考えるための「表」と「箇条書き」(独学者のために・その5)

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こんにちは。大人の学び直し実践家のYumaです。今回は、自分の考えをまとめたり他人の考えを理解したりする際のツールとして、「表」と「箇条書き」といった、ある意味日常的な概念を説明します。例によって抽象的というか、生硬な記事となりますが、一発合格道場の記事を含め、読書案内も兼ねていますので、勉強の息抜きがてら読書してみていただければと思います。

「表」について

中小企業診断士の勉強を始めた頃、受験生支援団体なる謎(?)の団体が受験技術を日々ブログに更新しているのを見つけて、かなり不思議に思っていました。受験業界用語に塗れた情報量の高密度なブログ記事の数々に、この人達の素性いったいなんなんだろう(なぜハンドルネーム?)、どういうモチベーションなのか……と疑問に感じていました(縁があってその一員となったわけですが……)。

学びが多い記事群の中で特に印象が強いのは、各学習概念を表形式にまとめた上で、共通の属性の相違を理解・暗記する方法の提唱でした。こうした勉強の仕方がどこまで一般的なのか、自分が大学受験の頃などには思い当たるところはなく、その発祥は別のところにあるかもしれませんが、調べた限り下記の記事群を源流としているようでした。

以前の記事で、暗記ツールで学習概念を暗記しているときに学習概念同士が干渉して理解が阻害されたり混同を引き起こす現象に言及しました。それらは多くの場合、各概念に共通の属性があることに留意していないことからその「値」の印象が薄れてしまうことからもたらされます。こうした現象は、学習する上で必要なプロセスとポジティブに捉え、各概念の相違点として強調して再度理解することで、むしろ以前より適切に認識出来るようになるでしょう。これは、盲点であった共通の属性を後から気づく点において帰納的なアプローチと捉えることができます。一方で「表」をベースとする学習は予め設定した属性から開始する点において演繹的なそれと呼べるでしょう。

診断士試験の勉強を始めた頃、業務では他の人が作成した資料を元に人に説明する機会が多かったのですが、資料の中の情報のまとめ方に違和感を覚えることが多く、それを説明することにストレスを感じていました。並列の情報の関係性が明示されていない、記号が意味の定義なく使われている(その矢印は時間の流れを示しているのか、狭義の因果関係を示しているのか、なんなのか、等)、情報が圧縮されないままだらっと記載されている。こうした問題意識のもと、「表」や「図解」の重要性を認識し出していたのでした。

この文脈において「表」は、共通の属性の値を同定することを通じて各項目の相違を理解し、また値の欠如に気づくことでそれを探したり質問したりするといったアクションを導きます。表形式にまとめることで他人の理解可能性が向上するとともに、それ以前に理解に必要な情報の生成にも貢献するツールであるのです。

試験で回答できる形式で暗記するのか、資料を明瞭に作成するのか、目的に違いはあれど、表形式を通じて各概念を整理する点に共通性があると感じたのでした。特に1次試験の対策に役立つテクニックですが、実務においても利用価値があると思います。

以下、読書案内です。

  • 開米瑞浩さんの一連の著作(たとえば『エンジニアのための図解思考 再入門講座』)は、表や図解の重要性の理解に役立ちます。
  • 野網美帆子さんの「まとめシート」は、表や図解を含めた情報整理の見事さに目がくらみます。

「箇条書きツール」について

「表」と同様に、表現の構造化に有用なのが箇条書きツール(アウトライナー)です。あまり試験には関係ないかもしれませんが(……いや、抽象と具体を意識する点は2次試験回答作成に必要かも)、続けて紹介します。

箇条書きツールとは箇条書きの順序を並べ替えたり階層構造を作成したりする機能を持つもので、たとえば私はプライベートではWorkflowy、業務ではFreemindを使っていました。

文章を書いたり資料を作成する際に、私はよく箇条書きツールを使用します。最初から文章の形式で書くことは大変だからです。

図:Workflowyのスクリーンショット

文章を書くときよくある問題として、書くべき内容が整理されていない点、そもそも書きだす時点で書く内容が決まっていない点などが挙げられます。書き出せばなんとかなると書き始めてしまうこともありますが、文章を書きながら、内容を考えたり、配列を工夫したり、追加情報を調べたりすることは、複数のタスクを同時に行うことであり、負荷が高い作業です。

箇条書きは、特に箇条書きツールを使用すると、それぞれのアイテム(箇条書きの一つ一つ)を容易に並べ替えることができ、階層構造を作り出すことができます。これを利用すると、①最初に現時点で書きたい内容を書き、②次にそれらの順序を並べ替えてまとまりを作ることができます。さらに、アイテムをまとめると、③それらを抽象化した概念を導き出し、その主張の下部に既存のアイテムを再配置することができます。こうして、各アイテムごとに抽象化し、抽象化した主張を因果関係などで配置し、また抽象化した主張をサポートする具体例を補充するなど、抽象化と具体化を交互に行うことで、書き出す前には自分でも知らなかった内容を含め、言いたい内容が自然と表現され、それらが整然と配置されることになります。

箇条書きツールを使用することで、文章のロジックを構築し、その構造の肉付けのために必要な内容を探したり調べたり出来る。共通の属性を導入することで値の相違を意識する「表」のメリットと同じ構造をしていることに気づきますが、これこそが「考える」ということではないかと思うのです。表や箇条書きを思考のためのサポートツールと思う理由です。

以下、読書案内です:

  • 細谷功『具体と抽象』は、抽象化と具体化にまつわる、ビジネス哲学とでも呼べるような思索。タニッチも別の著作を紹介していました。
  • 高度試験午後Ⅱ論述』。情報処理技術試験のテキストですが、どの程度具体化した回答にすべきかを、抽象と具体のピラミッドストラクチャーを用いた図で説明した箇所は必見。
  • Tak.さんの一連の著作(たとえば『アウトライン・プロセッシング入門』)は、箇条書きについての実践に基づく知見に溢れています。
  • ワインバーグ『ワインバーグの文章読本』。最初のメッセージ「興味のないことについて書こうと思うな」の鮮烈さが強い印象を残します。提唱される「自然石構築法」は箇条書きとの相性が良さそうです。

あしたはこーしの登場です!

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