社長インタビューで感じる事例問題の世界観・事例Ⅰ【2次初心者向け】

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こんにちは。チャンスを逃すな! 多年度合格ナビゲーターの、おはこです。

私の2次試験勉強の悩みは、「解答が思いつかない」「書いた答案に自信がない」ことでした。

勉強を進め事例問題の世界観に慣れてくると、少しずつ解答が書けるようになっていきました。とくに、社長の想いを意識し、企業が進む方向性が見えてくると、大きくはずすことはないと感じるようになりました。ただ、ここまで到達するのに私は少し時間がかかりました。

この感覚をサクッと体験できる方法はないかと考えたのが、本記事「社長インタビューで感じる事例問題の世界観」です。

事例問題の雰囲気や社長が目指すゴール、事例問題の企業が進む方向性を感覚的につかむことを目的に、事例問題の与件文と設問文、解答例(ふぞろい流ベスト答案)を、社長インタビューの形式で再構成しました。

私と同じように2次試験のつかみどころのなさに悩んでいる方は、本記事を参考に事例問題の世界観を感じてみてください。

本記事の執筆ルール

事例問題の世界観を感じることができるよう、以下の方針で本記事をまとめました。

  • 事例問題の言い回しに慣れるよう、与件文と設問文の表現をほぼそのまま使用しました。
  • 各設問の解答にあたる情報は「ふぞろい流ベスト答案」を基に、できるだけ与件文の表現に置き換えました。

このように、本記事は与件文と設問文の表現をそのまま使っているためとても長いですが、事例問題の世界観を感じるのが目的なので、気負わずに流し読みしてください。過去問3年分ありますが、1年分だけでもよいと思います。

令和元年度事例Ⅰ A社長

葉たばこ生産者を顧客とした葉たばこ乾燥機の製造販売から脱皮し、農作物の生産農家だけでなく食品会社や漢方薬メーカー、乾物が特産物である地域などさまざまな市場を開拓し、成長を続けるA社。しかし、新規事業が軌道にのるまでには、さまざまな苦境を打破する必要があったという。就任以来、経営改革を進めるA社社長に、事業への想いを聞いた。

――現在の事業内容を教えてください。

資本金8,000万円、売上高約11億円の農業用機械や産業機械装置を製造する中小メーカーです。縁戚関係にある8名の役員を擁する、いわゆる同族企業で、本社は私の祖父が創業した当初から地方の農村部にあります。全国に7つの営業所を構え、総勢約80名の社員が事業の拡大に取り組んでいます。【第1・2段落】

――A社長がトップに就任する以前のA社は、どういった取り組みをしてきたのですか。【第1問】

1990年代半ばに私が入社した当時の主力事業は、防除機、草刈り機などの農業用機械の一つである葉たばこ乾燥機の製造販売でした。【第1段落】 

しかし、私が営業の前線で活躍する頃には葉たばこ乾燥機の売上が落ち込んで、経営の根幹が揺らぎ始めていました。2000年を超えるころになって、小さな火種が瞬く間に大きくなり、2000年代半ばには、大きな問題となっていました。トップ就任を目前としていた私にとって、存続問題は現実のものとなっていたのです。【第2段落】 

苦境を打破するために、自らが先頭に立って自社製品のメンテナンスを事業化することに取り組んできましたが、ビジネスとしては成功しませんでした。【第2段落・第1問】

――成功しなかったのはなぜですか。【第1問】

最大の理由は、売上減少と費用増大という二重苦を生み出してしまったからです。

1980年代半ばから健康志向が強まり喫煙者に対して厳しい目が向けられるようになり、徐々にたばこ市場の縮小傾向が進みました。さらに、受動喫煙問題が社会問題化すると、市場の縮小はますます顕著となりました。しかも時を同じくして、葉たばこ生産者の後継者不足や高齢化が急速に進み、葉たばこの耕作面積も減少するようになりました。こうした中で、A社の主力事業である葉たばこ乾燥機の売上が落ち込みました。【第3段落】

また、減価償却も済み、補修用性能部品の保有期間を過ぎている機械の部品であっても顧客から依頼されれば個別に対応していたために、膨大な数の部品が在庫となって費用が増大していました。【第5段落】

――危機感の中で新体制が発足しました。最初にどういったことに取り組んだのでしょうか【第2問】

私を中心とした新経営陣が改革に取り組んだのは、長年にわたって問題視されてきた高コスト体質の見直しでした。私は、高コスト体質の要因は、A社の企業風土を背景とした古い営業体質にあると考えていました。【第2問、第5段落】

――古い営業体質の背景にあるA社の企業風土とは、どのようなものですか。【第2問】

切迫感がなくコスト意識が低く、また硬直化し変革しにくい企業風土です。

かつて、たばこ産業は厳しい規制に守られた参入障壁が高い業界で、関連する産業振興団体から多額の補助金が葉たばこ生産者に支給されていました。彼らを主要顧客としていたA社の売上は右肩上がりだったため、一新人社員に過ぎなかった私も含め、社員に切迫感があったわけではありませんでした。【第3段落】

また、自社の技術を見直し、農作物や加工食品などの乾燥装置など葉たばこ乾燥機に代わる新製品の開発に着手するなど、新しい事業にも取り組みましたが、古き良き時代を知っている古参社員たちがそう簡単に受け入れるはずもありませんでした。【第4段落】

先ほどお話しした膨大な数の部品在庫のほか、営業所の業務が基本的に手書きの帳簿で処理され、全社的な計数管理が行われないなど前近代的な経理体制となっており、コスト意識が低い状況でした。【第5段落】

——なるほど。こうした中で新規事業開発の体制強化を打ち出したそうですね。【第7段落】

はい。自社のコアテクノロジーを「農作物の乾燥技術」と明確に位置づけ、それを社員に共有させることによって、葉たばこ乾燥機製造に代わる新規事業開発の体制強化を打ち出しました。その結果、3年の時を経て、葉たばこ以外のさまざまな農作物を乾燥させる機器の製造と、それを的確に機能させるソフトウェアの開発に成功しました。さらに、動力源である灯油の燃費効率を大幅に改善することにも成功し、新規事業の基盤が徐々に固まってきました。【第7段落】

——新規事業のアイデアを収集する目的でHPを立ち上げ、試験乾燥のサービスを展開しました。【第9段落】

新規事業の拡大は機器の開発・製造だけで成就するわけではなく、新規事業を必要とする市場の開拓はもちろん、販売チャネルの構築も不可欠です。しかしながら、当初、経営コンサルタントの知恵を借りながら独自で切り開くことのできた市場は、従来からターゲットとしてきたいわば既存市場だけでした。キノコや果物などの農作物の乾燥以外に、何を何のために乾燥させるのか、ターゲット市場を絞ることはできませんでした。【第8段落】

そこで、自社の乾燥技術や製品を市場に知らせるために自社ホームページ(HP)を立ち上げ、そこにアクセスしてくれた潜在顧客に乾燥したいと思う「モノ」を送ってもらって、それを乾燥させて返送する「試験乾燥」というサービスを開始したのです。背水の陣で立ち上げたHPへの反応は、1990年代後半のインターネット黎明期では考えられなかったほど多く、依頼件数は初年度だけで100件以上にも上りました。【第9段落】 自社製品やサービスの宣伝効果などHPに期待する目的・機能とは異なる点に焦点を当てたところ、市場開拓に成功したわけです。【第3問】

——成功の背景にはどういった要因があったのですか。【第3問】

要因は、潜在市場の見えない顧客に用途を問うことができたためです。ターゲットを絞り込むことで営業部隊の活躍に繋がり、それまでA社ではアプローチすることのできなかった様々な市場との結びつきができ、販売チャネルを構築できました。また、営業部隊のプレゼンテーションが功を奏し、顧客のニーズを収集することもできました。【第9段落】

——事業領域を明確にした結果、古い営業体質を引きずっていた営業社員が、新規事業の拡大に積極的に取り組むようになったわけですね。その要因として、どのようなことが考えられますか。【第4問】

要因はまず、自社のコアテクノロジーを明確に位置付け、それを社員に共有させることによって、一体感が醸成されたことが考えられます。【第7段落】

また、定年を目前にした高齢者を対象とした人員削減により、危機感が醸成され組織が活性化したほか、コストカットした部分を成果に応じて支払う賞与に回すことで、士気が向上したと思います。【第6段落】

——リストラなどの経営改革に取り組んでこられましたが、A社の組織は、創業当時の機能別組織のままです。組織再編についてはどのように考えていますか。【第11段落】

組織再編についても検討しました。経営コンサルタントにも助言を求めましたが、現段階での組織再編には賛成できない旨を伝えられました。私も熟考の末、今回、組織再編を見送ることにしました。【第11段落、第5問】

——それはなぜですか。【第5問】

最大の理由は、経営改革をさらに進めてコア技術戦略を強化していくためには、機能別組織が適しているからです。同族経営のメリットである意思決定の迅速さを生かし、営業を主に統括するのが弟の副社長、開発と製造を主に統括するのがいとこの専務、そして大所高所からすべての部門に私が目配りをする体制がよいと考えました。【第10段落】

——今後の抱負を教えてください。

これまでの事業や技術力を客観的に見直し、時代にあった企業として再生していくことを目的に、経営改革を進めていきます。

A社長プロフィール

大学卒業後の海外留学中に、二代目社長である父が病気となったため急きょ呼び戻され、1990年代半ばにA社に入社。2000年代後半に父から事業を譲り受け、代表取締役社長に就任した。数歳年下の弟の副社長、ほぼ同年代のいとこの専務と3人で経営を担っている。【第1・2段落】

平成30年度事例Ⅰ A社長

1970年代に大手電子メーカー向けの特注電子機器メーカーとして事業をスタートしたA社。バブル経済の崩壊やリーマン・ショックを乗り越え、時流を先読みした先進的な事業展開を進めてきた。社員の大半が技術者である研究開発型企業として、特徴的な人事制度で成長を実現しているA社社長に、事業への想いを聞いた。

――現在の事業内容を教えてください。

資本金2,500万円、売上約12億円のエレクトロニクス・メーカーです。電子機器開発に特化し、基本的に生産を他社に委託し、販売も信頼できる複数のパートナー企業に委託しています。

この10年間は、売上のおよそ6割を、複写機の再生品や複合機内部の部品、複写機用トナーなどの消耗品が占めています。そして、残りの4割を、弊社が受託し独自で開発している食肉用のトレーサビリティー装置、業務用LED照明、追尾型太陽光発電システムなど、電子機器の部品から完成品に至る多様で幅広い製品が占めています。【第1段落】

――相対的に規模の小さな市場をターゲットにしているようですが、なぜでしょうか。【第1問】

まず、ニッチ市場に経営資源を集中し、センサー技術を強みとした差別化集中戦略をとることで、他社との競合を回避し、競争優位を築くためです。

また、主力取引先への依存を避け、環境変化のリスクを分散するためでもあります。1990年代初頭までは売上の8割近くを主力取引先向け電子機器製造に依存していましたが、バブル経済の崩壊によって急激な事業縮小を迫られると、売上も大幅に落ち込み、経営を足元から揺るがされることになりました。そのため、存続をかけて、ニッチ市場に向けた製品を試行錯誤を重ねながら開発し、事業を継続してきました。【第2・3・4段落】

――A社は創業以来、最終消費者に向けた製品開発にあまり力点を置いてこなかったようですが、なぜでしょうか。【第2問(設問1)】

人員構成上の理由が大きいです。1つには、社員の9割近くが技術者の研究開発型企業であり【第1・7段落】、BtoC製品よりもBtoB製品で強みが発揮できると考えているためです。もう1つは、基本的に生産を他社に委託し、販売も信頼できる複数のパートナー企業に委託しているので【第1段落】、営業人員も少なく、最終消費者のニーズを把握することが困難なためです。

――なるほど。そうした事業展開の中で、これまで幾度かの経営危機に直面したそうですね。【第2問(設問2)】

1970年代後半に国内大手電子メーカー向けの特注電子機器メーカーとして創業し、1980年代は順調に拡大してきましたが【第2段落】、1990年代初頭のバブル経済の崩壊によって急速な事業縮小を迫られました。そのため自社技術を応用した様々な新製品開発にチャレンジせざるを得ない状況に追い込まれました【第3段落】。平成不況が長引く中、存続をかけて、ニッチ市場に向けた製品を試行錯誤を重ねながら開発し、事業を継続してきました。もちろん開発した製品がすべて市場で受け入れられるわけでもなく、継続的に安定した収入源として事業の柱となる製品を生み出すこともかないませんでした。

こうした危機的状況が、私の製品開発に対する考え方を一変させることになり、複写機関連事業に着手したのです。【第4段落・第2問(設問2)】

――複写機関連製品事業は、それ以前にA社が開発してきた製品の事業特性と、どのような違いがあるのですか。【第2問(設問2)】

それ以前に開発してきた電子機器事業は、取引先や顧客などの声を反映させていた受け身の製品開発で、売切り型の事業でした。そのため、製品を販売した時点で取引が完了してしまいました。【第4段落】 

一方、複写機関連製品事業は、製品が複写機用トナーなどの消耗品であるため継続的に販売が可能であり、安定した収入源となりました。【第1・4段落】

――売切り型の事業の限界を打ち破り、複写機関連製品事業は順調に成長してきたわけですね。

大口顧客が事務機器を販売していたフランチャイズ・チェーンだったため、2000年代後半のリーマン・ショックに至る回復基調の景気を追い風にして業績も伸長しました。

ところが、リーマン・ショックによって急速に市場が縮小し始めると、売上も頭打ちになりました。同業者の多くがこの市場から撤退する中で、弊社はシェアこそ拡大させましたが、もはや、その後の売上の拡大を期待することのできる状況ではありませんでした。【第5段落】

――それは大変ですね。どういった対応をしたのですか。【第3問】

組織改編を行いました。従来は、電子回路技術部門、精密機械技術部門、ソフトウェア技術部門と専門知識別に部門化していました。それを、製品開発部門、品質管理部門、生産技術部門に編成替えし、役員に各部門を統括する部門長を兼任させました。【第8段落】

――組織再編にはどのような目的があったのですか。【第3問】

組織再編の目的は、専門知識を有する技術者をほぼ同数配置した混成チームとすることで知識やノウハウを共有し、製品開発領域を拡大することでした。

また、役員に部門長を兼任させることで意思決定の迅速化と権限の明確化を図り、製品開発に専念できるサポート体制を確立する目的もありました。【第8段落】

――なるほど。こうして絶えず新しい技術を取り込みながら製品領域の拡大を志向してきたA社にとって、人材は重要な経営資源といえますね。【第9段落】 社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、どのような取り組みをしていますか。【第4問】

様々な人事制度を用意しています。特徴の1つは、技術者には新卒者を原則採用せず、地元出身のUターン組やIターン組の中途採用者だけに絞っていることです。

賃金は設立当初から基本的に年功給の割合をできるだけ少なくしてきましたが、近年、いっそう成果部分を重視するようになり、年収ベースで二倍近くの差が生じることもあります。【第10段落】

――かなり大きな差がつきますね。

はい。ただ、離職率は地元の同業他社に比べて低いんです。実力主義が会社の文化として根付いていると思っています。

一方で、家族主義的な面もあり、社員持ち株制度や社員全員による海外旅行などの福利厚生施策を充実させていますし、技術者による申請特許に基づく装置が売れると、それを表彰して売上の1%を報奨金として受け取れる制度を整備し運用しています。【第10段落】

――金銭的、物理的なさまざまなインセンティブを提供していますね。それ以外に、どのようなことに取り組んでいますか。【第4問】

中小企業診断士に相談している段階ですが、社員のモラールを向上させ組織活性化を図る施策を検討中です。たとえば、研究開発の権限移譲、研修制度の充実、研究開発力の強化、長期的視野の評価制度策定、社内提案制度の創設、社外との共同プロジェクトの推進などを考えています。

――今後の抱負をお聞かせください。

弊社がこの事業に参入した頃から、情報通信技術の急速な進歩に伴って、事務機器市場が大きく変化しています。私は、後進に事業を委ねる条件が整うまで自らが先頭に立って、新規事業や製品の開発にチャレンジし続けていきます。【第6段落】

A社長プロフィール

大手コンデンサーメーカーの技術者として経験を積んだ後、1970年代後半に農業を主産業とする故郷に戻り、近隣に進出していた国内大手電子メーカー向けの特注電子機器メーカーA社を創業。【第2段落】 電子機器開発に特化し、研究開発中心の企業として同社を成長させてきた。【第1段落】

平成29年度事例Ⅰ A社長

70年近い歴史を誇る老舗菓子メーカーの経営破綻を機に、同社の営業課長の職にあった現社長が立ち上げたA社。県を代表する銘菓として人気を博していた商品を受け継ぎ、再び人気商品にさせた。事業を再建し、全国市場を狙うA社長に、事業への想いを聞いた。

――事業内容を教えてください。

菓子製造業を営んでいます。主力商品は、地元で認知度が高く、贈答品や土産物として利用される高級菓子です。近年は、全国市場に展開することを模索して、創業時から取り扱ってきた3種類の主力商品に加えて、新しい菓子の開発に取り組んでいます。【第1段落】

――主力商品は、70年近い歴史を誇る菓子製造販売業の老舗であり、A社の前身ともいえるX社の主力商品でした。【第3段落】 一度市場から消えたX社の主力商品を、A社が再び人気商品にさせた最大の要因は、どのような点にあるとお考えですか。【第1問

最大の要因は、X社の経営資源を承継できた点だと思います。

私がX社の社員であったこともあり、地元で認知度が高かったX社の主力商品の商標権を取得し、その商品名を冠にした新会社を設立することができました。

また、X社で共に働いていた仲間7名とともに新会社を立ち上げたことでノウハウを承継でき、設立後数年の年月がかかったものの、かつてと同じ品質や食感を出すことができました。【第4・5段落】

――仲間7人とともに2000年に創業以来、毎年数千万円単位の規模で売り上げを伸長させてきました。現在の人員構成を教えてください。

現在の人員構成は創業メンバーの私と専務の2名、そして正規社員18名、パートタイマー中心の非正規社員約70名をあわせた約90名です。【第1段落】

――正規社員数は、事業規模が同じ同業他社と比べて少人数ですね。どのようにして、少人数の正規社員での運営を可能にしているのですか。【第2問】

補助業務に非正規社員を活用し、正規社員はコア業務に注力しています。具体的には、非正規社員は製造ラインの最終工程である箱詰めや包装、倉庫管理などの補助業務を行い、正規社員は製造部門で餡づくり、生地づくり、成型加工や生産管理、営業部門で県内外の取引先との折衝や販売ルートの開拓、総務部門で人事・経理などの業務を行っています。製造部門、営業部門、総務部門の3部門からなる機能別組織で、業務を専門化していることも大きいと思います。【第2段落】

また、創業直後は、餡づくりはもとより、旧式の窯を使用した焼き上げ工程を含めて菓子づくりのほとんどが、人手による作業でした。この製造工程を大幅に変更し、自動化によって効率性を高められるようになりました。【第5段落】

これらの施策により、同業他社と比べて業務効率が高いと考えています。

――2005年には、手狭になった工場を郊外の、主に地元の企業を誘致対象とした工業団地に移転し操業させました。どういったメリットを生み出しましたか。【第3問】

品質面と生産量の面で、全国市場へ展開する体制を整えられたというメリットがありました。

新工場は、食品製造の国際標準規格であるHACCP(ハサップ)に準拠するとともに、銘菓といわれたかつての商品に勝るとも劣らない品質や食感を確保しました。また、製造工程を自動化し効率化を図り、現在の3種類のラインアップの焼菓子を日産50,000個体制にまで整備しました。【第5・6段落】

――全国市場への展開の話が出ました。今後の事業展開をお聞かせください。

弊社のビジョンは、売上高30億円の中堅菓子メーカーになることです。近年では、全国市場に展開することを模索して、創業時から取り扱ってきた3種類の主力商品に加えて、新しい菓子の開発に取り組んでいます。【第1段落】

――それを進めていく上で障害となるリスクの可能性はありますか。【第4問】

A社の主力商品は、前身であるX社が築きあげてきた主力商品に依存しており、A社独自で創りあげたものではありません。全国市場への進出の要件ともいうべき首都圏出店の夢もかなっておりません。ビジョンを達成するためには、全国の市場で戦うことのできる新商品の開発が不可避ですし、それを実現するための人材の確保や育成も不可欠ですが、これらが進むかどうか不確実です。【第7段落】 

また、増産や首都圏での直販開始により過剰投資に陥る可能性もあります。主力商品の認知度は地元では高いですが、全国的知名度はないため、売り上げが伸び悩むことも考えられます。

――A社はどういった段階にあるとお考えですか。

創業から17年の時を経て、共に苦労を乗り越えてきた戦友の多くが定年退職しています。「第三の創業期」に直面しようとしています。【第5問】

――「第三の創業期」というべき段階を目前にして、A社の存続にとって懸念すべき課題はありますか。【第5問】

売上高30億円というビジョン達成のための商品開発力や営業力の強化と、創業メンバー退職に伴う次代への引継ぎという組織的課題があると思います。

そのため、商品開発部署を設置し、社員の育成や採用を図っていきたいと考えています。また、私の後継者となる人材やトップを支える経営幹部の育成、社員のノウハウ継承、組織的な一体感を維持することも留意する必要があります。

A社長プロフィール

1970年代半ばにA社の前身ともいえるX社に入社。長年にわたって営業の最前線でキャリアを積み、X社の経営破綻時は営業課長の職にあった。一連の破綻処理業務で主要取引先を訪れていた折に、販売支援の継続を条件に商品の存続を強く求められたことで一念発起し、A社を設立した。【第4段落】

まとめ

「社長インタビューで感じる事例問題の世界観・事例Ⅰ」のまとめです。

本記事では、設問文と与件文の両方に登場する言葉を手掛かりに設問文と与件文を往復し、インタビュー記事に仕立てました。このように、橋渡しとなる言葉をもとに、設問文と与件文を行ったり来たりしながら企業の理解を深めてゆくのは、初見の事例問題を解く際に役立つ思考だと思います。

「解答が思い浮かばない」という方は、設問文と与件文を橋渡しする言葉をみつける練習をしてみてはいかがでしょうか。

次回は「社長インタビューで感じる事例問題の世界観・事例Ⅱ」をお届けします。

あすはじょーきです。お楽しみに!

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