事例Ⅳの対策

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こんにちは! 多年度合格ナビゲーターのとうへいです。

今日は、二次試験を受けるのが二回目の人向けに、私の失敗体験を踏まえた事例Ⅳに関する考察をご紹介します。

令和元年度の本試験で事例ⅣがA評価だった人は一定数いると思いますが、比較的易しめの問題構成だったことを忘れて、事例Ⅳの対策をおろそかにしていませんか?(受験2年目の私がそうでした)

そんな私の失敗体験が、少しだけでも読者の方々のお役に立てばと思い、残念な再現答案を晒しながら事例Ⅳを考察してみました。

 

事例Ⅳのトレーニングを習慣化

「合格するためには事例Ⅳは毎日やったほうがいい」という話をよく聞きます。私は、毎日やったほうがいいかどうかは人ぞれぞれだと思いますが、基本的な問題や過去問と同じパターンの問題が出たら反射的に解けるようになるまで反復トレーニングをしておいたほうがよいと思います。少なくとも定番の経営分析問題は開始20分以内に6~7割の正答率で安定的に回答できると、他の問題を考える時間を確保でき、事例Ⅳ全体の点数が上がると思います。

既視感のある問題を反射的に解けるようにしておくことには一定の意義があり、事例Ⅳのトレーニングを日課とするのは有効な対策だと思います。

ちなみに私は、不合格だった年は、事例Ⅳでのトレーニング習慣化ができていなくて、本試験当日に悔いが残る対応をしてしまっていました。

事例Ⅳの特性

前々回の記事で書いた二次試験全般の特性に加えて、事例Ⅳには次のような特性があると思います。

①タイムマネジメントが大事

詳しくはうえちゃんが解説しています。必見です。

(参考1)4回受験して4回ともA評価を獲得したうえちゃんの方針
 事例Ⅳで60点以上獲得するために重要なこと

②トレーニングにより安定的に得点できる

わからない問題が出た場合、正答できる可能性が極めて低い(事例Ⅰ~Ⅲのようにまぐれ当たりする可能性が低い)。一方、トレーニングを積んだ人にとっては、安定的に点が取りやすい

(参考2)うえちゃんのトレーニング
 オススメ事例Ⅳ対策【中小企業診断士試験2次試験対策】

(参考3)まっつが確立した解答プロセス
 2次試験の解答プロセス 事例Ⅳ|再現答案使用

③疲労状態の中での受験

事例Ⅳは言わずもがな最後の事例です。その日は、万一の電車遅延に備えて普段より早起きして、(個人差はありますが)緊張と興奮の入り混じった中で朝から3事例を解いてきているので、事例Ⅳが始まる夕方の時間帯は、自覚がなくても心身とも疲労していて、思考力や集中力が低下しがちです。

④緊張感が緩んだ中での受験

午前中に感じていた緊張感はすでに感じなくなっています。この時、力を発揮するために有益だった緊張感もなくなることにより集中力が低下しがちです。

⑤「合格したい」「合格しなきゃ」という強い思い入れの中での受験

人によっては、長年の受験勉強の集大成となる長い1日の最後の事例であるため、意気込みすぎて、想定外のことが起こった時に「やばい」と焦って、集中できなくなったり、準備したことができなくなったりすることがあるかもしれません。

私が考える事例Ⅳの特性は、こんな感じです。なんとか合格できた令和元年度の本試験を迎えるにあたっては、上記特性と2回不合格となった教訓を考慮した上で、試験当日の行動や思考を何度もイメージトレーニングをして臨みました。

 

平成30年度の事例4の教訓

私の平成30年度の二次試験の得点開示結果は、4事例合計で236点、事例Ⅳは52点でした。事例Ⅳは前年に60点でA評価だっただめ、心のどこかで「事例Ⅳはそれなりにできるだろう」という油断があって、準備が不十分だったと思っています。「あと4点取れていれば合格」としばらく落ち込む原因となった再現答案を、参考までにご紹介します。

(画像はふぞろいな合格答案プロジェクトからのフィードバックのエクセルファイルの画面キャプチャです。詳細は後述します)





第1問

点数的には十分なように見えますが、第1問が最大の失敗でした。理由は、時間を掛け過ぎたからです。タイムマネジメントに失敗しました。模試や問題演習では、開始4分までにすべての問題の設問文に目を通して難易度を想定して解く順番に目星をつけ、開始20分までに第1問の経営分析の記述まで終える、ができていたのですが、本番では経営分析が終わったのが開始27分と7分もオーバーしてしまいました。この7分のオーバーが他の問題で失点する要因になりました。

なぜそうなってしまったかというと、すべての問題を見渡した時に「全体を通じてかなり難しそう。経営分析や単純な計算問題などを落とすと勝負にならなくなる」と考えてしまい、普段より慎重に時間を掛けて計算や指標選択や検算をしてしまったからです。特に、売上高販管費比率と売上高営業利益率のどっちにするかで迷った3分間は、本当にもったいなかったと思います。

<教訓>
・タイムマネジメントが最重要、満足化基準を意識して問題を解き進める
・模試や問題演習でやらなかったことは、本番でやらない


第3問(設問1)

第1問の次は、文章問題の第4問に取り掛かろうとしましたが、事例企業のビジネスモデルがよくわからず、何を書いてよいのかピンときませんでしたので、比較的簡単そうに見えた第3問(設問1)に取り掛かりました。結果的には正答を導けたのですが、ここでも失点を恐れるあまり何度も検算をして時間を使ってしまいました。この問題が終わった時点で試験開始から45分近く経過していたと思います。問題の難しさに面食らって冷静さを失ったことにより、やるべきことの判断を誤り、タイムマネジメントに失敗しました。

<教訓>
・検算は最小限にとどめる。念入りに検算するのはすべての問題に手をつけてから
・タイムマネジメントに失敗しないために、の対策とともに、失敗した時の対策も考える
・落ち着くための対策は「天井を眺めながら10秒以上深呼吸する」とし、日頃から実践


第4問

続けて第3問(設問2)をやろうとしましたが、聞かれていることの趣旨が理解できないため先に第4問をやることにしました。残り30分しかないのに未記入欄ばかりの解答用紙にあらためて「やばい」と焦りながら、与件文に根拠を探しにいった結果、聞かれたことに答えられていない文章を作ってしまいました。

<教訓>
・設問文は落ち着いて読み込む。問いを読み間違えたら0点
・加点要素は与件文の中に必ずある


第3問(設問2)

何を聞かれているかよくわからずパニックになり、(設問1)の結果を踏まえて回答するという超基本を忘れて与件文にヒントを探しに行くなど迷走。結果、的外れな解答をしてしまいました。


第3問(設問3)

(設問2)が的外れな自覚があったので、「(設問2)の特徴を有する営業拠点の開設がD社の成長性に及ぼす影響は?」と聞かれても見当がつきません。最終的にこの問題は白紙で提出してしまうことになります。

後でよくよく考えると、(設問1)で拠点開設により営業利益が大幅に増加しているので、とりあえず「好影響」と書いておけば4点くらい入ったのでは?この流れを考えると(設問2)についても正答(少ない投資で大きな利益増につながる)に近づくことができたのでは?と思いました。やはり、本番中は、疲労とかタイムマネジメントミスによる焦りで、冷静に物事を考えることができない状態に陥っていたと思われます。

<教訓>
・(設問1)で問われた数字の意味を考えられるよう、メモは丁寧に体系立てて書いておく
・設問を個々に考えるのではなく、全体を眺めて解答の方向性を推測する
・記述問題は白紙のまま出さない。必ず何か書く


第2問(設問1)

取り掛かった時には開始から60分を過ぎていたと思います。先に別の問題をやっていたこともあって、最初に見た時よりは理解できるようになっていました。WACCは正答できましたが、要求CFの計算を過小に計算してしまいました。計算が終わった段階で70分を過ぎていて、あと3問未回答の問題が残っていたので、見直しする余裕がありませんでした。



第2問(設問2)

吸収合併により増加したCFは正答できましたが、「サービス拡充が企業価値向上につながったか?」については、(設問1)より大きい値が出たので「つながった」と書くことに。設問全体の流れを考えるとここは「つながらなかった」になるはず、とかなり違和感があったが、試験時間終了まで残り5分と迫っているので次の問題へ。


第2問(設問3)

最初に全問を俯瞰した時に「やらない問題」と目星をつけてはいましたが、あらためて設問文を読んで、時間内に解ききれないことを確信。ただこのタイミングで(設問2)はやはり「つながらなかった」になるのでは、とあらためて思う(しかし残り時間が4分なので前の問題も直しようがない)。第2問(設問3)途中計算式を書いて部分点をもらうか、空欄のままパスした第3問(設問3)の記述をするかで迷い、前者を選択。後日振り返った時には、後者の方が得点期待値が高かったかも、と思いました(たられば、なのでなんともいえませんが)。

<教訓>
・事例Ⅳはきちんとした理解が大事(疲れていても、本質を理解していれば間違えない)
・わからなくて飛ばした問題も、別の問題を解いた後戻ってくれば、意外とわかる
・設問を個々に考えるのではなく、全体を眺めて解答の方向性を推測する




再現答案を作成しよう

今回、残念な再現答案を晒そうと思った理由は、「再現度が高い再現答案を作る意義」を説明したかったからです。

 

再現答案が最も役立つのは、残念ながら二次試験に不合格となってしまった時です。本番の時にどのような心理状況でどのような解答を書いたのかを振り返ることで、意義ある教訓が得られます。合格に向けて再スタートをするときに、自分を客観視できるメリットは大きいと思います。

 

ふぞろいな合格答案プロジェクトでは、再現答案を提出してくれた人に、事例ⅠからⅣまで個々の設問の解答に対してふぞろい流採点とアドバイスをフィードバックするサービスを提供しています(これ、めちゃめちゃ大変です笑)。記述問題について客観視できる機会として、独学の人に限らず幅広い受験生から好評をいただいています。書籍「ふぞろいな合格答案エピソード13」をお持ちの方は、P275にもフィードバックに関する記載がありますので、よければご覧ください。

 

今回、私が書いた事例Ⅳの教訓が得られたのも、平成30年度の二次試験の後、帰宅する前にファーストフード店でなんとか再現答案を書いたからこそ。その日のうちなら、少し時間を掛ければなんとか思い出せます。ちなみに私は、改行位置で視覚的に解答を記憶していることが多かったので、1行が20文字で入力できるワードの原稿用紙設定機能が非常に役立ちました。

 

再現答案を書くまでは、他の人と事例の中身の話をしたり、予備校の解答をみたりするのは控えたほうがいいと思います。試験会場で実際に書いていないことを再現答案に書き込んでしまう可能性が高まるからです。そうなると、自分を客観視することが難しくなってしまい、よいことはないと思います。再現答案は背伸びをせずありのままに書くのがよいと思います。

 

合格した場合も、口述試験対策や受験生支援活動で再現答案が役立つ機会は少なくないと思います。受験生支援活動は、同期や先輩と知り合う機会になりますし、学び直しの機会としてとても有意義だと感じています。

 

ということで、ぜひ、試験当日に再現度が高い再現答案を作成することをおすすめします!

 

明日は実務補習でも奮闘したとっくんが、「2次試験の事例」と「実務補習」について考察します。お楽しみに!

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