ふぞろいOBの村上です。
月刊企業診断では、「ふぞろいな合格への道」ということで
毎号12ページにわたって、1次と2次の原稿をだしています。
今回は1月号に掲載された原稿の一部のパートをドーンと掲載します。
●時事ニュースで1次試験のイメージをつかむ!
【科目】企業経営理論
【論点】
リバース・イノベーション
企業が新興国で製品や技術を開発して、先進国にもその製品と技術を展開すること
●ニュース見出し: 2012年10月3日
『インド発のリバース・イノベーションで ひげ剃り
市場のリーダーの座を守ったP&G』
(出典:ダイヤモンドオンライン)
●ニュース要約:
P&Gのひげ剃り用のカミソリのブランドである「ジレット」のアメリカでの市場シェアは80%以上とも言われ、二番手のシックを大きく引き離している。ベストセラーの「フュージョン プログライド」は、最新かつ最高のカートリッジ構造を持つカミソリで、替え刃の価格は約4ドル。
ただし、この手の最高級品がほとんど売れない新興国市場では、事情が異なる。それでは、カミソリの消費量が世界最大規模のインドで、ジレットが50%以上のシェアを獲得しているのはなぜだろうか。それも、「フュージョン プログライド」の3%に満たない価格の製品で獲得しているのである。
【ニュースから1次試験をイメージする】
「最高を男の手に!剃刀シェービングはジレット」。
女性の方々にはわからないかもしれないですが、男性はひげそりの使い心地には敏感です。「どれで、剃っても同じじゃないの!」と奥様から言われながら、ついつい高級剃刀を購入してしまう方は多いのではないでしょうか?
アメリカでも、日本でも、こういった男性のひげ剃り文化はあると思いますが、さすがに平均所得の低い新興国に、最高級の剃刀製品を輸出しても、売れるわけがありません。そこで多くの先進国は、枯れた過去の技術、製品を輸出することになります。
ジレットの場合も同じで、切り傷や出血が絶えない百年前の技術の二枚刃カミソリをインドに輸出していました。もちろん、インド国内でも不評で大きなシェアをとることができませんでした。
しかし日本もアメリカでも自国の高度成長が望めなくなった今、新興国進出の目的は低価格品を製造する工場の確保ではなく、現地のシェアをとることに変わりつつあります。
そこでP&Gは、ジレットにおけるイノベーションのアプローチを完全に逆転させたのです。インドにチームを送り、現地での剃刀の使い方を調べ、一枚刀で安価で、かつ、それなりに使いやすい製品を開発しました。そして同じ手法を使って、中国やアフリカまで製品展開を図ったのです。
現地の顧客満足度は向上し、ジレットはシェアを高めました。しかし、ここまでではリバース・イノベーションではありません。さらに、低価格の新型製品がやがて、日米にも逆流して、低価格市場を席巻するようになって、はじめてリバース・イノベーションを成し遂げたと言えるでしょう。
P&Gは現在保有する高収益モデルを捨て、自ら自社の首を絞めた可能性があります。しかし、自らが絞めなければやがて新興国企業に絞められてしまったでしょう。
自国で積み上げてきた技術、経験を一旦、脇に置いて、新興国で一から考え直してみる!こういった決断が今、日本企業にも求められているのでしょうね。
【過去問で論点を確認しよう】
●過去問:平成24年度第10問 (設問2改)
アジアの途上国は次々に経済的に自立し、新興工業国としてめざましい発展を続けている国も少なくない。このようなアジアの経済成長に対応すべく、エレクトロニクス産業や自動車産業を中心に現地への進出が相次いでいる。しかし、わが国のエレクトロニクス産業は劣勢に立たされることが多い。リバース・イノベーションに関する記述として最も適切なものはどれか。
正解選択肢(イ) 先進国で開発された製品を、途上国の開発拠点で現地向けに開発し直し、現地の生産販売を図りつつ、それを先進国モデルへと進化させるイノベーション戦略である。
この問題は、まさにリバース・イノベーションの定義が問われていました。
一旦、定義が問われると、次に出題されるときは、応用問題が出題されるケースが多いので要注意です。