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こんにちは。大人の学び直し実践家のYumaです。本記事は、前回に引き続きモチベーションの維持・向上を考慮した勉強方法について、特に短期的な観点から検討します。第二言語習得理論である「インプット仮説」と、学習とは直接関係のないゲームをプレイした体験を援用しながら、新規概念の適切な順序の学習を行うことがストレスのない受験ライフを過ごすことにつながる旨を提唱したいと思います。※なお、例によって以下文章が常体となります。
以前、早急に英語を習得しないといけない環境にあった私は、英語習得の努力、中でも基礎となるボキャブラリービルディングを行うとともに、英語学習方法自体の調査を行っていた。特にそのときには、以下のような疑問を抱いており、そうした課題を解決するような考え方を求めていたといえる。疑問とは、①なぜある人は英単語やフレーズを記憶するスピードが別の人より早いのか(あるいは遅いのか)、そして②なぜある英単語やフレーズはすぐに記憶・定着できる一方で、暗記できず・また忘却しやすいものがあるのか、という点である。習得速度が早いのは頭が良いからだ、という説明がまずありうるが、そしてそれはそうである可能性も否定できないところであるが、現状を打破できない考え方であって首肯しがたく、また②の疑問を説明できないと思われた。
こうした中、まず、第二言語習得理論のなかでクレッシェンが提唱した「インプット仮説」が上記の疑問を解消するように思われた。さらに、当時遊んでいたゲームである「塊魂」をプレイ中に、その世界観がボキャビルのイメージを説明できる適切なメタファーとなるように思われた。まずは「2」「3」においてそれらを説明するとともに、それらから導出した「理解可能なインプット原理」「塊魂原理」による学習方法を紹介したい。これらを参照することで学習の際のストレスが軽減され、モチベーションの維持に役立つアイデアとなると思われるからだ。
インプット仮説は第二言語習得理論において1970年代にクレッシェンによって提唱された仮説である。複数の仮説を包含するが、そのうちの一つが狭義のインプット仮説である。Wikipediaより引用するのを許していただければ、以下の内容となる:
言語の学習者は彼らの現在の水準より、僅かに高い水準の言語の入力を理解した時に進歩するという主張。クラッシェンは、この水準を「i+1」と呼び、「i」が現在の言語習得の水準で、「+1」が次の水準との差分とした。
「i」を今までに習得した言語能力と言語外知識とすると、当仮説は、我々は「i+1」を含む理解可能な入力を理解することによって、「i」から「i+1」と移行することができる。言語外知識とは、我々の取り巻く世界と状況に関する知識、すなわち、コンテクストを意味する。「+1」とは、我々が習得の準備が出来ている新しい知識、言語構造である。
この仮説は、私にとっての2つの疑問を解消するものと思われた。つまり①については、「i」の多寡や各概念のネットワークの稠密度が異なるが故に学習者によって習得速度が異なるといえる。②については、当該学習概念が「理解可能な入力」であれば「i」に取り込まれ「i+1」に移行するが、そうでなければ習得されない、といえる。
この考え方を、「理解可能な入力原理」、と本稿の中で呼ぶこととする。
インプット仮説に納得し、英語学習に限らずなにか新規の概念を習得する際のモデルとして参照するようになっていた頃、一方でたまたま「塊魂」というゲームをプレイすることが多かった。塊魂とは、これもWikipediaからの引用となるが、以下のような内容である:
大コスモの王様(とても大きい)が酔った勢いで星空を破壊してしまったため、尻拭いとして王子(5 cm)がモノだらけの地球で塊を転がして大きくし、それを夜空に浮かべ星空を再生させるというストーリー。
アナログスティック2本を使って塊(カタマリ)を動かしモノを巻き込み大きくしていく。最初は小さいモノしか巻き込めないが、最終的には人・車・ビル・飛行機・自然現象まで巻き込めるようになる。ゲームスタート直後は障害物になっているものでも、塊が大きくなると巻き込むことができるようになる。
Wikipedia:塊魂
引用部最後の文章にあるように、このゲームの面白さとして、今まで障害物であり衝突すると時間を消費するため衝突を避けてきたモノが、自身が一定以上の大きさとなると巻き込めるようになり、従来巻き込めたモノより大きいがために塊の大きさを雪だるま式に増加させるためむしろ衝突させたくなる、という点にある。そしてこの点は、上記インプット仮説でいうところの「+1:理解可能な入力」と「i+1:理解可能な入力を取り込んだ新しい言語知識・能力」に当てはまるように感じたのである。つまり、理解が困難な語彙を暗記しようとしてもできない、もしくは忘却してしまうが、理解が容易い語彙をいくつも獲得する中で自身の言語環境が十分な大きさに成長すると、理解が困難な語彙を取り込めるし、それが別の理解困難語彙の獲得にも貢献される、と表現できよう。
「塊魂原理」が重要だと思われるのが、理解困難であるとか、嫌いであるとか、一度形成された心理的印象が変更可能であると捉えられる点である。一般に、一度形成された印象はそのまま維持される傾向にあるが、「i」、つまり自身の能力や体験の変化により理解可能になったり親近感を得られたりするなど変化するものである。
この考え方を、「塊魂原理」、と本稿の中で呼ぶこととする。
以上を図に表すと以下のようになる。
上記原理を英語学習に適用すると、以下のような方針が立案できる。
まず、「理解可能な入力原理」からは、理解しやすい語彙から学習・暗記すべきであり、一方で、理解困難な語彙は暗記対象リストから外したほうがよい、といえる。ただしこれは習熟度別単語帳を下から順番に暗記すべきであることは意味しない。何が理解可能かは学習者によって異なるからである。たとえば自身の業務の中で使用されている専門的な業務概念は、英語由来のものも多いと思われるため、英語外の自身の体験がレベルの高い英単語の習得に貢献することがある。したがって、習得度別単語帳を順番に100パーセント暗記する要領ではなく、暗記ができそうな語彙群はレベルの高低に関係なく習得し、理解不能な語彙群はいったん諦める、といった方向性が望ましい。
次に、「塊魂原理」からは、上記でいったん諦めた語彙群は、定期的に再度習得をチャレンジしたほうがよい、といえる。この間の英語学習体験、また英語以外も含んだ自身の体験の蓄積や環境変化によって、理解可能な入力に変化している可能性があるためである。たとえば英単語はその語源によって理解する方法があるが、共通の語源を持つ一方の単語をすでに獲得していればもう一方はそれに関連付ける形で獲得が容易となる。
この2原理を用いて英語学習を継続したおかげで英語が堪能になった、とまでは言えないものの、理解困難の単語を頭になすりつけるストレスの軽減が図られ、それをもって継続的な英語学習が実現できた、くらいには言える状態となった。
(なお、上記以外にも、TOEICに比較した英検の優位性、「i」拡充のためのアウトプットの重要性、などに言及したいところであるが、すでに何を主題としたブログかよくわからなくなりかけているところであり、省略する)
最後に、以下、やや取ってつけた感はあるものの、中小企業診断士試験、特に一次試験への適用を検討する。
「理解可能な入力原理」から、理解困難な科目は40点を目指し、理解可能な科目は80点を目指す、というように科目における目標にメリハリを付ける。また、各科目はさらに複数分野から構成されるが、分野によっても嫌悪や得意不得意は分かれるため、分野を単位として時間を投入する優先順位をつける。例えば私個人で言えば、「ミクロ経済学」「マーケティング」「店舗・販売管理」「知的財産権」は好きである一方で「マクロ経済学」「組織論」「生産管理」「会社法」「中小企業経営」は好きになれなかったが、前者の理解に学習リソースを優先的に投入し、後者は劣後させる方針により、合格点を獲得できた。
好きな(理解可能な)分野の順に勉強を行うことで、快適な受験生活を過ごされたい。
なお、上記方法に従うと、試験当日に合格最低点に到達しない可能性がある、という反論があるだろう。「塊魂原理」により、学習項目間の類似性などネットワークが形成されるにつけ次第に不得意な分野からも理解可能な概念が増える、と主張できなくもないが、楽観的にすぎるシナリオかもしれない。こうした異論に対しては、個人的には、中小企業診断士になる十分な経験を持っていないのが原因であるため、今年度の合格は目指さないのがよいのではないか、と思う。合格支援を目指す本ブログの趣旨から外れる気がしないでもないが、人生100年時代における生涯学習の重要性を主張する私としては、もっと適した資格はあるだろうし時機が到来するのを待つのも一つの手ではないか、とも考える。とはいえどうしても……という方には、また別のアドバイスもあるのだが、私の力も尽きていることもあり、これもまた機会を改めたい。
本記事を読んで以下のような項目を検討してもよいかもしれない:
明日はこーしの登場です。幼少期が終わり青年となるこーしのビルドゥングスロマンに目が離せません!