商標権とは 商標を使用する者の業務上の信用を維持し、需要者の利益を保護するため、商標法に基づいて設定されるものです。 |
●ニュース記事
「白い恋人」が「面白い恋人」と和解
(出典:J—CASTニュース)2013年2月15日
●ニュース要約:
北海道の有名お土産菓子である「白い恋人」を製造販売している石屋製菓は、類似している菓子の「面白い恋人」を販売している吉本興業らに対して、商標権を侵害されたとして、菓子「面白い恋人」の販売差し止めや損害賠償を求めた訴訟を起こしていたが和解した。「面白い恋人」の販売は継続するが、パッケージデザインを「白い恋人」と誤解されないように変えることと、小売販売を近畿6府県に限定することなどが、和解の条件となった。
●ニュースを斬って1次につなげる:
まだ裁判が始まる前に、大阪出身の私は「面白い恋人」をおみやげとして買って、
関東の友人たちに渡しました。みんな、笑ってくれるかなあと思いきや、
そうはなりませんでした。
「村上さん、いつ北海道に行ってきたの?」
そうなんです、完全に本物の「白い恋人」と間違って受け取られていました。
白い恋人は「ホワイトチョコのクッキー」で、面白い恋人は「ゴーフル」で中身は違います。
でも、友人たちは、白い恋人のシリーズの一つかなあと思って食べていたのです。
そして、ようやく、パッケージの裏を見せて、「吉本興業の製品なんだよ」と伝えると、
分かってくれました。
それくらい、お菓子のパッケージが似ており、完全に誤認されていたということです。
ですから、今回の裁判の和解の条件として、
「パッケージのデザインを石屋製菓と合意したものに変える」というものが入っています。
さらに、販売は関西六府県に限定するという条件もあります。
この2つが揃えば、本家の「白い恋人」と「面白い恋人」は誤認されなと、
石屋製菓は判断したのだと思います。
(なお、一ヵ月以内の限定販売に際しては、
北海道と青森県を除いた地域で年間36回まで行なえるという条件はついています)
吉本興業が、新人のお笑いコンビに「面白い変人」と名前をつけても
誤認される可能性はないので、権利侵害の停止・予防に必要な行為を
請求する権利は発生しません。
しかし、パンだったらどうでしょうか。
菓子パンがあるように、パンと菓子は類似する商品の範疇なのでやはり
裁判は起きた可能性があるでしょう。
平成24年の経営法務の問題は、まさにこのニュースを想定したかのような設問が問われていました。
●過去問:平成24年度第7問 (正解ア)
商標権の効力に関する記述として最も適切なものはどれか。
ア 指定商品「菓子」についての登録商標「恋人」の商標権者は、
「菓子」と「パン」は相互に類似する商品と見なされているとしても、
他人に「パン」について登録商標 「恋人」を使用する権利を許諾することはできない。
商標権の効力としては、「専用権」と「禁止権」があります。
専用権とは、名称を独占排他的に使用する権利で、禁止権とは、
類似する商品について、侵害の停止・予防に必要な行為を請求する権利です。
登録商標の「恋人」の使用許諾は、専用権の行使です。
そのため、類似商品「パン」には及ばないため、
「パン」使用許諾はできないため、選択肢アは適切となります。
同友館 月刊企業診断 5月号掲載記事