世の中には2種類の受験生しかいない、合格する人か、それ以外か

同友館
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 私は就職してすぐの2000年はじめ、音楽配信サービスの事業化を検討していました。以下のことに懐かしい感情を覚えた方は「インターネット老人会」の入会資格ありです。

・mp3が市民権を得る(「ペリー.mp3」には笑いました)
・iTunesもまだなく音楽再生プレイヤーといえばWinamp
・P2Pファイル交換ソフトが登場し(以下自粛)

 それはさておき、当時社内で議論している時にある先輩が「CDは所有欲を満たすもの(だからCD文化はなくならないだろう)」と言ったのをよく覚えています。サブスク隆盛のいまや、当時と比べるとCDの販売数は激減していますし、「音楽を所有したい」という欲求を持つ人は減っていると思います。

 自動車とかもそうですが、「所有する財・サービス」と「レンタル・シェアする財・サービス」は時代に応じて変わるもので、変化に合わせたサービスやビジネスモデルの設計がこれからはより重要になるのだと思います。

 みなさんこんにちは、ヌワンコです。さて本日のタイトル、どこかのカリスマホストのようですが、あまり本題には関係ありません。取り上げたいのは彼の名言のような「対比して考える」ことです。

 冒頭の話でも分かりますが、対比することを通じて物事を比較する、というのは普段の仕事でも使っているかと思います。その考え方は二次試験でも活用できますので使っちゃいましょう、というお話です。

対比して考えるということ

 考えてみると世の中には対比関係が溢れています。与党と野党、好況と不況、オンプレとクラウド、陰キャと陽キャ…。例がだんだん不適切になってきたのでこの辺でやめますが、対比して考えることのメリットは「比較して考えることで比較ポイントや論点が明確になる」ことです。


 仮に自動車を買おうとしていて2つの車種で迷っていたとしましょう。どちらを買うか決めるのに「値段が高い/安い」「燃費がいい/悪い」「乗り心地がいい/悪い」「デザインが好み/好みでない」などといった評価軸を入れると思います。

 それは曖昧な情報では納得のいく意思決定ができないからで、意思決定に複数の人間が絡む場合この傾向はさらに強くなります。

※なお、「対比」という言葉を使っていますが、明確な反対の意味を表す「反義語」だけでなく、やや広めの対称性をイメージしていると思ってください(「営業」に対する「製造」とか)。

設問で出てくる対比関係

 二次試験でも対比関係に基づいた出題が出ることがあります。直近5年間の事例Ⅰ~事例Ⅲの設問から、対比関係に基づく題意をまとめたものが下の表になります。


 それぞれの題意について何を解答することが求められているか、理解できていますでしょうか。少し補足しますと、

【1】

 事例Ⅲにおいて「課題or問題点と改善策」という題意は頻出テーマです。令和元年度は出題されませんでしたが復活する可能性もあるので解けるようになってください。苦手だという方は「ふぞろい12」の特集企画ページを参考にすることをおススメします。

なお、「改善策だけ」を聞かれる場合もありますが、この場合も考え方は同じです。

 

改善策は(問題点)なので(改善策)を実施して(効果)を図る。

 

といった構文にあてはめて考えるようにしてください。

【2】

 メリット・デメリットについては自分の言葉でまとめることをおススメします(私は予備校でまとめシートを貰ったのでそれを使っていました)。理由はメリット・デメリット問題については「一次知識が出てくるか/出てこないか」が解答の速度と質を分けるからです。

 例えば令和元年度事例Ⅲの第2問、与件文等を読んでイチから推測することも可能ですが、それだと時間がかかります。この問題では

① 脳内のデータベースから一般的な「新規受託のメリット(≒効果)とデメリット(≒リスク)」「受託生産のメリットとデメリット」を思い浮かべる
② 設問の制約条件に合わないものを除外する(この場合「生産面」以外のメリット・デメリットは除外)
③ 与件文と読み比べ、内容的に整合しないメリット・デメリットを除外し、内容的に合致するメリット・デメリットを選ぶ


というプロセスを取ることで解答の速度が上がります。

【3】

 多くは「プラスとマイナス関係にある、対照的な題意」が出題されますが、変則的なパターンとして「メリットと効果」「販売とプロモーション」のような同じベクトルの題意が出題されることもあります。


 メリット:そのことによって直接的に得られる利点
 効果:そのことやメリットによって間接的・波及的にもたらされる事象


程度の理解でよいかと思いますが、どうしても書き分けができない場合は「メリットと効果は~」と書いて点を取りに行く戦略でもいいかと思います。

解答にあたっての対比関係

 実際に自分が書く解答にあたっても対比関係を意識することは重要です。メリットは以下の2つです。

【1】 構文にしやすいこと
 平成30年度事例Ⅰの第2問(設問2)ではそのものズバリ「2つの事業特性の違い」を問われています。設問を読んだ時に例えば以下のような構文を頭に浮かべます。

 

違いは、(経営危機以前に開発してきた製品の事業特性)が~であるのに対し、(複写機関連の事業特性)が~である点である。

 その後で与件文を読んで、「~」の部分の肉付けを行ったり、あるいは与件文の言葉を使いやすいよう言葉を言い換えたり構文を並べ替える、という作業を行います。

 

 構文の段階で「この問題の構文はどうしよう」と考えているのでは遅いです。設問文を読んだだけで反射的に構文のアタリがつけられるよう、練習する必要があります(もちろん中には構文を一から考えないといけない問題もありますが)。

 そうしないと、前々回書いたように、「80分間ずっと頭をフル稼働させて」「本当に考えないといけない時間にパフォーマンスが発揮できない」ことになるのです。

 

上の問題はかなり分かりやすかったですが、以下の問題はどうでしょうか。

 

平成28年度 事例Ⅰ 第2問
A社の現社長(5代目)の経営改革に関連して、以下の設問に答えよ。
(設問1)
 A社が、新規のアルバム事業を拡大していく際に留意すべき点について、これまでの学校アルバム事業の展開との違いを考慮しながら、中小企業診断士として、どのような助言をするか。100字以内で述べよ。

 

 題意は「留意すべき点」ですが、制約条件として「これまでの学校アルバム事業の展開との違いを考慮しながら」とあります。「違いを考慮しながら」と言われているのですから採点者に違いが伝わるように書かなければいけません。

 

構文としては例えば

・留意点は①~でなく~すること、②~でなく~することである。

・違いは~なことである。よって留意点は~することである。

 

といった形が想定されます。これ以外にも「与件文を読むと対比構造が浮かんでくる」といった場合もありますがその場合も同様に対比を意識した構文を心がけてください。

 

【2】 解答が多面的になること
 これは「SWOTや4Pなどのフレームワークに沿って考えることが重要な理由」と同様です。例えば「製造と営業」「製品とサービス」などの対比した関係を頭に思い浮かべることで、解答の切り口が複数になります。

まとめ

 二次試験ではフレームワークを活用し、ひとつの論点に偏らない・MECEな解答を心がけることが得点を伸ばすポイントになります。そして忘れがちですが対比関係も立派なフレームワークの一つだといえます。


 ですので与件文や設問の単語を見た時に、反射的に対比する言葉が頭に浮かぶよう、整理をしましょう。


 …と言われても時間の制約もありますし、作業に時間も取られると思います。ですので、おまけとして「過去4年間の事例Ⅰ~Ⅲの与件文と設問で出てきた単語」を基に対比関係の表を作成しました。過去問を解くのに疲れた時にでも一度眺めてみるといいと思います。

 さて明日はかーなの登場です。ねえかーな、南極に「カニクイアザラシ」という動物がいるんだけど、主食はエビ(カニは食べない)なんだって。

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