実年受験生向け コア・ロジックとは(事例Ⅰ)

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こんにちは、多年度受験ナビゲーター、「実年受験生の味方」リンフ(lingfuです。

1.「実年受験生の味方現わる」、2.「実年受験生向け 2次試験に求められる思考法」、3.「実年受験生向け 実践的解答作成法」と続けて来た本ブログですが、1次試験後に本格的に2次向けの学習に入る実年受験生の皆さんに向けて、新たなフェーズに入りたいと思います。新たなフェーズの解説をこの時期から行うことには意味があります。これから説明する「コア・ロジックの抽出」に関しては、
 ・2次試験の過去問の自分なりのベスト解答を作成すること、
 ・1次試験の準備を十分に行うこと
が必要条件であるためです。

 コア・ロジックとは特殊な方法論を言っている訳ではありません、むしろひとつひとつの内容を聞いた皆さんは、「なんだ、当たり前のことじゃない」と思われることでしょう。そして、単純にそれを覚えることには意味はありません、コア・ロジックを導き出すこと、導き出したものを2次試験の各場面で実際に応用して使えるようになること味があります。丁度、自転車に乗ることを動作分析して書き出し、その文章をいくら読んでも自転車に乗れるようにはならいことと同じです。自転車に乗るには、いったんその文章を読んだ後、自分で何度もそれを実践し、体に覚えこませることにより体得できるのです。それでは説明を開始します。

コア・ロジックとは、状況によって変化することのない、因果を煮詰めていった末に残る根源的なロジックのことです。数学的に言えば、公理に相当するものと言えます。煮詰めていく、とは上位概念に抽象化していくことです、あるテーマに関する因果の情報を収集し、2次試験において作問者が論点として妥当と考えているだろう中核の論点を導き出し、蓄積します。そして、実際の試験における事例問題への解答の骨子に応用できるようにすること、すなわち「中小企業診断士としての知識の応用力を問いたい」作問者の意図への理解を深めることを目的にします

その手段として、1次試験の過去問の各設問の論点となる因果、2次試験の過去問をまず利用します。理由は、正解が公表されない中小企業診断士2次試験において唯一、よりどころとできる公式な資料が、診断士協会が作成する試験問題であるからです。すでに、みなさんには、前回の『【直前1次対策】企業経営理論:ラスト1回しで+5点加点する読み方』において、「1次試験の過去問の選択肢全てを正しい1文に分解しストックする(企業経営理論)こと」をお願いしました。これを2次試験の準備に応用していく考え方を説明します。

1次試験は各科目の知識を問う問題であり、その意味では対象となる企業の規模は問いません、すなわち大企業においてのみ問題となる論点も多く含んでいます。しかしながら、2次試験は「中小企業診断士としての知識の応用力」を問う試験であるため、設問の視点は大企業ではなく、「中小企業であるからこそ問題となる」論点を問うことになります。具体的には、「人・物・金等の経営資源に限りがある中小企業において問題になる」ことが論点となります。従って、2次試験向けのロジックを抽出するためには、先の1次試験から抽出した因果から、2次試験向けのロジックを抽出するために、取捨、読み替え、集約を行います。以下何個かの例を用いて説明します。

例として今回は、企業経営理論から、事例Ⅰのコア・ロジックを導き出して見ましょう。繰り返しますが、例として導き出したロジックだけを覚えても仕方がありません。自ら導き出すこと、それを実際の解答プロセスに応用することに意味があります。

1.ます、各設問のテーマとなる論点を書き出し、各年度で繰り返し問われている論点、そしてそれが2次試験においてもテーマや課題の背景となっている論点に着目します。

例として①イノベーション、②海外進出をあげます。

①イノベーションは1次試験の企業経営理論の中で毎年問題に取り上げられる論点であり、2次試験においても、「取り巻く環境が厳しくなる中、いかに経営資源の乏しい中小企業が技術革新・経営革新を通じて事業存続を図るか」という論点で問われるケースが多いです。H26年事例Ⅰにおいても、博士号取得者を活用し、外部連携を行って自ら技術開発を行なうようになった企業が登場しました。また、②海外進出も、「取引先のグローバル展開の進展により国内に留まっていては存続が危うい中、いかに経営資源の乏しい中小企業が海外進出を図るか」という論点が問われるケースが多いです。H24年事例Ⅰにおいても品質絶対を掲げながら海外進出を図る企業が登場しました。まず論点を決め、その論点で1次試験の各設問に使われた因果やキーセンテンスを書き出していきます。

2.次に、その論点では2次試験に登場し得ないものを省いたり、2次試験で問われるだろうと自分が思う形に表現を修正したりして内容の整理を行います。そして因果の整理を行いながら、その設問やテーマの問い方の背景になるような、上位概念を抽出していきます。この時、同類な因果はどんどん連鎖させながら、一連のロジックに拡大して行きます。

①イノベーションは、H25-11,17、H24-11、H23-9,10に問われている論点であり、以下のように整理しました。

・結果を可視化することで→様々なメンバーが参加可能になる→多義的な解釈が可能になる→多様な意見・経験を共有化する(DB等)ことが重要→組織学習が進展しイノベーションのトリガーとなる

・中小企業に足りない資源(補完資産)を外部連携で補う(大学連携、企業間連携、産業クラスター)→特異な能力を持つことで大企業との技術提携や大企業の進出への対抗が可能となる→特定の取引先に依存しない経営の安定化が図れる

・組織内においても補完体制の構築を構築する→機能横断的なチームを構成する→非公式なコミュニケーションを重視し、促す→自主的な活動を妨げない管理施策を設け、動機づけを行う→継続的な雇用に繋がる評価・報酬体系を整備する

そのためには、

・筋の良い技術の見立てを行える能力(吸収能力)の育成→試行錯誤を促す評価体系を導入する→勝ち筋技術を自社の強み資産とする技術戦略・特許戦略を構築する→継続的にイノベーションを創出する企業風土の醸成を行う

②海外進出は、H25-9、H24-10、H23-11等にて問われている論点であり、以下のように整理しました。

・進出に際しては、親会社の要請に対応する形での安易な進出は避ける→日本のモデルを持ち込まず、マーケティング・流通販売の研究を行い、現地に合ったビジネスモデスを構築する→現地企業との合弁等で足りない資産を補完する(人、情報)→デザインやネーミングで現地顧客の嗜好に対応する

・現地採用は労働者と幹部候補者とを別けて考える→幹部候補者への指導・教育と人材流出防止を図る→日本のもの作りの考えかたの理解の浸透を図る

3.因果の連鎖を構築しながら論点の整理を行うとともに、実際の2次試験での問われ方を考察します。

 ①イノベーションについては、H26年事例Ⅰにおいて、問題2にて独自技術を育成に至らなかった状況、問題3にてイノベーションを継続的に創出するための組織課題、問題4にて品質面のイノベーションの要因、問題5にて高度技術人材の継続雇用への課題が問われており、②海外進出については、H24年事例Ⅰにおいて、問題3・4において現地工場の品質を向上させるための現地労働者の育成のあり方、マネージャーの役割について問われています。上記の因果の中に多くの解答要素となる因果が存在していることが理解できると思います。

4.また、実際の問題に出たか・解答要素に使ったかだけでなく、今後この論点ではどのような聞かれ方をするかを考え、その背景となるコア・ロジックを抽出します。

たとえば①イノベーションにおいては、

・経営資源の限られる中小企業においては、オープンイノベーションにより人物金の経営資源の補完を行うのみならず、上市までの期間短縮を図り、競争優位性を確保する。

⇒コア・ロジック:『(中小企業は)経営資源の補完にオープンイノベーションを活用すべき』

・異なる考え方や経験を有する人材の知識・経験のコンフリクトを促し、新たな知識の創発に繋げるだけでなく、知識・経験の共有を可能とすることで、創発の機会を高める、そのための組織のしくみを整備する。

⇒コア・ロジック:『多様な知識・経験を蓄積・すり合わせし、創発の機会を高める』

を導き出してみました。

そしてそのような根源的な論点を意識しながら作問者の立場に立って、未来の問題をつくるならば、たとえば、

・社長主導で行ってきた技術の見立て・吸収能力の伝承をどうするか?
・異なる背景を持つ人材の積極採用から創発に繋げる組織設計をどうするか?
・他社連携により市場導入に成功した企業が自社技術開発能力をどう育成に移行するか?

等の問題の作成が可能と言えます。このように、単なる的当て的ではなく、作問者の意図を捉えた上で、問題の問われ方を考える訓練は大変重要なことと考えます。

また、このような根源的な論点は、H26年事例Ⅰのような直接的な事例のみならず、他の事例・設問にも応用できます。例えば、H25年事例Ⅰの問題5において、導入したDBが新製品開発に結びつかない理由の解答要素に、コールセンターのオペレーターに直接顧客から新製品開発に繋がる情報の聞き出すことを意識させていたか?そのような情報を蓄積・検索するしくみは?社内(外)異なる経歴・能力を持つメンバーで新たなアイデアを生み出すための組織上の仕掛けは?などの論点の抽出に役立てることができます。

以上、事例Ⅰを例にコア・ロジックの抽出の手順と、それを基準にした問題作成のされ方の訓練とその効果について解説を行いました。1次試験終了後に2次試験の準備を開始するに当たって是非この考え方に基づいた訓練を検討して頂ければと考えます。

 

◆◆ ふぞ8ブログ “実年受験生のための2次試験対応法” by リンフ(lingfu)◆◆

第1章   実年受験生の味方現る

              ・実年受験生の味方現わる! 多年度生合格ナビゲーター、リンフ(lingfu)です

第2章   実年受験生向け 2次試験に求められる思考法

              ・実年受験生の味方現わる! 多年度生合格ナビゲーター、リンフ(lingfu)です

              ・診断士試験は「実年受験生のリハビリ・アカスリ」です

第3章   実年受験生向け 実践的解答作成法

              ・実年受験生の実践的解答作成法① 因果の得点3要素+1

              ・実年受験生の実践的解答作成法② 因果の得点3要素+1(その2)

              ・実年受験生の実践的解答作成法③ 因果の得点3要素+1(その3)

              ・実年受験生の実践的解答作成法③ 因果の得点3要素+1(その4)

              ↓↓イマココ

第4章 実年受験生向け コア・ロジックとは

              ・実年受験生向け コア・ロジック(事例Ⅰ)

第5章 実年受験生向け 解答作成手順と事例集

第6章 実年受験生向け 試験本番への準備と本番での対応方法

(注:今後の内容については変更される場合があります)

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