こんにちは!
独りで頑張るあなたの心、整えます。独学サポーターのタニッチです。
GWはいかがお過ごしでしたか。
私は執筆活動と引っ越しが一段落したものの、外出ができない中
仕訳と読書に明け暮れていました。
本日は、その中でも最も感銘を受けた本をご紹介します。
本記事のタイトルから、カンの良い方は気づかれていると思いますが。
●
●
●
そう、『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』です。
今日はこの本を読んで考えた、迫りくるAI×データ時代における、診断士2次試験の方向や診断士の役割について徒然なるままに書いて行きます。
目次
最初にこの本を がっつり紹介しようかと考えましたが、扱うテーマが壮大かつ、広範多岐にわたるため、諦めました。
優れた要約もあるので、こちらや本記事を読んで、興味を持っていただければ実物を手に取り、是非お読みください。著者ご本人のブログ にも書かれている通り、超多忙の中、発刊が遅れれば日本の再生が間に合わなくなるという使命感に燃え、命を削って書いたそうですが、この形容が大げさではない程の内容です。
ここ15年間1人負けを続けた日本はいつも第一波には乗り遅れ、第二、三の波に乗って巻き返している。今回 第二、三の波に乗り遅れないための日本の「勝ち筋」とその打ち手を示しており、日本にまだ希望はあると勇気をもらえるメッセージに最も感銘を受けました。
日本が歴史的に形成してきた強みを基に、「勝ち筋」を下記4つにまとめています。
1.すべてをご破算にして明るくやり直す:ex.明治維新や伊勢神宮の式年遷宮
2.圧倒的なスピードで追いつき一気に変える:ex.戦後復興、仏教
3.若い人を信じ、託し、応援する: ex. 明治維新やSony創業の背景に後ろ盾が
4.不揃いな木を組み、強いものを作る:ex.薬師寺の塔などの裏側は宮大工が組み上げた不揃いな材木
この勝ち筋を形にしていくために「打ち手」として人材育成、制度改革の方法を200ページ超にわたり、具体的に説明していくのが本書の肝です。
既に国の施策として実行に移されているものが多く、政策の立案に深く関わっていたことがうかがえます。
AIと人間に関しては、産業革命時に、機械vs人間と捉えた一部の人々が間違いであったのと同様にAI vs 人間は誤った認識だと考えられます。
実際には、AIを使い倒せる人間(あるいは国家)と、そうでない人間(国家)での対立が深まるということが予測されます。
数多く論じられているテーマのため、見飽きている方も多いかと思いますが、本書では、次のような変化が起きると予測。
ここで、人間らしさとは「知覚する力、生命力、人間力」に集約されます。
具体的には、
以上のような能力が人間らしい価値を提供できる分野になります。
これらを見て何かお気づきになりませんか。
そうです。全て経営者に必要な素養、そしてそれをサポートできる職業として経営コンサルタントが活躍できるのではないかと感じました。
AI時代に人間らしい価値を提供できる診断士の役割について改めて考えさせられました。
AI時代に必要な診断士の能力について、説明するにあたり、まずは本書に掲載のあった、課題解決の2つの型というタイトルの下図をご覧ください。
課題解決は、ギャップフィル型とビジョン設定型に類型化されます。
「現状、あるべき姿、ギャップ、ソリューション」という構造を2次試験の事例企業の分析・助言をする上での考え方として、見聞きした方もいると思います。
それぞれを本書の言葉を借りて説明します。
ギャップフィル型:原因を頻度と深刻さからチェックし、ロジックツリー的に原因を絞り込んでいく。もっとも確率が高そうなところを見極め、それにそって処方する。
問題が起きるパターンについての体系的な知識、あるいは論理的な整理が必要ではあるが、原因が特定できればやるべきことも明確になる。世の中の9割はこれにあたるビジョン設定型:そもそもどういう姿になるべきなのか(ゴール、目指すべき姿)、の見極めから課題解決を始めなくてはならない。そうしないと現状の診断すらできない(中略)
『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』
しかも、仮にどういう姿になるべきかが見えたとして、どのようにしたらそこにたどり着けるかの明確な答えも簡単には見つからない。これこそが、データ×AI時代に人間に求められる真の課題解決。世の中の課題の1割程度という見立て。
「現状、あるべき姿、ギャップ、ソリューション」という構造は同じでも、ポイント(イシュー)が異なります。 つまり、ギャップを埋めるための解の導き方が、パターン化されたものか、思考の飛躍が必要かという違いだと考えます。
※イシューとは解くべき課題です。イシューって何?横文字使うなよ、と思われた方、同じ著者による『イシューからはじめよ』を是非ご一読ください。課題解決の名著です。実務で役立ちます。
実務補習の際に配られるテキストにタイプB型の課題解決について記載があります。(下図)
ポイントとして、
・将来のありたい姿にフォーカスすること
・現状とのギャップが問題であり、課題を解決する多様な選択肢を提案する
・経営者がワクワクするストーリーを創る
が明記されています。
診断士がなすべき役割は、ビジョン設定型の課題解決なのですよという、中小企業診断協会からのメッセージが感じられませんか。
同様に、協会からのメッセージが令和元年度の試験にも反映されています。
令和元年度事例Ⅲの第3問にて問われた「新工場の在り方」、「後工程引取方式に必要な検討」を例に説明します。
第3問(配点40点)
令和元年度中小企業診断士2次試験事例Ⅲ より
X社から求められている新規受託生産の実現に向けたC社の対応について、以下の設問に答えよ。
(設問1)
C社社長の新工場計画についての方針に基づいて、生産性を高める量産加工のための新工場の在り方について120字以内で述べよ。
(設問2)
X社とC社間で外注かんばんを使った後工程引取方式の構築と運用を進めるために、これまで受注ロット生産体制であったC社では生産管理上どのような検討が必要なのか、140字以内で述べよ。
過去問を解き慣れている方は、この問題を解いて面食らった方も多かったのではないでしょうか。
事例企業が全然ダメダメじゃない。社長の方針が明確化されている。後工程引取方式等…
そう、この事例企業はビジョン設定型の課題解決が必要だったんです。
すなわち、自動車部品メーカーX社以外の量産にも対応できる新工場設立や後工程引取方式という「理想」に至るまでのギャップを埋めるために、多少の思考の飛躍が必要でした。
ギャップフィル型であれば、与件文のできていない「現状」を改め「あるべき姿(与件文や1次知識を活用)」にするという解答構成で合格点を取れていたかもしれません。(※与件文のワードを「因」とし、論理的に導き出される「果」を助言として書く)
思考の飛躍(※)が必要な、ビジョン設定型に関しても、それほど大きく変わらないと考えます。ふるい落とすための仕掛けはあるものの、出題者が望む答案を導くためのヒントは散りばめられています。
※試験対策として、誤解をあたえかねないので補足すると、思い付きを助言しろということではなく、与件文のワードを因とし、起こりうる可能性を推測、その可能性に対して、「果」として助言をしろという構造だと考えます。
与件文では、経営者ヒアリングが完了した段階の状態です。つまり、必要な情報は、(試験として仕立てるため多少ごちゃ混ぜにした上で、)全て与件文に書かれています。
具体的には、
(設問1)
社長の方針(ビジョン)を基に新工場の在り方を整理するだけ
・専用機化・専用ライン化ではなく、X社向け以外の量産の機械加工を可能に
・生産性を高めるよう工程計画を進め、最適な新規設備の選定を行う
→レイアウト面:SLPで最適なレイアウト設計をする
→設備面:汎用機・マシニングセンタを導入する
・作業者のスキルに頼った加工品質の維持ではなく、作業標準化を進める。
・人材採用難に対応して、採用は最小限にとどめ、作業方法の教育を実施し
→標準化・マニュアル化・教育(テッパンワード盛り込みで対応可能)
(設問2)
・1次試験で学んだ後工程引取方式と現状の生産管理方法と差立(因)→生産管理が混在することで現場が混乱する(推測)→全社で統一した生産統制が必要(果)
・材料はこれまで必要分を1週間前に納品される契約だったのが、X社との新取引では納品3日前のかんばんで納期確定する必要あり(因)→在庫を持つあるいは納入の契約を見直す必要有(推測)→在庫管理や材料商社との交渉が必要(果)
そして、今年の合格者は、社長のビジョンや与件文にある現状を整理したり、与件文から当然推測できる課題に対する解決策を解答できていました。
中でも、適切に1次知識を活用し解答できた方は、本事例でも高得点を取り、80点越えの答案もありました。(このあたりも「ふぞろいな合格答案13」の特集で紹介しています。)
「今後、診断士2次試験においてビジョン設定型の課題解決(助言)問題が問われるようになる」
この仮説が正しいとすると、AI×データ時代には、診断士は、
「シン・ニホン」でいうところの、人間らしい価値を提供する能力(知覚する力、生命力、人間力)が必要になると考えられます。
繰り返しになりますが、
これらの能力を伸長させるのが、私自身の目下の課題です。
残念ながらアフター・コロナにおいて経営が立ち行かなくなる企業が多数出てくる可能性があります。そんな状況下でこそ、シン・ダンシとしての役割を全うすることで、貢献できるという希望があると信じています。
シン・ニホンでも引用されていた、私の好きな映画の言葉を送ります。
「この国はスクラップ&ビルドでのし上がってきた、今度も立ち上がれる」
シン・ゴジラ (2016年東宝)
最後に、日本の勝ち筋として示されていた「不揃いな木を組み、強いものを作る」に関して、感じたことで締めます。
今年のふぞろいな合格答案メンバーもそれぞれ個人では大きな変化を起こせないかもしれません。
ですが、それぞれが組み合って、得意な部分でお互いの苦手な部分をカバーし、一つの書籍、各事例のセミナー動画を創ることができました。
今ある限られた経営資源を組み合わせて、強い経営基盤を作る
そんな人間味あふれる宮大工のような診断士になりたいと思います。
受験生のみなさま、ふぞろいな合格答案をご活用いただき、今年度の試験に合格して、力を組み合わせることで強い中小企業の経営基盤を作っていきましょう!
明日はおはこの番です。