事例Ⅰアドバイスリレー ぜあ編 ~ ナレッジマネジメントを考えよう~ 

同友館
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 組織・人事がテーマとなる事例Ⅰでは、経営戦略の決定から採用や配置、評価等個別の人事施策まで様々なレイヤーでの意思決定や施策が問われることとなります。今回は、その中でも「ナレッジマネジメント」について考えてみたいと思います。横文字だとピンとこないかもしれませんが、ベテランが持つスキルをどのように横展開していくかなどはまさにナレッジマネジメントの典型ともいえると思います。事例Ⅰはもとより、事例Ⅲでも役立つかもしれませんよ。

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「ふぞろい」の事例特別企画もぜひ読んで

 ナレッジマネジメントの話に入る前に1つ。ことしの2次試験受験の皆様は、「ふぞろいな合格答案16」をお使いいただけていますでしょうか。各事例の解説やふぞろいメンバーの再現答案など、読みどころは満載なのですが、各事例ごとの「特別企画」もおススメの記事となっています。特別企画は、各事例での頻出のテーマや過去問の傾向などのテーマについて、ふぞろいのメンバーが工夫を凝らしながら書いています。事例Ⅰの場合、ふぞ15では「事業承継」、ふぞ16では「人手不足」と、昨今話題になっていて、かつ、試験でもよく問われるテーマについて掘り下げて書いています。学習の合間のコーヒーブレイクの際にも、ぜひお読みください。

「ぜあ寿司」の事例で考えてみる

 話をナレッジマネジメントに戻し、具体的な例で見てみたいと思います。私が高校生くらいまで「料理人になりたかった」というのもあり(笑)、寿司職人の例で文章を書いてみました(架空の話です)。問題も作ってみました。

東京・銀座に店舗を構える「ぜあ寿司」は、同地で30年以上の歴史を持ち、現在では政財界の要人御用達の店としても知られています。カウンターと小さな個室からなる同店は予約が取りにくい店としても知られ、連日、日本各地の海の幸や板長が厳選した酒を求める客でにぎわっています。人気の秘密は、ネタの新鮮さにあります。板長自ら、毎日午前5時に豊洲市場に向かい、仲買人とも会話しながら、その日の最高級のネタを仕入れます。夏は鱧やうに、冬は寒ブリやヒラメ、といったように、旬の食材の目利きで右にでる料理人はいないといわれているほどです。店に帰ると、その日の献立作りに取り掛かります。その日仕入れた食材を使ったコースを考え、さらに、その日の予約リストを見ながら、常連客に対するカスタマイズメニューも作ります。「ぜあ寿司」には、弟子3人も働いていますが、板長は昔気質の職人で、「弟子は師匠の背中を見て育つもの」との感覚が染みついているため、調理の指示は必要最小限にとどめています。弟子の役割はもっぱら、天ぷらや焼き物などのサイドメニューづくりと給仕で、寿司を握るのを任せられるにはいたっていません。

【問題】「ぜあ寿司」の強みを答えよ。また、組織上の弱みについても答えよ。(字数制限は特に設けません。頭の中で考えていただければOKです)

いかがでしょうか?「旬の食材の目利きで右に出る料理人はいない」とか、「その日仕入れた食材を使ったコースづくり」とか、この板長、随所にノウハウが光ってますよね。私も、資金的に余裕があるならこんな寿司屋行ってみたいものです。でも、この店、板長が元気なうちはいいですが、体調を崩したりして店を空けてしまうと、何もできなくなってしまいますよね。「ぜあ寿司」は個人商店っぽいのでまだいいのかもしれませんが、組織となると、ノウハウや技術の継承を行い、ベテランの無形のリソースを他の社員に引き継いでいかなければなりません。それこそが、「ナレッジマネジメント」です。

ナレッジマネジメントを甘く見てはいけない

 今回、私がこのテーマについて書こうと思った理由は、過去問で問われているということだけではなく、大量退職の時代を迎えている現代にとって、経験やノウハウを軽くみてはいないかという疑問があるからです。事例Ⅰ~Ⅲのフレームワークに「けちのこしぶぎ」という言葉があります。経験、知識、ノウハウ、こだわり、信頼、ブランド、技術の頭文字をとったものです。もちろん、人事異動のときに、「引継書」は書くと思いますし、会社によっては営業に同行するなどの充実した引継ぎを行っているものと思います。ただ、どうしても、3~4年程度で異動が発生する官僚的組織においてはノウハウは軽視されがちなのではないでしょうか(少なくとも、私がいる組織ではそう感じます)。それゆえ、「けちのきしぶぎ」を持つ社員のリソースをどうほかの人に伝えるかが重要ですし、今の時代、こうした無形のリソースがますます求められる時代になっていると感じます。

過去問でもわりと問われてるテーマ

 このナレッジマネジメント、この用語で問われることはあまりありませんが、事例ⅠやⅢではわりとでてくるテーマです。(まだ問題を解いていない人がいると思うので、詳細な紹介は避けておきますね)事例Ⅰでは、何かしらの知識・ノウハウ(例えば、ITなどのノウハウや営業のコツ、顧客の特徴など)を持った人が個人的に抱えていたリソースをどう共有化し、社内に展開するか、事例Ⅲだと、ベテラン職員の技術(複雑な縫製や金属を平らに研磨する技術)をどう若手職員に伝えていくか、みたいなことを問われます。解答には、たとえば標準化・マニュアル化やOJTといったことが出てくる場合が多い気がします。こうしたときに役立つのが野中郁次郎先生の「SECIモデル」の考え方です。詳細はぜひ、1次試験のテキストやネットで調べていただきたいのですが、個人が抱えている暗黙知を形式知に変換したうえで組織全体で共有・管理し、それらを組み合わせることで新たな知識を創造する、というものです。実際の過去問においても、この枠組みを活用して解ける問題もあるので、ぜひ覚えておくとよいかと思います。(なお、さきほどの「ぜあ寿司」の文中にもある「昔ながらの職人」や「仕事は盗むもの」などの記載は、「暗黙知に留まっている状態」を示唆しており、過去問でもこうした記述をチラホラ見かけます)。

おわりに

 今回は、ナレッジマネジメントについて書いてみましたが、事例Ⅰではほかにも、「事業承継」や「人手不足」はもちろん、「経営リスクの分散」「他社とのアライアンス」「差別化戦略」などなど、現代の会社組織をめぐるあらゆる問題・課題について、診断士として分析・助言することが求められます。ぜひ、過去問を解いて、「ふぞろい」をはじめとする解答・解説を読んで、2次試験に向けた学習を進めていただければと思います。週明けも、事例Ⅰのアドバイスリレーは続きます。執筆者はスーパー経理マンのみみ。どんな内容になるのでしょうか。ご期待あれ!

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