読むプロセスをスピードアップするために必要なこと【診断士2次・事例Ⅱ】

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こんにちは。チャンスを逃すな! 多年度合格ナビゲーターの、おはこです。

「事例問題の内容を把握するのに時間がかかってしまう」「読むプロセスに時間がかかり、考える時間がなくなってしまう」

事例問題の内容把握に時間がかかり、「読む」プロセスが不慣れな人向けに、前回に引き続き、事例問題の世界観を頭に入れてしまう方法をご紹介します。

なぜ内容把握に時間がかかってしまうのか

1次試験を突破し、2次試験向けの参考書等で解答手順を学べば、知識面や解答テクニック面では問題ないはずです。

しかし、私の場合、いざ問題文を読んでも内容が頭に入らず、「読む」プロセスに時間をつかってしまっていました。80分で解答用紙を埋めるには、もっとスピーディに内容を把握する必要がありました。

内容把握に時間がかかってしまう原因は何でしょうか。

原因の一つは、事例問題のストーリーや背景知識といった「世界観」が頭に入っていないためと考えられます。

学生時代の古文を思い出してください。源氏物語など作品の現代語訳やマンガを先に読むと、教科書や試験の問題文を理解しやすかった経験はありませんか。これは、登場人物の行動パターンや当時の風習といった世界観が頭に入っていたからです。逆に、古文単語と文法だけで読もうとすると、内容を理解するのに時間がかかります。

診断士試験でも、事例問題の社長の思考パターンや企業をとりまく環境といった世界観を把握しておけば、単に1次試験知識と解法だけで解くよりも、内容把握がはやくなるはずです。

事例問題の世界観を知るには

では、事例問題の世界観を知るにはどうすればよいでしょうか。

『ふぞろいな合格答案』などの2次試験用参考書で、設問文と与件文、解答例、出題の趣旨を読み物として読んでみてください。問題を解こうと思わず、小説を読むような感じでよいです。

読み進めるうちに「与件文に書いてある社長の想いを実現するために、この設問があるのか」「この設問で分析したことが、後の設問につながっているのか」「設問は順番にストーリーになっているようだ」といった気づきがあると思います。

こうした気づきを得ながら数年分の過去問を読めば、事例問題の世界観が頭に入り、「読む」プロセスがスピードアップしているはずです。

なお、「参考書だと読みにくい」という人に、記事の最後に事例問題の世界観をつかむための読み物を用意しました。

これは、直近3年分の過去問を素材に、設問文と与件文、解答例(主にふぞろい流ベスト答案を使用)、出題の趣旨を、「社長インタビュー記事」形式に構成し直したものです。質問は主に設問文から、社長の発言は主に与件文と解答例から、小見出しは出題の趣旨からです。主観が入らないよう、本試験の言い回しをほぼそのまま使っています(なので、不自然な発言もあります……)。

よろしければ活用してください。

まとめ

読むプロセスをスピードアップするために必要なことをまとめます。

  • 内容把握に時間がかかるのは、事例問題のストーリーや背景知識といった「世界観」が頭に入っていないから
  • 事例問題の世界観を知るには、過去問を読み物として読んでしまうのが早い
  • 事例問題の社長の思考パターンや、企業をとりまく環境を頭に入れてしまう

私は2次試験1か月前になっても、目標時間内(10~15分以内)に読むプロセスを終わらせることに苦戦していたため、本記事で紹介したような勉強を一時期取り入れました。読むスピードに不安がある方は試してみてください

あすはじょーきです。

[参考]社長インタビューから学ぶ事例Ⅱの世界観

今回は平成29年度から令和元年度までの事例Ⅱです。事例Ⅰは前回記事を参照してください。

  1. ビジネス誌をめくる気持ちで、社長の思考をたどってみてください。事例問題の世界観をつかむヒントがつかめると思います。
  2. 質問(設問)に対して与件文のどの部分をピックアップしているかを読み取ってみてください。インタビューのやり取りは、答案を検討する際に設問文と与件文を行き来する思考そのものだからです。
  3. 与件文からピックアップした部分から、どのキーワードを解答に使うかを考えてみてください。参考に、ふぞろい流解答で使ったキーワードは太字になっています。

令和元年度事例Ⅱ B社長

ネイルサロン

2017年に美大出身のB社長が創業したB社。美大時代に意気投合した友人と2人で、技術力と提案力を武器に成長してきた。競合が多いネイルサロン市場で新規顧客を開拓し、リピートに繋げる秘策を聞いた。

◆社内外の経営環境【出題の趣旨】

――現在の事業内容を教えてください。

弊社は資本金200万円、私を含む従業者2名の完全予約制ネイルサロンです。地方都市X市内の商店街に立地しています。【第1段落】 

――現時点(注:2019年10月末時点)のB社の状況について教えてください。強みや弱みはどのように分析していますか。【第1問設問文】

強みは、私たち2人が前の勤務先で培った提案力や技術力です。

私は美大卒業後、県内の食品メーカーに勤務し、社内各部署からの要望に応じて、パッケージ、販促物をデザインする仕事に従事しました。特に在職中から季節感の表現に定評があり、私が提案した季節限定商品のパッケージや季節催事用のPOPは、退職後も継続して利用されています。【第2段落】

もう1人の社員は美大の同級生で、卒業後は貸衣装チェーン店に勤務し、衣装やアクセサリーの組み合わせを提案するコーディネーターとして従事していました。顧客の要望を聞きながら参加イベントの雰囲気に合わせて衣装の提案を行う接客が高く評価されていたそうです。【第2段落】

私たち2人は開業前にネイリスト専門学校に通っていました。当初は絵画との筆遣いの違いに戸惑いを覚えましたが、要領を得てからは持ち前の絵心で技術が飛躍的に向上しました。【第2段落】

もう1つの強みは、店舗がお客様から落ち着く雰囲気だと高い評価を受けていることです。デザインや装飾は私たち2人が得意とするところなので、大規模な工事を除く内装のほとんどは手作業で行いました。【第3段落】

ただ、店舗は商店街の中心部から離れた場所にあり、建築から年数がたち、細長いスペースが敬遠されています。【第3段落】

また、お客様の半数が住宅地からの近さ重視で、オプションを追加する方は少なく、力を発揮したい私たちとしてはやや物足りなく感じています。【第6段落】

――なるほど。B社をとりまく状況はどのように分析していますか。【第1問設問文】

弊社が立地する商店街周辺は高級住宅地として知られています。この地域を中核として15年前にファミリー向け宅地の開発が行われ多数の家族が入居したので、弊社の顧客の大半を占める世代と同じ、40代の人口構成比が最も高くなっています。【第1段落、図1、第6段落】

また、この地域には桜祭り、七夕祭り、秋祭り、クリスマス・マーケットなどの町内会、寺社、商店街主催のイベントが毎月あり、行事が盛んな土地柄です。【第1段落】

一方で、競合も多いです。X市の駅から商店街の中心部に向かう途中に大手チェーンによるネイルサロンが出店していますし、自宅サロンと呼ばれる大手チェーンのネイルサロン勤務経験者が退職後に自宅の一室で個人事業として開業しているサロンも商店街周辺には多数存在しています。【第5段落】

◆顧客個々の状況に合わせたコミュニケーション方法【出題の趣旨】

――B社は、初回来店時にインスタント・メッセンジャーのアカウントを顧客に尋ねています。どういった目的ですか。【第2問設問文】

アカウントを尋ねているのは、予約の受け付けや確認のためです。【第2問設問文】

加えて、インスタント・メッセンジャーでは個別にメッセージを配信できるので、このアカウントを用いて個別に情報発信を行い、デザインを重視する既存のお客様の客単価を高めたいと考えています。【第2問設問文】

――具体的には、個別にどのような情報発信を行うのですか。【第2問設問文】

ジェルネイルは爪の成長に伴い施術から3週間~1ヵ月の間隔での来店が必要になります。前回の施術から3週間~1ヵ月後に、顧客の要望に合ったデザインや、毎月のイベントに合わせて季節感の表現力をいかしたデザインジェルネイルの写真を発信し、オプションの追加につなげます。【第6段落、第1問、表】

◆状況に応じた協業相手・ターゲット【出題の趣旨】

――B社店舗の近隣では、2019年11月に小型ショッピングモールが改装オープンします。その影響をどのようにお考えですか。【第3問設問文】

当初、一層の集客を期待しましたが、モール内に大手チェーンによる低価格ネイルサロンの出店が明らかになりました。これまで自宅から近いことを理由に来店していたお客様が大幅に流出すると予想しています。【第7段落】

――減少するであろう顧客分を補うため、どのような施策をお考えですか。【第3問(設問1)設問文】

商店街の他業種との協業を通じた、新規のお客様のトライアルが必要と考えています。【第3問(設問1)設問文】

具体的には、貸衣装チェーン店と協業し、10~20代の子供を持つ30~50代の、デザイン重視のお客様を獲得します。【図1】

理由は、Yさんが商店街の貸衣装チェーン店で勤務していた経緯もあり【第3段落】、協業がしやすいためです。また、Yさんは七五三、卒業式、結婚式に列席する30~50代の女性のお客様に、お客様の要望を聞きながら、参加イベントの雰囲気に合わせて衣装の提案を行う接客が高く評価されていたと聞いており【第2段落】、私どもの強みであるイベントに合わせた提案力を活かせるためです【第1問】。

◆新規顧客との長期的関係を築く施策【出題の趣旨】

――では、協業を通じて獲得した顧客層をリピートに繋げるために、どのような施策をお考えですか。【第3問(設問2)設問文】

初回来店時に店内での接客を通じて、お客様をリピートに繋げます。【第3問(設問2)設問文】

具体的には、強みである季節感の表現力や技術力を生かし【第1問】、初来店の際に、顧客の要望に合ったデザイン、もしくは顧客の期待以上のデザインを提案します。デザイン重視のお客様は、デザインに対する評価が高ければ、固定化につながる例も多いからです。【第6段落】

B社長プロフィール

美大卒業後、県内の食品メーカーに勤務し、パッケージや販促物のデザイン業務に従事。出産を契機に退職し、しばらく専業主婦として過ごしていたが、子供が手から離れた頃に、好きなデザインの仕事を、家事をこなしながら少ない元手で始められる仕事がないかと思案した結果、2017年にネイルサロンを開業した。【第2段落】

平成30年度事例Ⅱ B社長

旅館の庭園

明治初期に創業し、約150年の歴史を持つB社。そのビジネス手法は創業時からほとんど変わっていなかった。明治時代から仕事や執筆・創作活動のために訪れる宿泊客が常に一定数いたためだ。2年前に先代の急逝を受けて事業を承継したばかりの30歳代後半のB社長に、顧客・自社・競合の状況が変わる中で取り組む経営刷新への想いを聞いた。

◆顧客の状況、自社の強み・弱みと競合の状況【出題の趣旨】

――現在の事業内容を教えてください。

X市市街地中心部にある老舗日本旅館を営んでいます。資本金は500万円、従業員は家族従業員3名、パート従業員4名。客室は全15室で、最大収容人員は50名、1人1泊朝食付7,500円を基本プランとしています。【第1段落】

――B社の現状についてうかがいます。まず、顧客についてはどのように分析されていますか。【第1問設問文】

宿泊するお客様は昔なじみのビジネス客8割インバウンド客2割です。なじみのお客様は高齢化が進み、減少傾向にあります。【第7段落】

――競合の状況はいかがですか。【第1問設問文】

B社から距離の離れた駅前にはチェーン系ビジネスホテルが2軒ほどありますが、X市市街地中心部にはB社以外に宿泊施設はありません。かつてはB社と似たようなタイプの旅館もあったのですが、10年以上前に閉鎖しています。【第8段落】

――自社の強み、弱みをどのように分析されていますか。【第1問設問文】

強みは館内の雰囲気です。館内には大広間があり、その窓からは小ぶりだが和の風情がある苔むした庭園を眺めることができます。歴代の社長たちが支援してきた芸術家による美術品が随所に配置され、全体として小規模ながらも文化の香りに満ちた雰囲気です。【第2段落】 また、英語に堪能な従業員もいます。【第1段落】

一方、弱みは、X市の拡大する観光需要を享受できていないことです。B社周辺にある他の業種の店々は、拡大する観光需要をバネにこのところ高収益を上げていると聞きますが、弊社だけがこの需要を享受できていない状態です。【第8段落】

◆新規宿泊客を増加させるための新たなインターネット掲載情報【出題の趣旨】

――そういった状況を踏まえて、B社はどのような取り組みをされているのですか。

今後、新規宿泊客を増加させたいと考えています。そこで、弊社のホームページや旅行サイトに建物の外観や館内設備に関する情報を掲載しましたが、反応がいまひとつでした。【第2問設問文】

――そうなんですね。ホームページ閲覧者の好意的な反応を獲得するために、何か対策をお考えですか。【第2問設問文】

今後のメインターゲット層を明確にして、自社情報を新たに掲載します。【第2問設問文】

具体的には、和の風情を求めるインバウンド客を今後のメインターゲットとし、①畳と座卓、障子、天井吊り下げ式照明のある、布団を敷くタイプの古風な和室②和の風情がある苔むした庭園③海外でも名の知れた作家や芸術家による美術品【第2段落】④日本の朝を感じられる献立の朝食【第9段落】―を主要な外国語で【第7段落】掲載します。

◆宿泊客の好意的なクチコミを引き出すために従業員が行うサービス施策【出題の趣旨】

――他には、どのような取り組みを考えていますか。

宿泊客のインターネット上での好意的な口コミをより多く誘発するために、おもてなしの一環として、従業員と宿泊客との交流を促進したいと考えています。【第3問設問文】

――具体的には、従業員を通じてどのような交流を行うのですか。【第3問設問文】

英語に堪能な従業員らを通じて、インバウンド客に、①歴代社長が支援した芸術家による美術品【第2段落】②歴史を感じさせる大型建築物が残る一方、住民を対象にした店舗も集積する商業地域③400年以上続くとされる地域の祭りで市内各地を練り歩く豪勢な山車を引く体験ができる展示施設【第4段落】④夜間ライトアップを行う名刹【第5段落】⑤食べ歩きできるスイーツや地域の伝統を思わせる和菓子―といった写真映えする観光案内を行って交流し、SNS投稿を促進します。【第6段落】

◆X市と連携しながら宿泊需要を高める施策【出題の趣旨】

――今後の展望をお聞かせください。【第4問】

事業承継したばかりで経営の先行きが不透明であるため、宿泊棟の改築などの大規模な投資は当面避けたいです。また、既存のお客様との関係を考えると、宿泊料金の値上げにも着手したくありません。打ち手が限られる中、試しに従来の簡素な朝食を日本の朝を感じられる献立に切り替え、器にもこだわってみたところ、多くの宿泊客から喜びの声が聞かれました。

こうした様子を目にして、経営刷新して営業を継続したいと考えています。【第9段落】

――具体的にどのような施策を検討されていますか。【第4問】

X市と連携しながら宿泊需要を高める施策を考えています。

X市は大都市圏とも近く、電車で2時間程度の日帰りできる距離にあります。古き良き時代の日本を感じさせるX市の街のたたずまいは観光地として人気を集めています。【第6段落】

そして、10年ほど前、X市の名刹と商業地域が高視聴率の連続ドラマの舞台となり一躍脚光を浴びたことを機に、X市の名刹と商業エリアが一体の街並み整備を進めてきました。名刹は通年でライトアップを行い、地域ボランティアは観光案内や街の清掃活動を行い、美しい街並みと活気の維持に熱心です。こうした影響を受け、最近では、ほとんどいなかった夜間の滞在人口は増加傾向にあります。【第5段落】

こうしたX市の夜の活気を取り込んで、弊社への宿泊需要を生み出したいと考えています。【第4問設問文】

具体的には、ライトアップを観光する事前に予約のない日帰り客に対し、①ライトアップ見学付き宿泊プランの提供、②割烹料理店との協業による夕食の提供、③名刹におけるチラシの配布を行い、宿泊需要を創出します。

B社長プロフィール

民間企業に勤めていたが、2年前に父親である先代社長が急逝し、急きょ事業を承継することになり、8代目社長に就任した。現在30歳代後半。就任して1年後、館内に無料Wi-Fiを導入し、B社ホームページも開設するなど、経営刷新に取り組んでいる。

平成29年度事例Ⅱ B社長

地方都市の商店街

1955年に現社長の父親が創業し、1970年に現社長とその夫人である副社長が事業を承継したB社は、地域の主要産業の移り変わりや競合の出現、商店街の盛衰といった影響を受けながら、地域とその顧客に支えられながら同社を存続させてきた。まもなく娘への事業承継を控える現社長と、「事業継続のためには地域の繁栄が必要」と話す次期社長に、それぞれの想いを聞いた。

◆B社の強みと競合する大型スーパー、百貨店の状況【出題の趣旨】

――現在の事業内容を教えてください。

現社長 資本金1,000万円、社員3名、パート3名の寝具小売業です。1955年に創業以来、地方都市X市の商店街に1階と2階を合わせて300㎡強の売場の1店舗を構えています。【第1段落】 他の小売店が閉店した2000年代以降に、化粧品、せっけん等のこだわりの日用品販売を引き継いでいます。【第5段落】

――B社の強みは何ですか。【第1問設問文】

現社長 強みは、睡眠状況を聞きながら商品を薦めるという私が始めた接客が、多くのお客様の信頼を得ていることです。【第1段落】 また、副社長が趣味の裁縫、刺繍の技術を生かして作った小物入れやトートバッグなどのノベルティも人気があり、それを目当てに来店するお客様がいるほどです。【第1段落】 

小売店経営者、飲食店の経営者やスタッフ、工場関係者が店舗の一角に設置した休憩コーナーに集う井戸端会議が、弊社の潜在的な顧客ニーズを収集する場になっている点も強みです。【第6段落】

――B社の競合の状況はいかがでしょうか。【第1問設問文】

現社長 競合は、1980年に出展した幹線道路沿いにある大型スーパーと【第3段落】、県庁所在地の百貨店です【第6段落】。 

次期社長が大型スーパーの寝具売り場を視察したところ、高品質な商品が少なく従業員がほとんどおらず十分な説明もできないことがわかりました。【第9段落】

また、井戸端会議では「買い物のために県庁所在地の百貨店まで出かけたのに、欲しいものがなかったときは体力的、精神的につらい」ということが話題になっており、百貨店は高齢者ニーズに対し品揃えが不十分なようです。【第6段落】

◆データベースを活用しながら新たな予約会を成功させる施策【出題の趣旨】

――婦人服の予約会を行っているそうですね。どういった取り組みなのですか。

現社長 2010年頃、寝具類のボランタリー・チェーン本部から外出用を主とする婦人服の予約会を実施しないか、という打診がありました。同チェーンは近年、加盟店活性化のために、寝具に加えて婦人服、婦人用ハンドバッグ、宝飾品の仕入れと販売を強化しています。

開催には登録料を払う必要があり、長年寝具一筋でやってきた私は婦人服が売れるイメージが湧かず、当初は断る予定でしたが、井戸端会議の話を聞き、打診を受け入れました。

期間中は店舗2階の売場を整理し、試着室を設け、臨時イベントスペースとしました。ただし、スペースはそれほど広くないので、日頃の交流を通じて、顧客の好みをよく把握している副社長が品揃えを厳選しました。予約会には井戸端会議のメンバーが多数来店し、時間によっては顧客が会場に入れないほどでした。

好評を得た予約会は、継続を望む声があり、開始から既に数年が経過している現在もシーズンごとの予約会の売上は落ちずにいます。【第6段落】

――婦人服の他にも販売する予定はあるのですか。

現社長 ボランタリー・チェーン本部から新たに婦人用ハンドバッグの予約会の開催を打診されました。弊社は現在のデータベースを活用しながら、この予約会を成功させようと考えています。【第2問設問文】

データベースは、シルバー世代に関する店内の顧客台帳や私と副社長の頭の中にある情報に容易にアクセスできるよう、次期社長がデータベース化を実施したものです。私が配達時に記録した住所、副社長が記録した寝具や婦人服の購買履歴と記憶した好みを、可能な限り文字と画像にしてあります。【第10段落】

――具体的に、データベースを活用しながら、予約会を成功させるために、どのような取り組みを行うのですか。【第2問設問文】

現社長 シルバー世代の女性をターゲットとし、配達時に記録した住所データを活用したDM送付や井戸端会議等で予約会の開催を告知し、婦人服の購買履歴と好みのデータを活用して品揃えを厳選することで、来店数の増加と客単価の向上を図ります。

◆地域内の需要の変化を踏まえてターゲット層の顧客生涯価値を高める施策【出題の趣旨】

――シルバー世代に向けた施策は他に検討されていますか。【第3問】

現社長 X市ではここ数年は建築業が好調です。2世帯同居が減少し、核家族世帯のための建築需要が増えています。加えて、介護のための改装も増加しています。【第2段落】

そこで、地域内の中小建築業と連携しながら、シルバー世代の顧客生涯価値を高める施策を考えています。【第3問設問文】

具体的には、①中小建築業と連携し、介護のための改装に関する説明会を開催し、介護ベッド【第1段落】を提案することや、②こだわりの日用品の配達サービスを行い、顧客との継続的な接点を保ちます。これにより、固定客化して再購買を促し、顧客生涯価値を向上させます。【第5段落】

◆地域内の人口構成を踏まえ、新たなターゲット層の設定とそのニーズに応じた施策【出題の趣旨】

――次期社長にうかがいます。今後の展望をお聞かせください。

次期社長 弊社は、地域とその顧客に支えられて存続してきました。私は事業継続のためには、地域の反映が必要だと考えています。【第11段落】

X市役所は若年層の還流を図り、子育てに関する行政サービスを充実させた結果、子育て世代が増えています。【第2段落、図】

そこで、今後はシルバー世代以外に、人口構成比の高い30代の子育て世代をメインターゲットにして【図】、①快眠教室の頻度向上や入園準備教室を新規開催し、SNSで告知して新規顧客を獲得すること、②保育園のルールに沿った品揃えを行い関連購買を促すことで、子育て世代に住み良い街とし、地域繁栄を目指していきます。

B社現社長プロフィール

1955年に父親が創業したB社を、1970年に夫人とともに事業を承継した。睡眠状況を聞きながら商品を薦める接客は、多くの顧客の信頼を得ている。既に70歳近くとなり、一時は廃業を検討したものの、数年内に娘に事業を承継する予定。

B社次期社長プロフィール

2010年頃、子育てにめどがつきB社を手伝うようになった。保育士の勤務経験があり、シルバー世代の顧客に、孫の入園準備をアドバイスしたことをきっかけに、シルバー世代の子供世代の顧客が入園準備のアドバイスと商品を求め、来店するようになった。数年内に次期社長として、事業を承継する。

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