お久しぶりです。ふぞろい6・事例3分析チームのpirorinoです。
現在、私は所属している勉強会で、今まさに頑張っている受験生のみなさんにアドバイスをしたり、診断士の先輩から紹介してもらった実務案件に従事したり、といった日々を過ごしています。
前回、私はブログに実務補習と診断士2次試験の深い関係について投稿させていただきましたが、今でもこの思いは変わらず、日々進化している(?)といった勢いです。
私にとって実務と2次試験は一連のもので、その深い関係を知ることで必ず2次試験の合格への最短距離につながると思っています。で、この事について、受験生のみなさんに「腹に落ちて」理解してもらえるか日々頭を悩ませているという訳です。
今回はその一端をご紹介したいと思います。
事例に取り掛かる時、みなさんはどんな気持ちで取り組んでいらっしゃいますか。事例の企業を「紙にかかれた仮想企業」と考え、「偉い学者の先生が、自分の自論をわかっているか試すために問題を出している」と考えて取り組んでいる方はいらっしゃいませんか?
ひょっとしたらそれも一つの道なのかもしれませんが、この試験は診断士を選別する試験であるからこそ、私はあえて違う見方で取り組んでほしいと思うのです。
例えば、わかりやすいのが事例3です。私が今回分析に携わった平成24年の事例3を例に挙げます。
この事例は、取り組んだ方はご存じと思いますが「ロットサイズは生産性と段取り時間とを考慮して製造部で決めている」なんて書いてあります。グラフを見ると明らかに欠品してそうなのに、製造部が自分たちの都合で勝手にきめてるのかよ!とツッコミが入る局面です。グラフを見てるんだから問題点はすぐわかりそうなもんなのに、なんで診断士がわざわざ助言しないとわからないんでしょうね?
直面している課題とか具体的な改善策とか、そんなことが設問にある中で、大変重要な一文です。
で、与件文では1行で表現するとそうなるんですが、これが実務だったとするとだいぶ違った姿が見えてくると思います。
ぜひ思い浮かべてみてください。
製造部の山田部長は52歳。妻一人と子供2人がいますが、下の子供は今年大学受験で忙しそう。もともと食品スーパー出身ですが、普段はニコニコしていてふくよかな体系で、お肉やさんらしいおじさんです。ちょっと頭は薄くなってきていますが、子供が大きくなって手がかからなくなってきたので、昔の趣味のバイクを復活させようかなあと思っている今日この頃。
でも営業の鈴木部長が持ってくる新規受注案件の事を考えるといつも胃が痛い。
『あんまり数は出ないくせに、種類ばっかり増えるんだよなあ。で、今回の新規受注はスーパーで今度は豚肉だと、こないだは牛肉だったのに。ウチの強みは衛生管理の徹底だから、少量生産ばっかり増えると切り替えの清掃作業が増えてしょうがないんだよね。
・・・また稼働率が下がっちゃうよ。でも製造部門の長としては稼働率の維持は至上命題、せめてロットサイズは維持して生産性をキープしないと。
社長も「なんとかコスト削減頑張ってくれよ・・」って言ってるし。現場の皆から不満も出てきてるので、製造部の部長としては近いうちに鈴木部長の無理な受注方針にはっきりNOを突き付けてやらないと・・・!
とはいえ、なんといっても社長の為にがんばらないとな。スーパーから独立する時に皆の盾になってがんばってくださった、社長の恩義に何とか応えなくっちゃ。』
とまあ、だいぶ妄想が入っていますが、事例企業のC社にヒアリングしたとしたら、実際の状況はこんな感じでしょう。
どうですか、「ロットサイズは生産性と段取り時間とを考慮して製造部で決めている」という内容とだいぶ因果が違って見えませんか?
言いたいことは、事例の中に出てくる一人ひとりは記号でも人形でもなく、何かしら意思をもって生きている人間、という事です。
当然ながら、解答に妄想を混ぜるのは正解から遠ざかる可能性が高く全くお勧めできません。製造部長が山田さんだろうが佐藤さんだろうが、頭が薄いかどうかも与件にないので妄想です。ただし確実に言えるのは、今、事例企業が何かの状態になっているとしたら、必ずその状態に至るやむを得ない理由があるはずだ、という事なんです。
私は、事例の中の人が困っている状況を心で感じ、同じ目線で物事を考え、そしてその後にその原因・理由を第三者として理論的に考えて答えるのが診断実務のあるべき姿であり、それはすなわち出題者が中小企業診断士に求めることを満たすこと=2次試験の合格、に一番近い道なんじゃないかと思っています。
だから、ぜひ受験生のみなさんへは、社長へのヒアリング内容である与件文を基に、事例企業に実在している問題について事例企業の中の人々が納得でき、そしてめでたく解決に結びつき社長が喜んでくれる提案をしてあげて欲しいのです。
例えば、今回われわれの事例3チームでは、欠品問題の解答の方向性として「欠品問題に対しては、計画立案の頻度を高めてロットサイズを最適化する必要がある。だがすると段取り替えが増えて生産性が下がってしまう。そこで清掃作業の標準化で段取り改善し、トータルで生産性を維持する。」というストーリーを導き出しました。
事例企業の中で人が生きているとするならば、製造部の中の人は精一杯やっています。ただ少量多品種に生産が移り変わりつつある中、欠品という形で問題が出てしまっています。製造部も営業部も頑張っているつもりですが、歯車がかみ合わずうまくいきません。
そこで(1)営業はこまめに情報を製造部へ渡し、製造部は計画頻度を増やしてロットサイズを適正化し、見込み生産の精度を高める事、(2)洗浄時間が長い事をあきらめてロットサイズ一本槍で生産性に対応している製造部に対し、別の解決方法を提案してあげること、によって、少量多品種に変化しつつある中、欠品などの生産課題を解決に導く、ということが提案になると考えています。
一人ひとりが実際に何に困っているか、理由はなぜなのか、そしてその解決策はどこにあるのか、診断士が困っている一人ひとりの立場に立って考え、外から見ているからこそ分かることを教えてあげることで、問題が解決できるという事だと私は思っているのです。
ただし、ここが本当に重要なのですが、本番・初見の問題を80分でそこまで綺麗に紡ぎあげるのは非常に難しく、結果として合格者の解答は不ぞろいになってしまうという事なんですよね。
中小企業診断士の2次試験の難しい部分ですが、だからこそわたしたちふぞろい6執筆陣が取り組んできた事には大きな意味があるのだと思います。
今回はダイジェストでお伝えしましたが、ぜひふぞろい6の分析パートをご覧に頂き、より深くご理解頂ければと思います。
おしまい。