ふぞろいな合格答案村上です。
ふぞろいメンバによる月刊企業診断連載中です。4月号も発売されました。
原稿のひとつ、私のパートの「時事ニュースで1次試験を斬る!」を紹介します。
●時事ニュースで1次試験を斬る!
【科目】中小企業政策・白書
【論点】事業再生ADR
事業再生に関する紛争を、訴訟や法的倒産手続のように裁判所による強制力を持った紛争解決の手続を利用せず、中立な第三者機関であるADR事業者の手によって、債権者・債務者間の話し合いをもとに自主的な整理手続きによって問題解決を図ることである。
●ニュース見出し: 2012年12月3日
三光汽船、2度目の破綻の真相 海運市況の崩壊で座礁(出典:東洋経済オンライン)
●ニュース要約:
2012年3月、三光汽船は船主、造船所、海外金融機関に支払い代金の繰り延べを要請すると公表し、その後すぐに国内金融機関を対象に事業再生ADRを申請した。しかし、ADRで再建を図る狙いは外れ、三光は7月に会社更生法の申請に切り替えた。最初から法的整理に踏み込まなかったのは、2度目の破綻は何としても避けたいとの思いが強かったからだ。またADRを軸とした私的整理のほうが、関係者に迷惑をかけないとの判断もあった。ADRは国内の金融機関が対象で、それ以外のステークホルダーとは個別交渉し再建に協力してもらうしかなかったが、今回は個別交渉で合意に至ることができなかった。
●ニュースを斬って1次につなげる:
金融円滑化法は、中小企業が金融機関に返済負担の軽減を申し入れた際に、できる限り貸付条件の変更等を行うよう努めることなどを内容とする法律でした。その期限が平成25年3月に切れることから、企業の倒産が増えるのではと心配されています。
そのため、さまざまな企業再生の手法が取り沙汰されています。本連載でも2月号に取り上げた「第二会社方式」もそのひとつです。そして、今回は中小企業政策化から、「事業再生ADR」を取りあげました。
過剰債務に陥った企業は、金融機関からの融資について、返済のスケジュールを遅らせたり、債務免除によって再建を図ろうとします。ひとたび企業が倒産すれば、債権の回収は困難となるため、メインバンクの主導で事業再生のための私的整理の調整を行うことが一般的です。ただし、金融機関にとって債権放棄などは自行の利益に相反するため、板挟みに陥ることがあります。一方で、民事再生法などの公的整理を選択した場合は、法的強制力をもって行われますが、企業側にも不利益な点があります。例えば、金融機関への弁済だけでなく、取引先への支払いも停止してしまうため、過剰債務を整理できても、事業そのものが継続できなくなるなどです。
これらの問題を解決するために、新たに設けられたのが事業再生ADR(Alternative Dispute Resolution)の制度です。弁護士や公認会計士などから手続き実施者を選定し、債権者会議の合意を経て、債務者の再生計画案についての助言や調査を行い、中立の立場から債務調整をすすめます。
この認定第1号である事業再生実務家協会が、日本航空の事業再生ADR申請を受理したことで、企業再生支援機構の支援決定までに金融機関への支払いを一時停止することができ、再生が進みました。
しかし、今回のニュースのように、事業再生ADRも万能ではありません。事業再生の状況に応じて、最適な選択肢を選んでいく必要があるでしょう。
●過去問:平成24年度第4問(設問3)
中小企業の事業再生に向けては、民事再生制度以外にも、中小企業再生支援協議会の設置、③事業再生ADR制度の創設等、さまざまな関連制度の整備が進められている。
文中の下線部③について、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の改正(2007 年)により創設された事業再生ADRの説明として最も適切なものはどれか。
ア 公正な第三者機関による裁判外紛争解決手続である。
イ 商取引債権者のみを対象とした私的債務整理手続である。
ウ 当事者のみによる私的債務整理手続である。
エ 都道府県による公的調停手続である。
正解選択肢:ア