なぜ連結財務諸表を作るのか

同友館
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いきなり暑くなってきましたが、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
熱中症に留意し、こまめに水分補給をしながら勉強してくださいね。
本日はマリがお届けします。

平成29年度と令和元年度の事例Ⅳでは、連結財務諸表が与えられました。
近年は日本でもM&Aが活発に行われます。
後継者問題を抱える中小企業を、他の中小企業が譲り受けて子会化することも珍しくありません。
診断士を目指すなら、変化するビジネススタイルや制度に対応しましょう、という出題者からのメッセージかもしれませんね。

連結については今のところ、難易度の高い処理まで求められることはないかと思います。しかし、過去に出題されたような簡単な処理や個別財務諸表との違い、連結財務諸表の作成目的など、基本的な内容は理解しておいたほうがよさそうです。

本日は、連結財務諸表についてお話しします。少しでもご参考となれば幸いです。


子会社の判定基準と連結の範囲

(詳細を知りたい方は、「連結財務諸表に関する会計基準」をご確認ください)

子会社の判定基準は「支配力基準」です。
その企業の意思決定機関を「支配」しているかどうかがポイントとなります。
議決権の所有割合だけではなく、実態を踏まえた判断が必要です(簡単にいうと、実質牛耳っているかどうか)。

連結の範囲は以下のとおりです。

<原則>
すべての子会社を連結の範囲に含める。

<例外>(連結の範囲に含めない)
支配が一時的であると認められる企業
連結することにより利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれのある企業

<容認>(連結の範囲に含めなくてもOK)
重要性の乏しい小規模子会社


連結財務諸表の作成目的

個別財務諸表を作成しているのに、なぜそれだけではいけないのでしょうか。
わざわざ手間をかけて連結財務諸表を作成する目的を確認しましょう。

①利害関係者に対し、個別財務諸表では明らかにできない企業集団としての会計情報を提供
②企業経理の健全化、つまりは粉飾決算等の防止
③親会社の経営者に、企業集団の経営に関する意思決定の指針となる会計情報を提供
④連結納税制度における企業課税の実質的合理化

利害関係者にとって、企業集団としての会計情報は重要です。

たとえば、親会社の利益が100だったとしても、子会社が150の損失を出していては、企業集団として利益を出せていないことになります。
また、親会社の売上が100だったとしても、その内50が子会社に対する売上だったら?なおかつ、その50がすべて子会社の在庫になっていたらどうでしょう。
個別財務諸表だけでは、企業の実質的な売上規模を正確に把握できませんね。

悪いことをしようと思えば、とりあえず子会社に損失を被せて経営成績をよく見せたり、親会社の収益計上のための不要な取引を計上したり、色々とごまかせてしまいます。これでは、利害関係者の判断を誤らせることになります。

連結財務諸表では、相互間取引の相殺消去や未実現損益の消去を行います。企業集団としての経営の実態を正確に把握しやすくなるのです。

ちなみに個別財務諸表では、子会社株式は時価評価せず取得価額で計上されます。時価が著しく下落し回復可能性がない場合を除き、ずっと取得原価のままです。ついでに覚えておきましょう。

連結というワードが出ただけでパニックになる方もいるようですが、診断士試験で出題される内容は、知ってさえいればそこまで難しいものではありません。めちゃくちゃ難しい処理が出た場合は、一部の人を除き、みんなが解けないはずです。
ひとまず過去問のレベルを解けるようになっておくとよいのではないでしょうか。

明日は、若手合格ナビゲーターのだいちがお届けします。お楽しみに~。

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