こんにちは!事例Ⅳ大好き!イノシです。
前回の私の記事「イケカコの勉強の仕方 ステップ1」で、『意思決定会計講義ノート』通称イケカコについてLecture 1~3の解説をしましたが、本日はステップ2ということでLecture 4~7の解説をしていきます。
本日の記事では、
・事例Ⅰ~Ⅲは答えが無いし、2次試験までに合格レベルまで持っていく自信がないので、事例Ⅳで得点を稼ぎたい
・財務・会計に自信あるし、事例Ⅳで高得点を狙いたい
という方に向けて、私のイケカコ地獄の3周ロードの経験を踏まえて、イケカコの中身と難易度の紹介、取り組み方について解説していきたいと思います。
『意思決定会計講義ノート』通称イケカコの理解をさらに深めることで、事例Ⅳを安定的な得点源にし、中小企業診断士二次試験の合格を確実なものにしていきましょう。
一方で次のような方はイケカコでの勉強は避けた方が良いので、無理にイケカコを回さずに別の教材で勉強をすることをおススメします。
イケカコをおススメしない方
・ストレート生だけど、何となくイケカコが良いと聞いたので、イケカコをやるつもり
⇒何となくで取り掛かるのはやめましょう。
ストレート生は特に時間が無いので、戦略も何もないのにイケカコに取り組むのは自殺行為です。
ちなみに私は、事例Ⅰ~Ⅲ:50点代前半、事例Ⅳ:80点を目指す戦略を取っていました。
・財務・会計が苦手
⇒財務・会計が苦手な方は、イケカコの難解な文章を読み解くことが出来ない可能性が高いです。
そのような方は、やさしい教材から取り掛かった方が二次試験合格の確率を上げられると思います。
今すぐイケカコを閉じましょう。
なお過去記事はコチラですので、まだ読んでいない方はどうぞ
イケカコの勉強の仕方 ステップ1
では次からは各Lectureの解説に移っていきたいと思います。
最初にことわっておきますが、今回のブログは割とマニアックに作りこんでしまったため、めっちゃ長いです。
時間が無い方(もったいない方)は、各Lectureの概要と最後のまとめだけでも読んでくれればと思うのでよろしくお願いします。(弱気)
目次
■項目と難易度
■概要
Lecture2~3ではCVP分析でしたが、Lecture4 ではCVP以外の評価の仕方を学ぶことができます。
CVP分析は、
売上 ー 費用 = 利益
の軸でしか分析していませんでしたが、Lecture4では、
・事業部・事業部長の業績評価の仕方
・投資金額に対して、どの程度の利益貢献ができているのか?
・事業部間の取引価格の設定方法
など、より高度な内容を学んでいくことになります。
なお、Lecture4 に関わる問題は、令和元年 第2問、令和2年 第4問で出題されており、令和3年でも出題される可能性があるので、よく勉強しておいた方が良い範囲だと思います。
令和元年 第2問:
全社的な損益分岐点売上高の結果を利益計画の資料として使う問題点の指摘
令和2年 第4問:
ROIの計算問題 ← モロ Lecture4 の内容
取締役に対する業績評価方法の問題点と改善案 ← モロ Lecture4 の内容
Lecture4 では、事例Ⅳであまり目にしない計算式も紹介されます。
ざっくりまとめるとこんな感じです。
①投資利益率(ROI) = 利益/投資額 = 売上高利益率 × 資本回転率
⇒令和2年 第4問で出題される。
② 残余利益(RI) = 管理可能利益 – 資本コスト(※)
⇒具体的に「残余利益を求めなさい」という問題が出ない限り使わない。
過去にも出題されたことはない。
③経済的付加価値(EVA) = 税引後営業利益 – {加重平均資本コスト(※) ×(総資本 – 流動負債)}
⇒具体的に「残余利益を求めなさい」という問題が出ない限り使わない。
過去にも出題されたことはない。
④加重平均資本コスト = 自己資本コスト (☆) × 自己資本構成比 +負債コスト × 負債構成比
⇒1次試験からの頻出であるWACCのこと。
⑤市場付加価値(MVA) = 市場価値 – 投下資本
⇒イケカコの例題/問題にすら出題されない。
(※)資本コストの単位は「円」、加重平均資本コストの単位は「%」ですが、テキスト内に注釈等が無いため混乱します。このあたりが「イケカコはわかりづらい」と言われる由縁かと思います。
(☆)自己資本コスト = 期待利益率、負債コスト = 利子率×(1-税率)
⇒1次試験合格していれば当然知っている内容ではありますが、忘れがちな所なので改めて説明を記載しておきます。
■例題1~2(イケカコやってない方は読み飛ばしてOK)
通常の計算問題なのでそこまで難しくないでしょう。
残余利益(RI)・経済的付加価値(EVA)を求めるところは、テキストを見ながら、解いても良いと思います。
例題2の問4は、ROI視点では投資案「棄却」、残余利益視点では利益出るから投資案「採用」といった具合に評価視点を変えれば結果が変わることを示す問題です。
ここで難しいのは、残余利益算出のための資本コスト=10%を算出する事です。
根拠は、問2で「投資額に対して要求される利益率は10%」と触れていることなのですが、問3でWACCを求めるのにいろんな数字(資本コスト:15%、負債コスト:10%、WACC:9.5%)が出てきていることから混乱する人が多いと思います。
問2は「投資額に要求される利益率」、問3は「会社の資本コスト」であり、問4は「投資額」に関する問題なので、問2の方の数字が採用されることになります。
でも、こういう「不親切なところを読み取るための力」が育まれるといった側面もあるので、一概に悪いとも言えないのかもしれません…。実際それで私は鍛えられましたし。
■例題3
こちらも通常通り計算すれば問題なく解ける問題だと思います。
完成品として販売する場合は、どのような原価基準であっても「全て同じ限界利益になる」ことを示す問題になっています。
■問題1
事業部業績の穴埋め問題であり難しいところはありません。
■問題2
この章で一番計算がややこしいところです。
中間製品の市価がない(市場で販売できない)点は優しいのですが、完成品の総販売量が増えると販売価格が下落する条件を与えられています。
与えられた関数に条件の数字を代入していくと、利益を求めるための2次関数ができるので、グラフにしてビジュアルで解くのがベストです。
ちなみに、問1も問2も、下記のようなグラフになります。
しょぼいグラフだ
最大値=放物線の頂点 ですので、この2次関数を微分して得られた式が0となるXを求めれば完了でです。
まさか、ここで微分を使うことになるとは思いませんでしたが笑
■問題3
問題2で、やたら計算させられて大変な思いをするので、戦々恐々で臨みますが問題自体はそんなに難しくありません。
経済的付加価値(EVA)の計算式に当てはめながら解いていくだけですので、比較的簡単な問題といえます。
経済的付加価値(EVA)は、出題される可能性が低いので、慣れないうちはテキスト箇所の公式を見ながら解いても良いと思います。
■項目と難易度
■概要
運営管理で出てくる在庫管理で学んだ内容と全く同じです。
単純な経済発注量に関する出題の可能性は低いと思いますが、数量割引との組み合わせで、CVP分析の問題として出題される可能性は捨てきれません。
70点目標くらいであればバッサリ切っていいと思いますが、80点を目標とするならば計算問題を落とすことはできないのでやった方が良いと思います。
■例題・問題
例題1は運営管理、例題2・問題1は運営管理+α程度。
⇒計算練習として割り切ってやる
例題3・問題2は数量割引が絡む計算問題
⇒事例Ⅳで出題する可能性が極小ながらあるかもしれないと思ってやる
■項目と難易度
■概要
全Lectureの中で、『Lecture 9 戦略的意思決定会計(2)』に次いで2番目に時間のかかる章でした。
問題はそこまで難しくなくても、計算ボリュームが多い問題ばかりなので骨が折れます。
時間はかかりますがやることはそこまで難しくないですので、計算力アップを目的として頑張って取り組みましょう。
業務的意思決定の解答の流れは、以下の通りです。
①損益計算書の空欄となっている部分がある場合は、問題文の条件を参考に空欄を埋める
②代替案間の「未来」の「差額収益・差額原価」を見極める
③「未来」の「差額収益・差額原価」を計算し、有利な案を求める
業務的意思決定は意思決定なので、時制は未来になります。
過去のことは、今の意思決定で影響を与えられないので、対象外となります。
また未来のことでも、代替案間で差が生じない原価は、やはり意思決定で影響を与えることが出来ません。
このような原価のことを埋没原価といい、埋没原価は業務的意思決定においては完全に無視されます。
イメージ図はこんな感じです。意外と過去に捕らわれて過去の数値を使ってしまうことがあるので注意しましょう。
■例題1~3
業務的意思決定会計の初級問題であり難しくないです。
自社で部品を製造した場合とアウトソーシングした場合でどちらが有利かを判断する問題であり、
例題1:アウトソーシングしても減らないコストのせいで、自社で製造した場合が有利
例題2:アウトソーシングすることで、自社設備を別の製品の製作に振り分けることができることから、アウトソーシングが有利
例題3:共通固定費を回収するためには、製品Zは廃止するべきじゃない
といった内容になっています。
ここでは、「代替案を採用すると、どのように条件が変わるか」を意識して解くことが重要になります。
■例題4
この例題は初見ではおそらく解けないと思いますので、ご安心ください。
「F社向け仕様の機械」を製作した費用や収入は全て埋没費用扱いで、解答には全く使われません。
3つの新たな代替案の条件だけで、利益を計算すればいいだけなのですが、知らないと解けないレベルの問題だと思います。(知っていれば簡単ですが…。)
■問題1
与えられた条件をもとに解いていけばそこまで難しい問題ではありません。
■問題2
計算をたくさんする必要がありますが、問題自体は難しくないです。
ボリュームの多い計算問題に解きなれていると、事例Ⅳの計算問題ボリュームが少ないと感じるようになりますので、たくさん計算問題をこなすようにしましょう。
■問題3
内部振替価格の問題の応用です。
これまでの問題と同様に、まずは損益計算書で「?」となっている箇所を、周辺の数字から推測します。
次に代替案間の差額収入・差額原価・埋没原価を見極めます。
差額収益:売上高の差額
差額原価:M製品製作のための追加加工費/変動販売費/変動製造間接費/固定費の差額
埋没原価:K製品の変動製造原価
このような形で整理を行い、各案を比較することで数字に基づいた業務的意思決定が可能になります。
ちなみに、私は以下の通り、代替案を左右に並べて、右側で差額を算出して差額部分だけで計算するようにしていました。このように整理する事で、「差額収益・原価のヌケモレ」「埋没原価を計算に含めてしまう」ことを防いでいました。
きたなくてごめんね
■問題4
問1は高低点法による固変分解です。すっかりやり方を忘れていると思うので復習する気持ちで取り組みましょう。
私はどうしても、「高低点法で算出した固定費と変動費率が、全てのデータに当てはまらないことが理解できず解答・解説にモヤモヤ」していましたが、下記図の通りですので詰まっている方は参考にしてください。
問2は問1で求めた製造間接費の固定費から埋没原価を引いて、差額原価を特定することがポイントになります。固定製造間接費のうち数字が明示されている項目がそのまま埋没原価にあたるので、そこまで難しくはないでしょう。
問3は購入数量が増えると購入単価が下がるので場合分けで計算することがポイントになります。そのため、計算量がどうしても多くなります。
問4は改めて、差額原価と埋没原価の見極めをしっかり行ってから計算に入っていきましょう。
■問題5
化学会社の業務的意思決定が題材になっています。
連産品とか分離点という言葉が謎ですがわからなければ調べましょう。
連産品:
同一工程において同一原料から必然的に生産される異種製品で、相互に経済価値が高く、その主副を明確に区別できないもの
分離点:
生産過程において連産品が分離されるポイントのこと
化学会社ではない人にとっては、とっつきにくいですが、これまでの問題と同様、差額現価を見極めて計算するだけです。
ただ、副産物による売上の増加も忘れずに計算するようにしましょう。
■項目と難易度
■概要
間接費については、全部原価計算では売上規模や労務費に応じて配賦しますが、活動基準原価計算では、「活動」ごとに費用を割り当てるので、製造間接費を変動費化することができます。
計算は大変だし二次試験には直接関係するような問題は出ませんが、企業の費用構造の基礎を知るためには、やっておいた方が良いです。
■例題
例題では、
・活動基準原価計算の計算方法
・活動基準原価計算を取り入れることで得られるメリット
⇒製造間接費の変動費化
を学ぶことが出来ます。
この章も計算力を高めるという意味では、かなりのハードワークが期待できるので時間のある方は、しっかりと取り組むのが良いと思います。
条件として、コストプール、年間予算額、活動回数を与えられますので、それらを活用して、どのように製造間接費を変動費化するかを学んでください。
問題1
やることは、コストプールとコストドライバーを基に、製造間接費を各製品に配賦して、単位あたり原価を求めるだけですが、かなりの計算ボリュームがあります。
修行だと思って頑張りましょう!
問題2
問題1とやることは同じですが、問3→問4の流れがこの章では至高です。
「活動基準原価計算をしないと、誤った意思決定をしてしまう」ということを学べる良問だと思います。飛ばさずに解いてくださいね。
問題3
この問題もこれまでとやることは同じですが、目先が変えられています。
製造間接費の内訳が「機械関連」と「労務関連」で分かれており、「トータルの予算」と「各活動の製造間接費の用務提供割合」が異なるので、それぞれ別々に計算する必要があります。
だからこの問題も計算ボリュームがハンパないです。
大変ですが頑張りましょう。
いかがでしたでしょうか?
Lecture 4~5については正直、「これ試験で出ないだろうなあ」と思っていました。
ところが、令和2年度の事例Ⅳでは、Lecture4の所がモロに出たので、問題を見たときに「もうちょっと、ちゃんとやっておけば良かった」と思いました。
事例Ⅳで80点を目指すのであれば、この2つの章もしっかりやった方がいいとは思いますが、70点目標くらいならば思い切ってやらないのも手だと思います。
そのあたりは、ご自身の戦略と照らし合わせて、うまく取捨選択してください。最後に決めるのはご自身ですので。
Lecture 6~7は、ボリュームが多いので走り抜けるのに時間がかかりますが、大変なぶん計算力が身につくのでしっかりやるべきところです。
特に、Lecture6は事例Ⅳで直接出ないといえども、意思決定会計を理解するためには避けて通れない基本的な考え方が詰まっています。
似たような問題が出たときにひるまずにも済むので、事例Ⅳ:80点を目指す方はしっかりと勉強するようにしてください。
なおLecture6は、例題数・問題数ともにイケカコ随一の辛い章です…。
Lecture7は本当に計算ボリュームが多いです。ただ、ここで鍛えられたことで、令和2年度の第2問のNPVの設問も難なくスラスラと解くことができたので、修行と思って頑張ってください。
口酸っぱく言いますが、イケカコは劇薬ですのでご自身の戦略と照らし合わせて、うまく取捨選択して活用するようにしてください。最後に決めるのはあなた自身です。
本日は最後まで読んでいただきありがとうございました。
次週は、Lecture8以降の戦略的意思決定会計について、解説をしていきたいと思います。ここは、イケカコの中で、一番大事な所なのでぜひ読んでください。
明日はひろまてぃです。