実務補習は事業デューデリジェンスと事業計画の訓練の場

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こんにちは!独りで頑張るあなたの心、整えます。独学サポーターのタニッチです。

先週、出身地である広島の実務補習に行ってきました。
2月の実務補習は本業の異動前に住んでいた千葉でのものだったので、それぞれの地域性の違いや合格者の共通点を肌で感じられ興味深く、また勉強になるものでした。
実務補習とは何かについては、先代のブルーオーシャンさんの「実務補習の心得」をご覧ください。

1次試験と2次試験の勉強は、合格登録後の実務にどう生きるのかについて、実務補習で経験し、本を読んで知りえた範囲で記事にします。夏の勉強のモチベーションの足しにしてもらえれば幸いです。

事前に読んだ本

協会主催の実務補習に申し込むと実務補習テキストという冊子が送られてくるのですが、今回の実習前には下記の本を読んで臨みました。

再生コンサルティングの質を高める 事業デューデリジェンスの実務入門

書名にある「事業デューデリジェンス(以下事業DD)」とは、「企業を調査して、報告書にまとめる」事業調査報告書を作成することをいい、コンサルティングをする上での基礎になります。

実務補習で経営診断をする対象企業は、「債務超過や売上減少」等の問題を抱えていることが多く、資金繰りが厳しくなっている「再生企業」状態のこともあります。
そんな「再生企業」の問題を早急に解決するために、「問題点と強みを適切に抽出し、具体的な再生シナリオが描かれた」高品質な事業DDを行うスキルを身に付けられるノウハウが詰まっているのが本書です。

事業再生コンサルティングは下記画像のステップで進んでいきます。

再生コンサルティングの質を高める 事業デューデリジェンスの実務入門より引用

実務補習は、①事業DD(事業調査報告書の作成)と②アクションプラン作成が範囲になります。
大げさなようですが、事業再生の一部を任されていると思うようにしています。

なお、本書にはテンプレートがついており、今後独立や副業時には「型」として使いたいと思います。

余談ですが、私が初めてデューデリジェンスという言葉に出会ったのは、大学浪人時に「ハゲタカ」を読んだ時です。ダメになった企業の事業を切り売りして再生させる…こんな世界があるのかと目から鱗でした。
登場人物では、凄腕ハゲタカファンドマネージャーである主人公の鷲津ではなく、ちょっとダメなところのある企業再生支援を手掛ける芝野に憧れや共感を抱いていました。

残念ながら、大学では勉強に身が入らず、別の道に進みましたが、今になって沸々と当時の夢を追ってみることに興味を持ち始めています。

 

  

前回実務補習からの反省点と大きく違ったところ

千葉県での1回目の実務補習を受けて、反省点を活かして臨みました。

・財務に苦手意識があり、財務担当ではなかったこともあり、事前調査で経営分析や財務諸表のチェックを怠った結果、議論に貢献できなかった

⇒簿記1級の勉強と事前準備を徹底

・「強み」を活かした施策に関して、アイディアは出てくるが実行しやすさ等を考慮できていなかった

⇒一通り流れを理解したので、「型」の部分は省力化し、対象企業が実行に移しやすく効果が出る施策を考える部分に時間を使う

ここで再び冒頭の書籍から引用します。

自動生成された代替テキスト: 
事業DDの進め方
2~5日
3~5日
3~5日
⑤
④
③
②
2~3日
①
序
事業計画書作成
アクションプラン作成
事業調査報告書作成
調査(ヒアリング・現地視察)
・外部環境分桁
・財務分析
・会社情報
事前準備
実施内容
事業DO
事業計画
再生コンサルティングの質を高める 事業デューデリジェンスの実務入門より引用

通常の実務補習では①②③④を経験できます。
ところが、広島では、⑤まで助言しようということになりました。すなわち、3~10年程度先までを予測した損益計算書(PL)を作り、銀行に対しどの程度返済能力があるかを確認し、その計画と連動したアクションプラン作成をすることになったのです。

 

というのも、診断先の社長には、海外展開の夢があり、それに向けて、黒字化、新商品開発、新規顧客開拓、海外展開という形で提案するというストーリーを立てたためです。実際に、施策をいくつかのステージに分け、9期先までの採用や新規先開拓、新製品開発に関する投資を考慮に入れたPLを計画しました。
限られた時間の中で苦しい作業でしたが、チームで協力し合い報告書をまとめ、発表にこぎつけました。

この報告書を基に金融機関から追加融資してもらえる出来ですと、金融機関出身の指導員に評価してもらえ、診断先の社長からもお褒めの言葉をいただき、やりがいを感じました。

1次試験や2次試験の目的は?

翻って、実務補習の事業DDのノウハウを逆に2次試験に生かせないか考えてみました。

出展元は忘れたのですが、昨年試験勉強中に見て納得した登録までに必要な各試験や実習で求められる能力です。2次試験の勉強に行き詰った際は、なぜこの勉強をしているのか、最終目的は何なのか、ゴールから逆算して考えてもらうとモチベーションを高いまま維持できるかと思います。

1次試験中小企業診断士としての知識基盤、共通の思考の枠組みを身に付けること
→共通の基盤を持つことで早く深く議論をし、短期間で事業DDを仕上げるため
2次試験(筆記)制約条件下で制限時間内に改善の方向性を示し、突拍子のないことを書かない能力
→フレームワーク等を適切に駆使し、具体的で実効性の高い助言をするため
2次試験(口述)対面で質問されたことに適切に答える能力
→ほかの士業や支援機関の方と組んで支援をする上で最低限のコミュニケーション能力
実務補習短期間で事業DDを仕上げ、事業計画を作成し、説明する能力
→事業DDと事業計画作成・発表を通して、「診る」「書く」「話す」全体像を把握する
各試験の位置づけ

設問解釈は仮説思考のトレーニング

2次試験でいうと、まず、設問解釈をして、与件文を読んでいくと思いますが、限られた時間で回答するために、設問や与件文から適切に事例企業の問題・課題を推測する仮説思考が重要ですね。

実務補習においても、企業視察と社長へのヒアリングの機会は初日の数時間しかないため、企業概要や財務諸表の情報が与えられ事前に仮説を立ててヒアリングに挑みます。

2次試験の設問解釈を通して仮説思考が磨かれましたし、もし時間に余裕のある方は仮説思考について、書籍も数多く出ているので訓練されてみてはいかがでしょうか。

 

フレームワークを適切に使い的外れなことを書かない

戦略を助言する問題って、勉強を始めた当初は自由度が高すぎて、何を書いてもよいような気がして苦手でした。ポエム答案に陥ってしまうこともしばしば…

突拍子もないことを書かないコツとして、レイヤーを見極めるだとか、与件文に寄り添うだとか、SWOT分析で抽出した強みと機会を生かして助言することがあると思います。

実践において、アンゾフの成長戦略マトリックスは役に立ちました。

市場(顧客)と製品・サービスの2軸でマトリクスを描き、戦略を決めるというやつですね。

既存事業とシナジーを生まない多角化を突拍子もなく書いてみたり、新市場で商品を売るための営業体制が整っていないのに新市場開拓戦略をすすめたり、新製品開発体制が整っていないのに既存市場に新製品・サービスを売るよう助言するというのは問題がありますね。

裏を返せば、その体制を整える施策を入れ、該当する戦略をとることで、事業DDで抽出した「強み」が生かせ、経営課題が解決できるということを分かりやすく記述すればよいのです。

「社長の想い」を実現するために、いかに「強み」を生かせるか、経営資源の制約からくる「問題点」を解決できる提案なのかを見極め、現実的な助言をしなければなりません。

 

実行支援までしたい

2回の実務補習を終え、実行支援までしたいという思いが強まりました。
元々「ハゲタカ」を読んで再生支援の夢を抱いていたこともあり、残りのポイントは実務補習ではなく知り合いの零細企業で実行支援を伴う実務従事を通して得ようと思います。
 

冒頭で紹介した『事業DDの実務入門』は再生コンサルティング実務の大枠がつかめるという意味で、良書ですし、今後のステップを考えるきっかけになりました。

興味のある方はご一読ください。

 

最後に:2か所で実務補習を受けた感想

最後に、2か所で実務補習を受けた感想で締めたいと思います。

共通点では、同じ試験を乗り越えてきた者同士、1次試験を通過しており最低限の知識を持っている安心感、2次試験を通して培った、強みや問題点の分析、報告書を簡潔にまとめるスキルは担保されていると感じました。

違いは、東京は70班超、広島は4班という数の面に驚きました。経営診断対象となる企業の母数が違うとはいえ、地方の方が差別化できるなと肌で感じました。

設備面では、意外に広島会場はプリンタやWi-fiがあったり、コロナ禍のため報告発表は会場に社長がお越しくださるなど時間に余裕があり、千葉は東京赤坂での開会式から移動に片道3時間かかるなど時間に追われました。

また、指導教官のタイプが多様(ある班は手取り足取り指導型)であり、2回とも自由に任せてくれる教官で個人的には満足しています。

総括すると、再生コンサルティングの深淵を垣間見たことで、まだまだ知識面でもコンサルティングスキルも未熟であることを痛感させられました。これからも精進してまいります。

明日はおはこの番です。「社長の想い」シリーズ、はじめました。

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