ちょっと何言ってるか分からない事例1を読んでみる

同友館
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本日もお越しいただきありがとうございます。
1年前、2年前の今頃を振り返る今日この頃です。みずのです。

2次試験に向けて頑張っている方々は、そろそろ解答プロセスが固まりつつある頃でしょうか。

さて、本日は事例1をテーマにお送りします。

私が2次試験の勉強を始めたばかりの頃、最も苦手だったのが事例1でした。
与件がふんわりしていて、よく分からないまま、ふんわり解き終わるけれど、予備校の解答やふぞろいと比べてみると全然違う。どうしてそうなるのか分からない。なんとなく解答用紙を埋められるからこそタチが悪い。そんな感じでした。

そんなわけで

  • 事例1の与件が、ちょっと何言ってるか分からない
  • 予備校の模範解答やふぞろいを見てもどうしてこの答えになるのか分からない

このような方をターゲットに書きたいと思います。

事例1の与件が分かりにくい原因

事例1の与件が何を言ってるか分からない原因は、知識がないと理解しにくいことが多いからだと思います。

事例2は、与件のあちこちに情報が散らばっていて紐づけが大変でしたが、紐づけできれば解答できるものが多い傾向にあります。

それに対して、事例1は紐づけしただけでは分からず「他事例と比較して与件に情報が少ない」と表現する方もいます。
そこで知識や類推が必要になるのですが、私の場合、はるかが「2次試験で知っててほしいこと」で書いているような「知識をさらに深堀して体系的に理解し、聞かれたことに瞬間的に答えられるくらいまで」落とし込むことができていませんでした。今も十分かというと、全くそんなことはないです。

ポイント

  • 事例1の与件文は、知識がないと理解しにくいことが多い。
  • 知識をさらに深堀して体系的に理解し、聞かれたことに瞬間的に答えられるくらいまで落とし込むことが重要。

何を言ってるか分からない過去問の例

令和元年度 第6段落

まずは、比較的難易度の低いところから何を言ってるか分からない過去問の例を見てみます。
高齢の従業員を中心に人員削減した後の記述です。

その後の波及効果を考えると、苦渋の決断ではあったが、これを乗り越えたことで従業員の年齢が10 歳程度も引き下がり、コストカットした部分を成果に応じて支払う賞与に回すことが可能になった。

ここで段落が終わってるんですね。次の段落は「こうして社内整備を図る一方で」と話題が変わっています。なんでしょう、この「だから何?」と思わず言いそうになる尻切れトンボ感……。

ここで、太線の箇所を

  • 従業員の年齢が10 歳程度も引き下がり → 組織の若返り
  • 成果に応じて支払う賞与 → 成果主義

と知識に当てはめると、組織が活性化したり、モラールやモチベーションが上がったと類推できるのではないかと思います。ふぞろいな合格答案13の分析結果においてもそのような解答が多かったようです。

このような知識が、瞬間的に出てくるようにすることで少しずつ与件を理解できるようになってきました。

ただし、若干注意が必要な点があります。知識の丸写しで解答を書くのではなく、設問や与件に応じて知識を取捨選択し、与件の言葉を使いながら解答することが重要です。

例えば、先ほどの成果主義もメリット・デメリットがあり、その中から与件に合ったものを選んで解答していました。

ポイント

  • 与件の言葉足らずな部分を知識や理論で埋める。
  • 知識の丸写しで答えるのではなく、知識の中から与件に合うものを選んで使う。

平成30年度 第5・6段落

1年遡って、もう少し難易度の高いものを見てみます。

リーマン・ショックによって急速に市場が縮小し始めると、A 社の売上も頭打ちになった。同業者の多くがこの市場から撤退する中で、A 社はシェアこそ拡大させたが、もはや、その後の売上の拡大を期待することのできる状況ではなかった。

シェア拡大は悪くないものの、何となく思わしくない出来事のような印象を受ける文章ですね。でも、次の第6段落を読むと、事業に参入した当初から変化を予測していたからこそ、A社長が先頭に立って、あえて新規事業や製品開発に取り組んでいた風に書かれているんです。

意味が分からない。

そんな気持ちを抑えて、1次試験の問題を見てみます。

平成30年度 企業経営理論 第5問 選択肢イ(正解の選択肢)

継続的に売り上げが減少している衰退業界においては、できるだけ早く投資を回収して撤退する戦略の他に、縮小した業界においてリーダーの地位を確保することも重要な戦略の1 つである

先ほどより与件の意味を理解しやすくなったのではないでしょうか。

A社長は、この戦略を狙ってたんですね。たぶん。ニッチ・トップやミニ・リーダーあたりでしょうか。リーダーの地位を確保しておくと、市場が縮小しても同業者が撤退する中でシェア拡大を狙えますね。

ふぞろいな合格答案12の企画ページ「高得点答案から学ぼう! 加点要素の仮説」を見ると、89点を取られたTochiroさんが「ニッチ市場でリーダーとなる」と記述していることからも、おそらくこの戦略は論点の1つだったのだと思います。

でも、与件では思わしくない書き方をしているため、良いこととは読み取りづらく、若干意地悪ですよね。
だからこそ、知識がないと与件の言ってることが分かりにくく、うっかり誤った知識をあてはめてしまうと大外ししてしまう事例なのだと思います。

そうすると「こんな知識、とっさに出てこない。どうしよう」と思われる方もいるかと思います。
ご安心ください。TACデータリサーチによると、1次試験での企業経営理論の第5問の正答率は7割近かったにもかかわらず、ふぞろいな合格答案12を参照すると、2次試験でニッチ・トップやミニ・リーダーを書けた方はほとんどいないようです。

1次試験でいうと正答率の低い、DEランクと呼ばれる問題に近い解答要素なんだと思います。そう考えると、書けるに越したことはありませんが、優先順位は低い解答要素ともいえます。

それでは皆さんどうしていたかと言いますと、1つの設問には複数の論点やキーワードがありますので取れる範囲で点数を取っていたようです。

例えば、与件の「シェアこそ拡大」をもとに「シェア獲得」を解答した方がいたようです。
それでも、ふぞろいな合格答案12によると書けた方は1/3くらいでした。

もう1つのパターンとして、設問文から類推している方もいたようです。
この段落に対応する設問はこちらでした。

平成30年度 事例1 第1問

研究開発型企業であるA 社が、相対的に規模の小さな市場をターゲットとしているのはなぜか。その理由を、競争戦略の視点から100 字以内で答えよ。

「規模の小さな市場」から第4段落の「二ッチ市場」に紐づけ、ニッチ戦略の論点で差別化集中、大手との競争回避などを書いたり、第1段落の「多様で幅広い製品」と紐づけてリスク低減を書いたりしていたと思われます。
ふぞろいな合格答案12によると、前者の二ッチ戦略は半数以上の人が書けていたようです。
このような多くの人が書けている記述は必ず得点したい要素であり、二ッチ戦略に関する知識は重要論点だと言えると思います。

ちなみに、平成30年度の事例1については、マリが「変わったこと・変えるべきこと」というとても良い記事を書いていますので、まだ読まれていない方は、ぜひご覧ください。

ポイント

  • 1次試験で正解率が高くても2次試験で書けるとは限らない。
  • 分からない時は分からないなりに、与件を整理したり、設問と与件を紐づけて答えられる範囲で部分点を狙うのも手。
  • 設問解釈は大事。

まとめ

事例1の与件が分かりにくい原因は、知識がないと分かりにくい作りになっていることにあると伝わりましたでしょうか。

そうは言っても、今から1次試験の問題を自力で網羅的に復習しようとしたり、2次に出そうな問題を当てようとするのは、時間効率の面であまりおすすめしません……。重要論点以外で1次試験の中から2次試験に出そうな論点を当てているのは、受験対策を生業としている予備校でさえ1社、2社くらいしか心当たりがありません。

もし「自分の通っている予備校は、その1社、2社かも……」と思われる方がいらっしゃいましたら、当たれば与件を理解しやすくなりますので、その予備校が予想した論点は学んでおいて損はないと思います。

そうでない場合は、過去問演習を通じて重要論点を身体に染みつくレベルで叩きこむ方が優先順位は高いと思います。

また、本記事で合格答案のレベル感と、それをつかむための『ふぞろいな合格答案』の活用方法が少しでも伝われば幸いです。

1次知識の重要性については、うえちゃんの「1次試験の過去問は2次試験に活かせる?」も良ければ読んでみてくださいね。

おさらい

  • 事例1の与件は知識がないと理解しにくいことが度々ある。
  • 重要論点の知識は、過去問演習を通じて瞬間的に出てくるようにする。
  • 1次試験で正解率が高くても2次試験で書けるとは限らない。
  • 分からない時は分からないなりに、与件を整理したり、設問と与件を紐づけて答えられる範囲で部分点を狙うのも手。
  • 設問解釈は大事。

本日もお読みいただき、ありがとうございました。明日は、とうへいです。

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