中小企業診断士2次試験 ふぞろいな合格答案特別企画 元中小企業庁長官 岩田 満泰さんに聞く

中小企業基本法が改正された平成11年度に中小企業庁長官を務められていた、岩田満泰さんに中小企業との関わり及び中小企業診断士に期待することについてのお話を伺いました。

取材日:2013年3月1日
担当:伊逹万祥神谷邦男横尾大輔

1.現在に至るまでの岩田さんと中小企業、診断士との関わりを教えて下さい。

「中小企業基本法、診断士制度を中小企業の役に立つ内容に変更したかった。」

役人時代、私は現場主義だったので、時間さえあれば出向いて中小企業の工場や店舗を見せてもらったり、経営者の話を聞きにいったりしていました。中小企業を取り巻く環境を肌で感じることができました。

この経験を活かして、中小企業庁長官時代には昭和38年の制定以来一度も変更されていなかった中小企業基本法を改正しました。中小企業の実態に合わないと違和感を感じていた為、政策の根本的な考え方・哲学から変えました。各種個別法、中小企業支援法の改正、さらに診断士試験制度の変更を行いました。(※この時に制度の骨子が変更され、その5年後に現制度へと移行された。具体的には、平成12年に「3部門制の廃止」、平成17年度に「1次試験科目合格制」を導入し現在に至る。)

改正前、当時の診断協会理事長と熱く語り合い、中小企業の実態に合う人材を育成できる試験制度に変更する方針を打ち出しました。具体的には当時、情報部門、商業部門、鉱工業部門の3つに分かれていた部門を1つに集約し、中小企業の診断・助言を行う実務に合った制度へと見直しました。当時の改革が中小企業の繁栄や診断士の活躍に繋がっていれば私も嬉しく思います。

また、私が在籍している大阪中小企業投資育成株式会社については、昭和60年まで政府の出資金を得て事業運営していましたが事業の活性化を図る為に、出資金を全て政府に返却し民営化を行いました。柔軟な投資・育成が行える環境を整えたことで、より中小企業の現状に沿った経営支援ができています。

2.診断士に期待することは何でしょうか?

「1人の診断士が中小企業の全てを診て救うことは困難である。」

中小企業者の抱える問題は多様で複雑なものが多く、1人で全てを解決することは困難です。一定以上の専門レベルが求められる課題については、多くの専門家や民営のコンサルタントの力を活用した組織的な取組みが必要です。それほどに中小企業の経営は難しい。まず診断士にはその現実を受け止め、社会が自分に求めている役割を意識してもらいたい。具体的には、幅広い知識を有し経営者とさまざまな領域の専門家を繋ぐネットワークの核となってほしい。中小企業を患者と捉えた場合、企業を総合的に診療できる総合医、そして、孤独な経営者に信頼される相談相手・ホームドクターとなることを目指してほしいです。

そして、診断士には現場主義を常に意識して、多くの中小企業・その経営者と直接関わる経験を積んでもらいたいと考えています。

3.受験生へのメッセージ

「”現場主義”を意識し、日々自分を磨き続けてほしい。」

経営者は怖い人だと思う方も多くいるかもしれませんが、本質的には会社の重要な決断を1人で行う、とても孤独な存在です。規模が小さい会社であればあるほど、繁栄か倒産かを決めるような重要な決断を1人で行う必要があります。

だから、まず診断士には経営者の大変さを理解してあげてほしい。
具体的な提案ができなくてもいいから、日頃のお付き合いの中で話を聞いてあげたり、考え方や捉え方等のアドバイスをしてあげてほしい。とにかく経営者に安心感を与えてあげることを重視して下さい。

一方で、経営者の相談相手になる為には、自分の中に知識・人間力の蓄積が必要です。
診断士を目指す、また診断士として活動する為には、自分自身を日々磨く必要があります。だからこそ、一定以上の専門性を求めていないとはいえ、質の高い診断士を生み出す制度となっており、この資格に合格することは大変だと思います。そして、合格後も更新制度を設けている理由は中小企業の環境変化に診断士も変化し向上していく必要があるからです。

最後に、受験生の皆さんには中小企業診断士試験という自己研鑽を通じて知識を蓄積することと同時に、豊かな人間性を磨いてくれることを願っています。

大阪中小企業投資育成株式会社
代表取締役 岩田 満泰(いわた みつやす)
元中小企業庁長官(平成11年度)
http://www.sbic-wj.co.jp/