻繁に出てくると思います。
ただ、具体的な問いに対して、具体のみでの回答は表面的な解決にしかならないと本書では断じています。
このパターンは、ふぞろいな合格答案プロジェクトにご提出いただいた再現答案の中でも、あともう一歩で合格点という方に多かったです。
おそらく、過去の似たような問われ方、事例企業に対して、過去問に前例があるからという理由でキーワードを使っていたり、特定のキーワードや切り口にこだわり具体的に説明しすぎて冗長になったためか、ピントが外れていたり、多面的な解答ができていない等の特徴がありました。
抽象レベルのみで展開され、具体的な問いに対して、抽象的な問いに掘り下げるまでは行っているが、具体的な施策を提示しておらず、机上の空論にしかならないというパターンです。
本書で例として挙げられていた官僚主義的な組織での「顧客ニーズの把握ができていないので適宜迅速に対応策を強化していきたい」という例文は秀逸でした。
似たような解答を、私自身も事例Ⅱのような得意(だと勘違いしていた)事例で書いてしまったな、と反省しています。
寄せられた再現答案でも、ふぞろい流採点では加点されても、実際の得点は伸びていないというケースはこのような抽象的な美辞麗句や、簡潔に言い換えをしたいがための専門用語が並んでいるケースが多かったです。
本書が目指すのはこのパターンで、診断士試験においては、具体的な問題に対し、抽象的な内容に掘り下げた後で、抽象レベルで解答骨子を作り、具体となるキーワードを予測した上で問題文に探し、具体的な記述を当てはめていくということではないかと考えました。
え?抽象的過ぎて分かりにくい?では、具体的な例で解説していきます。
最大の理由を問われた令和元年度事例Ⅰの第1問を取り上げます。
A社長がトップに就任する以前のA社は、苦境を打破するために、自社製品のメンテナンスの事業化に取り組んできた。それが結果的にビジネスとして成功しなかった最大の理由は何か。100字以内で答えよ。
令和元年度事例Ⅰ 第1問
私は、いくつか候補を挙げておいた中から優先順位をつけられなかったため、重要そうな「市場が縮小していたこと」を「健康志向」や「後継者不足」のような背景と合わせて記述しました。(ふぞろい流採点では20点中6点…)
実際には、出題の趣旨でも語られ、合格者、Aランク答案にて多く書かれていた、戦略の誤りについて指摘すべきでした。
事業再建のための新規事業開発において、経営者が考えるべき戦略的課題に関する分析力を問う問題である。
令和元年度「中小企業の診断及び助言に関する実務の事例Ⅰ」の出題の趣旨
合格者、Aランク獲得者はどのように戦略の誤りと判断し、ふぞろい流採点で上げられているキーワードを使ったのか、その思考プロセスが知りたいんだよと、思われるかもしれません。しかし、性急に結論を急ぐのはもったいないです。ご自身の答案と比べながら、具体→抽象→具体の問題解決を実践してみませんか。
※「ふぞろいな合格答案」には解説で解答プロセスを説明していますが、一つの例として参考程度に頭の片隅に置いておいて下さい。
私は、合格者やAランク獲得者は、次の思考プロセスを経たのではないかと『「具体⇔抽象」トレーニング』の記述を基に予想しました。
まずは設問を分解します。
「ビジネスとして成功しなかった」=収益化に失敗、収益=売上-費用、つまり、
→(○○の要因)により売上が増えなかった
→(○○の要因)によりコストが増加した
このいずれかが理由だとあたりを付けます。骨子の構造を「最大の理由は、(○○の要因)により、売上が増えなかった(あるいはコストが増加)したためである。」とメモまたは短期記憶に残す。
次に与件文に書かれていそうなキーワードを推測します。(意識的か無意識かはわかりませんが、高得点者は設問解釈→与件文読みの過程で、推論により適切なキーワードを効率よく抽出しています。)
→売上が増えなかった(製品が需要を満たしていてない、営業体制がない、選択市場が小さすぎる等を予測)
→コストが増加した(管理体制の不足、既存事業とのシナジー効果がない等を予測)
のいずれかの要因ではないかとあたりを付け、与件文を読んでいく方針を固める。
※実際には、抽象→具体の思考は、1回目の与件文読み後かもしれません。
このように設問解釈時にあたりをつけ骨子を作っておくことで、解答要素の選定がはかどり、トータルでの時間短縮につながると考えます。
ちなみに、この設問で得点が伸び悩んだ方は、組織文化を最大の要因としていたり、平成28年度の事例Ⅰ印刷業の新規事業が失敗した要因である「シナジー効果を生まなかった」類のキーワードを入れていました。
過去問から「新規事業がうまくいかなかった要因」を抽象化しておくことで、具体⇒具体の問題解決による、安易な解答での失点を防ぐことができると考えます。
平成28年度であれば、「無関連多角化」(因)のため「シナジー効果がなかった」(果)
令和元年度であれば、「縮小市場に参入し」(因)、「過剰在庫」(因)で「売上低迷とコスト上昇」(果)
というような与件文の事実背景を(因)として、当然導き出せる帰結を(果)とする因果関係で整理すると記憶に残りやすいです。
似たような事実背景が出題された際に、その結果を要因としてすぐに導き出せるようになるはずです。
逆に、同じ問いであっても、与件文に書かれている背景が異なれば、別の要因であると判断できると思います。
おうむ返しや、解答に困って過去問お決まりフレーズを入れ込んだだけの、具体→具体のうわべだけの解答や、与件分にない専門用語盛りだくさんの抽象→抽象の自己満足解答をしないため、たかしの記事にあるように、「ふぞろいな合格答案」を活用し、ふぞろい流採点対象のキーワードをどのような思考プロセスで導き出したのか、仮説立てて自分なりの解答プロセスを確立していただけると幸いです。
なぜ合格者たちはそのキーワードを選んだのか、どうやったら自身も同じ解答が書けるのか、思考プロセスを推測し取り入れやすいように抽象化する作業はとても楽しいです。人間だからこそできるこの考えるという営みを是非実践してみてください。
今日はここまでにします。
それでは、明日は、再現答案にも出演している、Mr.ディスカッション「ホリホリ」が久々の登場です。
お楽しみに!