地方在住受験生の味方、RYO@九州福岡です。自己紹介はこちら。
今回は、中小企業白書の事例に注目してみます。
本日も、よろしくお願いします。
目次
いきなりですが、下記を読んでみてください。
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A社(従業員24名、資本金2,500万円)は、地方都市で地域密着型のスーパーを経営する企業である。
同社が所在する地方都市は、この20年間で人口がおよそ1割減少した。
さらに同地域には、1990年代後半から大手ディスカウントストアや小売チェーン、コンビニなどの進出が相次ぎ、地域の小売店や地場スーパーなどは次々に淘汰されていった。
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2次筆記試験の過去問か、はたまた、どこかの予備校の演習問題か、と思わせるような書き出しですね。
実は、『2019年版 中小企業白書』(以下、白書)に掲載されている「事例」の1つなのです。
(出典:2019年版 中小企業白書 P278 一部改変)
また、白書の冒頭には、下記のような記載があります。
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令和初の発刊となる本白書では、(中略)、事業承継や創業による経営者の円滑な世代交代や、中小企業・小規模事業者の自己変革を後押しする分析を行うとともに、具体的な事例を豊富に紹介しています。
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(出典:2019年版 中小企業白書 冒頭 「中小企業白書」の発刊に寄せて)
白書では様々なデータの分析結果が解説されています。
そこから導き出された、「中小企業のあるべき姿」を具現化したものが、白書の事例だと言えると思います。
2次筆記試験で言えば、与件文に書かれている企業が目指すべき姿、とも言えるのではないでしょうか。
もちろん、2次筆記試験では、与件文に沿うことが必須です。
「白書の事例に書いてあったから」という理由で、与件文を無視した答案を書くことは望ましくありません。
しかし、白書の事例を読むことで、与件文を読む練習や、分析の練習ができます。
ゴールデンウィーク前で、まだ2次筆記試験の問題を解く余裕はない。
けれども、何も対策をしないのは不安、という方もいらっしゃるでしょう。
そんな時は、1次試験の勉強の合間に、白書の事例を読んでみるのも良いかもしれません。
さきほど紹介した白書の事例について、全文を紹介します。
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事例3-1-1 株式会社スーパーまるまつ
「人口減少・競合参入という経営環境で、利便性の向上や固定客の獲得により地域内シェア首位を維持する企業」
株式会社スーパーまるまつ(従業員24名、資本金2,500万円)は、福岡県柳川市で地域密着型のスーパーを経営する企業である。
同社が所在する福岡県柳川市は、この20年間で人口がおよそ1割減少した。
さらに同地域には、1990年代後半から大手ディスカウントストアや小売チェーン、コンビニなどの進出が相次ぎ、地域の小売店や地場スーパーなどは次々に淘汰されていった。このような人口減少・競合の増加という非常に厳しい経営環境にもかかわらず、同社は徹底した効率化と既存顧客の単価向上・固定客化によって同地域におけるシェア1位を維持し、創業以来無借金経営を継続している。
同社は、かねてより人手不足に悩まされていたこともあり、徹底した業務効率化を行ってきた。40年以上前からPOSシステムを導入し、販売情報を一元管理するとともに、POSシステムで把握した販売データと天気予報などの情報から翌日の販売数を予測し、在庫リスクの低減などを図ってきた。
また同社は、実際に販売された分だけ仕入れに計上される「消化仕入れ」を行っている。消化仕入れでは、仕入れ時に納品数をチェックする必要が無く、検品業務を省くことができ、大きな業務効率化効果がある。同社がPOSシステムを導入し、販売個数を正確に管理しているため、この消化仕入れが可能となる。現在約120社ある取引先のうち、約35社から消化仕入れを行っている。
さらに、同社は20年以上前からチラシの配布を止め、固定客の取込を強化するために、ポイントカードを導入した。ポイントカードの会員に対する特別価格の設定を行うなどの取組により優良顧客の囲い込みを実現した。
近年では、同社の主要顧客である高齢者に対して更なる利便性を提供するために送迎サービスも開始した。同地域では公共交通機関が乏しく、日常の移動は自家用車が主であるが、高齢者にとっては負担が少なくない。このサービスは必ずしも当社の採算性を高めるものではないが、送迎サービスの車内で交わされるコミュニケーションが、当社と顧客との関係をより強固なものにしている。
松岡尚志社長は「今後、地域の人口が減少し高齢化が進む中でも、ICTなどのツールを有効に活用することで人手不足を克服していくとともに、高齢者に対するサービスを充実させ、顧客との関係をさらに強化していきたい」と語る。
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(出典:2019年版中小企業白書P278)
白書の事例を読んでみて、いかがでしたか。
2次筆記試験の与件文よりは短いので、読むこと自体は、大きな負担にはならないと思います。
この事例を読んで、どのような勉強ができるでしょうか。
下記、思いつくままに挙げてみます。
●春秋要約の要領で、事例で紹介されている内容を、「〇〇な企業」と要約してみる。
ちなみに、白書では、企業名の下にサブタイトルとして、「〇〇な企業」と記載されており、今回の事例では、下記の通りです。
「人口減少・競合参入という経営環境で、利便性の向上や固定客の獲得により地域内シェア首位を維持する企業」
(春秋要約については、はるかの記事が参考になります。)
●SWOT分析をしてみる。
→
「この20年間で人口がおよそ1割減少した。」ということは、Tの脅威にあたるのかな、などと考えてみる。
●SWOT分析の結果と、事例の中で紹介されている企業の取組を結び付けてみる。
→
「この20年間で人口がおよそ1割減少した。」ということは、新規顧客の数を伸ばし続けることが難しい?
であれば、固定客を囲い込む必要があるのでは?
この企業ではどう取り組んだのか?
「固定客の取込を強化するために、ポイントカードを導入した。ポイントカードの会員に対する特別価格の設定を行うなどの取組により優良顧客の囲い込みを実現した。」
●社長の思いを見つけて、それに沿うような施策を考える。
→
「今後、地域の人口が減少し高齢化が進む中でも、ICTなどのツールを有効に活用することで人手不足を克服していくとともに、高齢者に対するサービスを充実させ、顧客との関係をさらに強化していきたい」
高齢者に対するサービスを充実させるためには?
例えば、見守りサービスを行う企業や、介護士などと連携できないか?
●事例で書かれている用語のうち、記憶が曖昧な用語を復習する。
→
「POSシステム」「消化仕入れ」「ICT」など
●事例で書かれている用語から、関連知識を復習する。
→
「地域密着型のスーパー」
スーパーだから、食料品とかを売っているのかな。
そういえば、売り物によって、最寄品、買回品、専門品、非探索品、といった分け方があったな。
それぞれの特徴って何だったっけ?
「ディスカウントストア」
いつでも安くて便利。そういえば、いつでも安く、といえば、EDLPっていうのがあったな。
EDLPを採用するには、どのような条件が必要だったかな。
EDLP以外にも、価格戦略はあったと思うけれど、何だったかな。
「在庫リスクの低減」
在庫って、そもそも何故リスクになるんだっけ?
在庫を減らす方策ってどのようなものがあったっけ?
「優良顧客の囲い込み」
ポイントカードって、FSPの一種だった気がするけれど、そもそもFSPって何だったかな。
等々。
上記の勉強法は、ほんの一例ですので、皆様で色々と勉強法を編み出していただければと思います。
ただし、1人でやるよりも、みんなでやって、意見を交換し合う方が、効果は高いと思います。
同じ事例を読んでも、着眼点は人それぞれ。
自分自身では気付かなかったことや、自分が誤って理解していたことなどを、仲間に教えてもらえます。
そこで、仲間同士で議論し合う癖をつけてしまいしょう。
そうすれば、本格的に2次筆記試験の過去問を使った勉強会を行うときに、スムーズに始めることができるかもしれません。
本日も、お読みいただき、ありがとうございました。
明日は、作り出す資料の分かりやすさでは右に出る者はいない、ヌワンコがお送りします。
よろしくお願いいたします。